The Astrud Gilberto Album/Astrud Gilberto
(Verve V6-8608)
(Verve V6-8608)
「イパネマの娘」はジョビンがリオのイパネマ海岸で見かけた女性を思い描いて作ったボッサ最大のヒット曲ですよね。この曲は,ボサの黎明期に作られた物ではなく62年の作品で比較的新しい物です。この曲にのって、ボッサはアメリカ進出を果たしたと言っても過言ではありません。勿論,広くアメリカに知られるようになったのはテナーの巨匠,ゲッツの存在が大きいわけですが、この曲を英語の詞をつけてうたった芸術的鼻歌スタイルのアストラッド・ジルベルトのボーカルはボッサの歌唱スタイルをイメージ的に定着させた歌唱であったと言えると思います。黎明期から活躍したシルビア・テリスなどとは一線を画すモノですよね。彼女は,全くボーカルトレーニングを受けておらず”その辺のお嬢さんが鼻歌で好きな唄を歌った感じ”です。それがいたく心に残り, ゲッツはそこに目を付けたのでしょうね。彼の目利きの才能にも頭がさがりますね。さてそのGetz/Gilbertoから1年を経過して録音されたアストラッドの初リーダー盤をアップしますね。
アレンジは数々のボーカルの名盤の影の立役者,マーティ・ペイチです。Bud Shank(fl, as), Milt Burnhardt(tb), Stu Williamson(tp), Joao Donato(p), Joe Mondragon(b)等がメンバーに名を連ねています。また多くの楽曲を提供したAntonio Carlos Jobimのギターで参加,そして"Aqua De Beber"で見せたアストラッドとのボーカルデュオはジョビンのボーカルの味が良く出ていて大好きなトラックですね。他にもA面では"Once I Loved", "Meditation", "And Roses And Roses", "O Morro", "How Insensitive", B面では"Dindi", "Photograph", "Dreamer" "So Finha De Ser Come Voce", "All That's Left Is To Say Goodbye"と美しいメロディが続きます。何れの曲でもアストラッドのシンプルで飾り気のない歌唱が光ります。
所有盤は,T字ヴァーヴMGMのステレオ盤です。うまくぼかしを使ったカバーも秀逸ですし,楽曲のセレクションといいボッサを代表するアルバムと思います。
追記:blog仲間のNotさんから、ベスト盤(国内盤)についてコメントをいただいた。自分も輸入盤再発(英国盤?)を所有しているが,このBOAC機をバックにしたアストラッドを捉えたカバーが好きでたまらないのです。国内盤ベストのカバーもこれなんだろうか?