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カナダ航空宇宙博物館の続きです。次の機体は、アブロカナダCF-100Mk.5Dカナック (Avro Canada CF-100 Mk.5D Canuck) です。1950年初飛行。
カナダが独自開発した唯一の戦闘機です。戦闘機と言っても実態は対爆撃機用の迎撃戦闘機で、空戦はおそらく苦手です。
これの開発経緯は米ソ冷戦まで遡らないとならないんですが、つまりはソ連の爆撃機がアメリカまで飛んでいくとしたら北極圏を経由した北米大陸侵攻経路が最短です。そしてその経路上にはカナダが横たわっているため、アメリカ防衛のためにはカナダを盾に・・・もとい防人として頑張ってもらわななりません。カナダにとっちゃそんなの知らんよという事情でしょうけど、間違って自国に核爆弾を落とされてもたまりませんし、NATOやらNORADやらのしがらみもありましょう。
とはいえバカ広い国土を持つカナダに防空基地をいくつも建設するのは限度があります。しかも極寒で辺境の北部にです。その穴埋めのために開発されたのがCF-100なのです。冷戦期の前線戦闘機ということもあってか692機とまあまあ造られました。そのうち50機程度がベルギーに輸出されただけで、あとは全部カナダ空軍で運用されたということです。
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そういう経緯で開発された戦闘機なので、分類的には火器管制装置とレーダーを積んで機関砲やロケット弾で武装した複座の迎撃戦闘機です。アメリカのF-86D、F-89、F-94に近いですかね。
アメリカ製迎撃戦闘機との最大の違いはエンジンの数でしょう。CF-100は双発です。これによりマッチョなパワー系戦闘機となって上昇性能は高かったそうです。あとは意外と脚が長い。
公式名称は「カナック」ですがこれはほとんど定着せず、「クラック」とか「リードスレッド」とか呼ばれとりました。前者は降着装置を引き込む時になる作動音、後者はクソ重い操縦桿が由来です。
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エンジンは胴体の真横にドカンと配置。特になにか工夫があるわけでもなさそうな。ちょっとイギリス機っぽさもありますかね。
主翼は直線翼で、翼端に燃料タンク(チップタンク)を配置しています。これもこの時代のトレンドです。
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エンジンも自国開発のオレンダ11を搭載しています。エンジンも自国製なのは強いですね。
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長いおみ足。胴体下にロケット弾ポッドなり機関銃ポッドなりを搭載するので、それの整備性を考慮した設計なのだと思います。
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ガンポッドです。これでソ連の爆撃機を撃ち抜きます。12.7mm機銃が8丁もついています。数撃ちゃ当たるの精神です。でも機銃だとあんまり効かなさそうだネ、という話になってMk.4からはロケット弾も選択可能になりました。
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CF-100は今までも博物館で何機か見ていますが、どれもロケット弾装備のMk.5だったので、ガンポッドは初めて見ました。ちょっとうれしい。弾倉のケースが物々しいのよ。
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物々しい。
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ピトー管はここにあります。
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この個体は1958年製のMk.5です。高高度性能向上のために翼端が1.8m延長されてます。オンタリオ州ノースベイ基地の第414飛行隊に配備されました。
迎撃機としての任務が解かれると、1972年に電子戦の練習機に改造されました。この時型番がMk.5Dになっています。1979年に退役して、そのままこの博物館まで自力で飛んできました。
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水平尾翼は垂直尾翼の中ほどに刺さっています。中々独特。CF-100は超音速機ではないですけども、全遊動水平板ではないのは意外。たぶん主翼の後流の影響を受けないから問題ないんだと思いますけども。
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尾部のアップ。
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エンジン排気口。やっぱり目立つ工夫は読み取れないかなあ、しらんけど。
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胴体下にはエアブレーキ。短距離着陸性能は辺境の基地には欠かせないということでしょうか。
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プラット&ホイットニーJ75-P-3軸流ターボジェットエンジンです。CF-100の後継機、CF-105試作機の搭載エンジンでした。他にはアメリカのF-105、F-106、U-2で採用されました。
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こっちは、オレンダPS13イロコイ軸流ターボジェットエンジンです。CF-105の本命のエンジンとして、機体と共に開発されていたものです。軽量化のために一部にチタンを使用していて、エンジン界隈では先進的だったそうな。ただし希少な金属だったので原価に跳ね返ってしまうわけですが。
CF-105計画の凍結されると、イロコイの開発計画も道連れに中止に追い込まれてしまったのでした・・・。悲運のエンジンです。
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ボーイングCIM-10Bボマーク (Boeing CIM-10B Bomark) です。1959年初飛行。
ソ連爆撃機対策の対空ミサイルです。金食い虫の迎撃戦闘機を作るよりもお手軽だということで、CF-105計画を中止に追い込んだ要因のひとつです。
地上の発射機から垂直に打ち上げられて、ソ連爆撃機を撃ち落とします。発射は2段階あって、1段目は胴体についているロケットエンジンで加速します。初期型は液体ロケット燃料でしたけど、このB型からは固形燃料に変わったので、発射時の即応性が良くなりました。超音速まで速度が上がったら、胴体からぶら下がっている2発のラムジェットエンジンで2段目の加速をします。
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対空ミサイルのはずですが、ラウンデルが描かれています。胴体には機番、垂直尾翼にはフィンフラッシュも描かれています。これじゃまるで戦闘機です。
というかアメリカ空軍はこれを無人戦闘機として扱って宣伝していました。型式番号だってF-99です。まるで戦闘機みたいな呼び方ですね。カナダ空軍もこれに乗っかったような感じでしょうか。ただアメリカ空軍もいくらなんでも戦闘機呼ばわりは無理だったみたいで、後に通常弾頭型をIM-99、核弾頭型をCIM-10と変えました。
個人的にはこのF-99呼ばわりは、初の超音速ジェット戦闘機スーパーセイバーの型番をキリ良くF-100と振りたいために、ミサイルに強引に名付けたと考えています。ちなみにF-98も欠番となっていたんですが、これにはファルコンミサイルに当初振られていました。これ、戦闘機に搭載する空対空ミサイルなので、ボマークよりも無理筋ですよね。ファルコンは結局何度も型番を変えられて最終的にAIM-4に落ち着きました。
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まるで戦闘機みたいな尾部・・・。ところでこれ、型番がCIM-10Bということは、核弾頭搭載型だったということでしょうか。カナダが核兵器を持つとなると国内世論は荒れそうですが。たぶん、あくまでアメリカからの貸与品だよなどと言って躱していたと思いますが。ヨーロッパ配備の戦闘機搭載用の戦術核でもそんな感じだったみたいですし。ここらへんのアメリカへの従属性の話は風呂敷広げると大変そうなのでここまでにしておきます・・・(手抜き)。
というところで今日はここまで。
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