
新聞、テレビで秋になると文化庁から功労に対して受賞の映像を目にする。
丁度今から、8年前師匠のお供をして国立大劇場に赴いた。がそれは思いもしない事に成ろうとは~。
平成12年、「文化財保護法50周年記念文化財保護功労賞」と言う名誉ある受賞の為師匠のお供をして東京に向かうわけだが、行く予定をしていた養女の方が入院の為行かれなくなり急遽、門下の一人が私と共に付いて行く事になった。
毎年国立劇場(小)で行われる『京阪舞の会』には出演している師匠ではあるが今回の東京行きは格別の思いがあるのではと思うと私達も身が引き締まる思いだった。
お家元がご用意して下さったホテル(帝国ホテル)に落ち着き、ルームサービス、それも最高のコースを私達に振舞って下さった師匠であるが、一人が別のホテル(私が泊まるはずだった)に帰った後、師匠の様子がおかしく救急車で病院に運ばれたのである。(私は生きた心地がしなかった)
車の中から彼女に電話をし(今思えば携帯電話が役に立った
)
それからが大変!はっきりいって師匠の気心や癖くらいは知っていたが寝起きを共にしているわけではないのでわからない事ばかりで、深夜の病院で私達は不安で心配で心配で~
「明日(授賞式)どうしよう?」そればっかり考えていた。と言うのも医者は
「当分、様子をみて検査しますので、明日は無理です!」
「Mちゃん!明日、行かなくてはならないので早く帰らしてもらうように交渉して~」と師匠。
とにかく、医者に事情を話し連れて帰りたいと御願いしても駄目だった。

私も、師匠の体の方が大事だと(94歳と高齢)思ったのある。
朝になり受賞式の受付には私が、病院にはもう一人が分担したのであるが、式が終わる頃国立劇場に駆けつけた師匠たちであるが(すっかり元気になった師匠が~)中には入れてくれなかった。(遅かれし、式は始まっていた)
天皇陛下に一目お会いしたかったと師匠に言われた(外で会われたみたいだが)。
まさか、昨夜の話では入院しなければと医者から聞かされていたので授賞式に出る着物はホテルにおいたままにしたのを随分叱られたのである。
秋になると思い出す切なく、懐かしくそして、苦い師匠への追憶なのである。
<其の時の気持ちを表した師匠作。>
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東への 栄えある旅や 秋澄めり
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この道に あればこそ 秋功労賞
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秋深し 古典を守り 栄えある日
この俳句は山村若津也写真集【舞ごころ】より