ここしばらく「旅行ネタ」の連発ですので、お口直しに(なるネタではないケド)時事ネタを書くことにします。
焼き肉店でユッケを食べた人たちが食中毒にかかり、死者まで出ています。
福井新聞のこの記事によれば、
富山県の食中毒では、えびす砺波店で19日以降にユッケなどを食べた客が、相次いで嘔吐(おうと)などの症状を訴え、29日に10歳未満男児が入院先の病院で死亡した。系列の高岡駅南店(同県高岡市)の客にも症状が出ており、患者数は30日現在で1~70歳の38人に上っている。うち14人が重症化している。
だそうで、さらに、
店は金沢市の「フーズ・フォーラス」が経営し、県内には福井市に2店舗、鯖江市に1店舗がある。系列全20店で扱う肉はすべて東京都内の食肉処理センターから仕入れている。同センターは「生食用としては販売していなかった」と説明。フーズ社は「生食用ではないと認識していた。国の基準に強制力はなく、会社として生でも食べられると判断し、提供していた」と話している。
だそうな。
会社はどんな基準で「会社として生でも食べられると判断」したのでしょうか?
ここで、「弊社の判断が甘かったために、多くのお客さまの健康を損なうだけでなく、お子様の命まで奪うことになってしまったことを深くお詫び申し上げます」と謝っていれば、責任を免れることはできないまでも、「今後、被害者の方々への補償と再発防止対策をしっかりとするように」ということだったのでしょうけれど、この後がひどい。
YOMIURI ONLINEのこちらの記事によれば、
(フーズ・フォーラスの)勘坂社長は会見の中で「厚労省は加熱用の肉をユッケなどの生食に使用することを明確に禁止すべきだ。禁止されていたら客には出さなかった」と声を荒らげて“持論”を展開した。
とな。勝手に「安全」だと解釈して加熱用の肉をユッケとしてメニューに載せていた自分たちの至らなさを棚に上げて、加熱用の肉の生食を禁止していなかった厚労省の責任ですか?
あきれた社長さんですな。
更に、フーズフォーラスのHPを見ると、ますますワケワカメ的な説明(弁解)が載っていました。
厚生労働省は、牛肉については国内と畜場から生食用としての出荷実績はなく、一部生食用として輸入されているものがありますが、その量はごく少ないものと考えられます。
「生食用」「加熱用」を出荷時に区別するよう義務付けられているのは、食品衛生法で特別に定められた牡蠣などの8 品目だけとなっております。
「生食用」「加熱用」の判断は、通常の小売業者が判断しているのと同様に卸業者との判断で決めておりました。
誤りかねない認識をさせるような報道をそのままご理解なさることは、この度お亡くなりになった方をはじめ、発症なさってご迷惑をおかけしている方々への配慮を欠くことになります。
お亡くなりになったお子様のためにも、ご遺族様のためにも、以上を申し上げます。
みっともない姿をどこまでさらけ出す気なんでしょうねぇ。
後半部分なんて、まったく意味不明です(社員の方々もかわいそう…
)。
最近、これと似たような話がいくつか出ています。
まず、放射性物質が検出されたことから出荷自粛・制限されているにも関わらず、それを知りつつ千葉県香取市の農家10戸がホウレンソウを出荷した件(YOMIURI ONLINEの記事はこちら)は、その農家や商品を受け入れた市場関係者の人間性を疑う程度(?)で済みますが、それより先に、「出荷自粛」とされているサンチュを出荷した千葉県旭市の集荷業者の社長の発言がたいしたものでした。asahi.comの記事によれば、
(集荷業者)グリーンファームの杉藤和夫社長は朝日新聞の取材に、「あくまで自粛で、出荷が禁止されていたわけではない。自分で問題ないと判断した」と説明。
だそうな。ユッケのフーズ・フォーラスと同じ発想ですな。
似たような話は、原発事故対策と発電能力復旧と節電啓発に大忙しの東京電力を巡ってもありました。
日経の記事から、
長引く福島第1原子力発電所の事故を巡り、東京電力の対応について「東電には頭が下がる。甘かったのは東電ではなく、国が設定した安全基準の方だ」と述べた。その上で、事故自体については「峠は越しつつある」との認識を示した。
へぇ~、「東電は悪くない。すべては国の責任」ですか。
国や自治体が定めた基準や法律というものは守るべき最低限の基準・規範であって、それを上回る安全策を講じたりまっとうな事業をするのは、企業にとって常識だと思うのですが…。「国の基準を守っていたのだから自分たちに責任はない」などと開き直ったり、それを支持するのは、基準ぎりぎりでコストを浮かせたり(どこかの牛丼チェーンを連想…
)、法律ぎりぎりの行為であぶく銭
を稼ぐ低モラルな連中だけでしょう。
ちなみに、上に引用したのは、日本経団連の米倉会長様のご発言です。
このもうろくじじい財界首脳は、上記の発言に続けて、
損害賠償などによって東電の経営不安説が流れていることに関しては「(事故原因は)天災であり、国が支援するのは当然のこと」と語った。国有化論については「全然ありえない。一部の政治家が口にしたせいでどれだけ東電の株価が下落したか」と非難した。
だそうです。
この発言に納得できる人は世の中にどれだけいるのでしょうか?
せいぜい、東電の株主や社債を持っている人たちだけでしょう。
住友化学のトップというだけでなく、(とりあえずは)財界トップの地位にあるお偉いさんが、よくぞモラルのかけらもなさそうな野菜の集荷業者や焼き肉チェーン店の社長と同レベルの発言をしたものです(ここで東電の株価の話を持ち出す辺りも、世の中が見えていない証明か?)。
ちょっと話がずれますが、ほぼ代替できない商品を地域独占で供給(販売)している電力会社が「民間企業」である必要はあるのでしょうか?
それはさておき、あるときは「民間のやることに政府は口を出すな」と言っておきながら、いざとなると「国の責任で何とかせい」は、あまりにも身勝手すぎると思います。
すべてが最終的に「国の責任」となれば、国(お役人)はすべてについて、安全サイドに振った規制をすることになるでしょう。そうなれば、民間の自由度は損なわれて、規制に守られた既得権者がリスクはない代わりに進歩もない「お役所仕事」をちまちまと繰り返すだけになるでしょう(まともな競争もできずに、お上に規制を求めるタクシー業界が悪い例)。
グローバル化の当世、そんな事態は許されないと思う私です。