[※ アサヒコム(2007年9月22日)↑:「69年、出版された『豆腐屋の四季』を手にする松下竜一、洋子夫妻=松下洋子さん提供」(http://www.asahi.com/travel/traveler/images/TKY200709220092.jpg)]
佐高信さんによる、日刊ゲンダイでの書評【週末オススメ本ミシュラン/「豆腐屋の四季」松下竜一著/講談社文芸文庫】(https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/book/260456)。
《「豆腐屋の四季」は「歌の型を借りた生活綴り方」だが、1964年の東京オリンピックの時に「朝日歌壇」の選者の近藤芳美がオリンピックの歌を1首も選んでいない、と指摘しているのは鋭い。…近藤が選んだ松下の「朝日歌壇最初の入選歌」である。まさに25歳の怒れる青年の生活の叫びだった》。
『●いま「暗闇の思想」を: 朝日新聞(地方版?)社界面トップ』
『●あの3・11原発人災から1年: 松下竜一さん「暗闇の思想」を想う』
『●第八回竜一忌、涙が出ました:
松下竜一さん「暗闇の思想」を語る小出裕章さん』
『●松下竜一忌での小出裕章さんの講演が本に!!』
『●室原知幸さん「公共事業は法にかない、
理にかない、情にかなうものであれ」』
『●松下竜一さんと松下洋子さん、そしてカン・キョウ・ケン』
『●「草の根」に思いは永遠に: 松下竜一さんを追悼する“最後”の「竜一忌」』
『●《われわれは大きな不正を正すために何をしたというのか。
何もしないからこそ、彼らのように重大な失敗を招くこともなかった》』
松下竜一さん《「豆腐屋の四季」は「歌の型を借りた生活綴り方」…まさに25歳の怒れる青年の生活の叫びだった》。当時の朝日歌壇のある選者に関連して、松下竜一さんは《私たちの日々の現実生活そのもののようだ。たとえ首都に華やかに大会が展開されていようとも、私たちが繰り返すのは生きるための労働の日々なのだ》《ここには、そうしなければ生きてゆけぬ生活者の現実がある》と。
その「豆腐屋の四季」の舞台は、いま、…。
『●「従わぬ者には容赦ない、国家の暴力性が作品を貫く」…
松下竜一さん「豆腐屋の四季」の舞台が取り壊し』
「東京新聞の佐藤直子記者のコラム【【私説・論説室から】
竜一の愛した書斎】…。毎日新聞の大漉実知朗記者の記事
【松下竜一さん 自宅取り壊し 「豆腐屋の四季」舞台消える】」
『豆腐屋の四季 ~ある青春の記録~』(全4巻)が、2005年10月に、リブリオ出版より。大活字版。講談社文庫版、河出全集版につづく3種目。
『●『豆腐屋の四季 ~ある青春の記録~』読了(1/2)』
『●『豆腐屋の四季 ~ある青春の記録~』読了(2/2)』
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【https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/book/260456】
週末オススメ本ミシュラン
「豆腐屋の四季」松下竜一著/講談社文芸文庫
2019/08/18 06:00
“時の人”の滝川クリステルが「おもてなし」とスピーチする映像が繰り返し流れる。
それを“表なし”なら“裏ばかり”じゃないかと痛烈に皮肉ったのはお笑い芸人の松元ヒロだった。権力といちゃつかないホンモノの反骨芸人である。
笑いということなら、環境権を掲げ、九州電力の火力発電所建設を阻止しようと裁判に訴えた松下のそれも強烈だった。敗訴の判決が出た時、松下は「アハハハ……敗けた、敗けた」と書いた紙を表示したのである。
うなだれられるより、哄笑される方が相手は怖い。屈していないからだ。
「豆腐屋の四季」は「歌の型を借りた生活綴り方」だが、1964年の東京オリンピックの時に「朝日歌壇」の選者の近藤芳美がオリンピックの歌を1首も選んでいない、と指摘しているのは鋭い。
「そのことに私は近藤先生の姿勢を感じる。先生がいつも凝視しているのは、私たちの日々の現実生活そのもののようだ。たとえ首都に華やかに大会が展開されていようとも、私たちが繰り返すのは生きるための労働の日々なのだ。たぶん、近藤先生は頑ななまでにそこに凝視をしぼって、無数に寄せられたオリンピックの歌(その大部分はテレビを観て作られた歌だろう)を、全首裁断したのであろう」
半世紀以上経った現在も事情は変わらない。問題は近藤亡き後、近藤のような選者がいるかどうかである。
○ようやくに魚売りかえる峡の道 蕎麦畑光る月夜となりぬ
作者名は省かせてもらうが、オリンピックの歌が登場した週に近藤が首位に推した歌である。
「ここには、そうしなければ生きてゆけぬ生活者の現実がある。オリンピックの感興が薄れた今、私の胸にひそやかに沁みて拡がるのは、月に白々と光るそば畑の景だ。時流のおりおりのできごとの陰にいとなまれる平凡な生活の歌は、一見つつましやかに、しかも時流とかかわらぬ命長い叙情を細く絶えることなく保ち続けるのであろうか」
松下はこう述懐している。
○泥のごとできそこないし豆腐投げ 怒れる夜のまだ明けざらん
近藤が選んだ松下の「朝日歌壇最初の入選歌」である。まさに25歳の怒れる青年の生活の叫びだった。
★★★(選者・佐高信)
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