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●『疵(きず) 花形敬とその時代』読了

2009年07月13日 07時50分53秒 | Weblog

『疵(きず) 花形敬とその時代』、6月に読了。本田靖春著。文春文庫。1987年4月刊。

 本書の背景(p.10、104)。「暴力が忌むべき反社会的行為であることは論を待たないが、・・・/私にとっての花形は、千歳中学校における二年先輩であった。彼を暴力の世界に、私を遵法の枠組内に吹き分けたのは、いわば風のいたずらのようなものであった」。「・・・一期生の級長を良民の枠組みにとどめ、五期生の副級長を暴力の世界へ押しやったものは、いったい何であったのだろう。/・・・遵法者を良民だというのであれば、厳密な意味でその名に値するのは、ヤミ物資を拒否して餓死した山口判事一人だったのではないか。/・・・ストイックな遵法は死を意味していた」。

 軍国主義者の変身・変心(pp.99-102)。「問題は教育者である彼らの豹変ぶりにあった。・・・/社会科は、断るまでもなく、あらたに始まった民主主義教育の大きな眼目であった。その担当を、よりによって、もとの軍事教官に割り振るというのは、民主化政策が教育の現場でどのように受け取られていたのかを、如実にあらわしている。・・・/失業寸前の彼に対する生活救済、それ自体はよい。だが、Nに社会科を割り振った学校の上層部は、生徒たちに対する配慮を決定的に欠いていた。サーベル持つ手をチョークにかえて民主主義を説くNが、説得力を持ち得るはずもなかったのである。/・・・教師はそのときから、改宗を迫られた邪教の宣伝者の身へと転げ落ちた」。当時の生徒は云う、校長について「・・・それはないと思うんだ。少なくとも、彼の口車に乗って、戦争で死んだ生徒がいるんだから」。

 力道山(p.242)や横井英樹(p.6、252)との関係。解説は色川武大氏。
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