Activated Sludge ブログ ~日々読学~

資料保存用書庫の状況やその他の情報を提供します。

●『思考停止社会 ―「遵守」にむしばまれる社会―』読了(3/3)

2010年02月14日 13時56分55秒 | Weblog

郷原信郎著、思考停止社会 ―「遵守」にむしばまれる社会―

 メディアに関する問題点も。「事件報道が冷静かつ慎重に行われているのであれば、・・・日本のマスコミ報道はそれとはほど遠いものです。/一度、メディア・スクラム(マスコミによる集団過熱取材)状態になると、個々の記者や個々のマスコミの力ではどうにもならないほど報道が過熱することは、松本サリン事件などの過去の多くの事件の例からも明らかです。重大であればあるほど、不正確な報道、歪曲されたセンセーショナルなものがあまりに多いというのが実情なのです」(p.100)。「このような一連の報道が、断片的に視聴した一般人に相当な予断・先入観を与えた可能性・・・。・・・裁判員裁判・・・、公正な裁判を行う上で重大な支障・・・」(p.101)。
 「「司法への市民参加」だけが自己目的化」(p.114)。

 年金制度の問題点。「制度で解決できないことを「非公式な調査」で解決」(p.137)しようとしている。
 もう一つの問題点は、トップの姿勢としての当時の舛添厚生労働大臣の発言と態度(p.150)。「自分の部下である社保庁職員をこき下ろし事実を確認する前から組織や部下の職員の刑事責任にまで言及したのです。/・・・基本的な事項について十分に理解していたとは思えません。/・・・社保庁職員に対する批判がここまでエスカレートすることはなかったでしょう」(p.151)。

 歪むマスメディア報道が「思考停止」状態の要因(p.160)。「記者クラブ制度による行政や政治とマスメディアとの癒着の問題」(p.161)。
 「ジャーナリズムには、真実に迫るための最大限の努力が求められるのは当然ですが、真実であるとの確証まではつかめない場合でも、事柄の性格によってはあえて取材結果を報道すべき場合もあります。また、速報性が要求される場合、まだ不確かな情報しか得られていない場合でも、その情報をあえて報道することが求められる場合もあります。そういう意味では、報道内容が百パーセント真実であるということは、もともとあり得ないはずです。/問題は、報道した内容について真実性に問題があるとの指摘があった場合にどう対応するかです」(p.183)。


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●「水伝(みずでん)」へのオマージュ ~ニセ科学を嗤う~

2010年02月13日 05時11分13秒 | Weblog

いつも楽しませてもらっている虚構新聞社の『虚構新聞』(http://kyoko-np.net/)のサイトに以下の〝記事〟が載っていましたので、紹介します。言わずもがなですが、「嘘ニュース」ですので、良い子の皆さんは信じてはいけません。

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【http://kyoko-np.net/2010020901.html】
セミに「ありがとう」 平均寿命の4倍長生き これは嘘ニュースです

 「ありがとう」「大好き」など、セミの幼虫に毎日肯定的な言葉で呼びかけると、普通のセミの4倍以上長生きすることが、千葉電波大学・日暮和義教授(昆虫学)の研究で明らかになった。論文は英科学誌「フェノメノン」3月増刊号(電子版)に掲載される。
 日暮教授は1981年、ニイニイゼミの幼虫2匹をそれぞれ自然界の環境を再現した大型飼育ケースに1匹ずつ入れて飼育。その際、一方のケースには「ありがとう」「好き」「がんばって」など肯定的な言葉を書いた紙を、もう一方のケースには「死ね」「バカ」「消えろ」など否定的な言葉を書いた紙をそれぞれ貼り付けた。また同様にして、一方には「がんばれ」、もう一方には「死ね」と、飼育ケースに向かって毎日同じ時刻に声をかけた。
 その結果、否定的な言葉を投げかけたセミの幼虫は7年後の1988年、地上に出て羽化。そのまま脱皮して成虫に育った。体長や外見などは普通のセミと変わらず、羽化後8日目に死亡した。
 一方、肯定的な言葉をかけて育てたセミの幼虫は飼育開始から30年近く経った2010年現在もまだ地上に出ておらず、幼虫の状態が続いていると考えられる。生存が確かなら、否定的な言葉で育ったセミの4倍以上土の中で生き続けていることになる。
 日暮教授は、セミがこの先何年生き続けるか分からないため、研究の中間報告というかたちで研究論文を執筆。論文では「セミAはすでに30年近く土の中にいることから、肯定的な言葉に含まれる波動の意志がセミの寿命に働きかけを行っているのは明白である」とし、「今後はこの成果を日常に応用することで、寿命におけるメリットだけでなく、教育・道徳的にも有用な効果が期待される」と結んでいる。
 「セミの生存は確認できているのか」という本紙の取材に対し、日暮教授は「飼育ケース内の環境を維持するため、実際に土を掘って確認することはできないが、私にはセミの生命力の波動が毎日ひしひしと伝わってきている」と話し、セミの生存を確信しているとの認識を示した。
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 はい、「水伝(みずでん)」(「水からの伝言」)のパロディーです。元々の虚構(ニセ科学・似非科学・疑似科学)を、こういう〝記事〟にできる虚構新聞〝記者〟の発想(以前、麻生元首相のおちょくり〝記事〟を紹介しました)に、いつもながら、大層感心しています。「肯定的な言葉に含まれる波動」や「生命力の波動が毎日ひしひし」といった部分の味わい深さ。某所で言いましたが、国歌を聞かせたらどうなるのでしょうね、氷の結晶の形は?「教育・道徳的にも有用な効果が期待」など、ポエムとしての「水伝」の罪深さ・・・。
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●『ブルー・ゴールド』映画化!!(1/2)

2010年02月12日 05時02分14秒 | Weblog

偶然、2月6日(土)の朝日新聞紙上で、『ブルー・ゴールド』が映画化されていたことを知りました。先程、asahi.comを調べてみると、以下の記事がありました。

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【http://www.asahi.com/showbiz/
           
movie/TKY201001220293.html】
水ビジネス過熱に警鐘 「ブルー・ゴールド」』 (2010年1月23日)

 水問題を描くドキュメンタリー「ブルー・ゴールド 狙われた水の真実」(サム・ボッゾ監督)が東京・渋谷のアップリンク(03・6825・5503)などで上映されている。汚染や枯渇といった環境問題と並んで、多大な富を生む「利権」として水を奪い合うことの危うさに警鐘を鳴らす。
 多国籍企業水ビジネスの拡大ぶりが子細に描かれる。途上国では水道事業民営化によって命をつなぐ水にことかく人々が増える。水資源開発競争も過熱する。水資源に恵まれた日本も、けっして無縁とは言えない危機の実情を、専門家の解説とともに報告する。
 24日には証言者のひとりモード・バーロウの著書「ウォーター・ビジネス」を翻訳した佐久間智子さんと沖大幹東大教授のトークもある。
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つづく

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●『ブルー・ゴールド』映画化!!(2/2)

2010年02月12日 04時54分39秒 | Weblog

つづき
 「石油戦争の世紀」から「水戦争の世紀」へ。公共財〝マネー〟ビジネス化して大丈夫なのか? 「ウォーター・バロン」どもの蠢き。 「ブルー・ゴールド」・「Blue Gold」、正に云い得て妙。
 この問題の先駆者(?)の佐久間さんのお名前も。竹山徹朗さんの「PUBLICITY」(パブリシティー)での佐久間さんの長大なインタビュー記事(No.1187-1120)は、当時、とても勉強になった。ブルー・ゴールド」・「Blue Gold」という言葉とともに、いまも、このインタビュー内容を様々な場で利用・活用させてもらっている。
 ついでに、映画の公式サイト映画『ブルー・ゴールド -狙われた水の真実』公式サイトが在りました。短いですが、そのWP上の映画の予告編を是非見てもらいたい!! また、「Blue Gold: World Water Wars」というWPも。
 この映画の方が、ゴア元米副大統領の『不都合な真実』などを読んだり、見たりするよりも、はるかに有益だと思われます。
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●単なる目立ちたがり?

2010年02月11日 05時05分55秒 | Weblog

なにかと噂の阿久根市の市長についての記事

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【http://www.zakzak.co.jp/society/
     politics/news/20100209/
              
plt1002091240001-n2.htm】

政教分離に抵触? 阿久根市長が神社に「さざれ石」奉納』
                               (2010.02.09)
 
ブログ問題などで物議を醸している鹿児島県阿久根市の竹原信一市長が8日、「君が代発祥の地」として知られる大宮神社(同県薩摩川内市)に「さざれ石」を奉納した。専門家は「政教分離の原則に抵触する恐れがある」と指摘している。
 市などによると、奉納式には竹原市長ら市関係者3人が出席。「奉納 阿久根市 竹原信一」と記された木製の台座に幅約40センチ、奥行き約30センチ、高さ約30センチの石を置き、宮司がおはらいをした。玉ぐし料などは納めておらず、公用車も使っていないという。
 竹原市長は共同通信の取材に応じなかった。市総務課は「市長が公人ではなく、私人として行ったことならば、市としてコメントはできない」としている。鹿児島大の平井一臣教授(政治学)は「公費を使わないなど配慮しており、直ちに問題視はできないが、基本的には政教分離の原則に抵触する可能性がある」と話した。
 大宮神社によると、君が代の歌詞が同神社で奉納される神楽に由来するとの説がある。さざれ石は、小石の集まりが炭酸カルシウムなどで固まった石の塊。同神社にはこれまで祭られておらず、阿久根市の教育委員が同市内で見つけたものを奉納したいと神社に持ち掛けたという。
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 「市長ら市関係者3人」も個人として密やかにやればよいのではないでしょうかね。公用車は使っていないし、「私人として行ったこと
」だそうだけど、年休でも取って行ったのかな? この市長さん、単に目立ちたいだけ? 職員に対する対応など、常軌を逸しています。当たり前だけど、市長といっても色々
 
教育委員が同市内で見つけたものを奉納したいと神社に持ち掛けた
」って、他にやるべきこと、考えるべきことが多数あるように思いますが。都教委(というか一部の都議の問題かな)も酷いけど・・・。



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●「新自由主義経済」に戦いを挑む映画?、再び

2010年02月10日 04時55分36秒 | Weblog

以前ご紹介した記事に引き続き、再び、町山智浩さんのブログ『ベイエリア在住町山智浩アメリカ日記』(http://d.hatena.ne.jp/TomoMachi/)に「2010-02-07 傲慢な大企業をおちょくるイタズラ二人組の逆襲!」という記事が出ています。以下に、コピペさせていただきます。

=======================================<【http://d.hatena.ne.jp/TomoMachi/
                             20100207】
『2010-02-07 傲慢な大企業をおちょくるイタズラ二人組の逆襲!』

 
毎週日曜日夜11時から東京MXテレビで放送中の「松嶋×町山 未公開映画を観るTV」、本日2月7日の夜は『イエスメン』の続編『イエスメンが世界を直す!』をお送りします!
 
イエスメンは大企業や政府の広報担当者の名をかたってマスコミに登場するイタズラ二人組。前回はWTO広報官のフリをして、貧しい国を食い物にするグローバリゼーションをおちょくったが、今回は政府の介入しない自由市場、企業間の競争だけが世の中を良くすると信じる新自由主義経済が敵だ!
 
多国籍化学企業ダウ・ケミカルや、世界一の石油企業エクソン・モービル、それに新自由主義の教祖ミルトン・フリードマンの弟子たちを相手にイエスメンがイタズラしまくる!
=======================================

 WTOダウ・ケミカル、新自由主義教祖ミルトン・フリードマン」・・・、目の付けどころが素晴らしい。町山さんの記事にはYouTubeの映像も貼ってあります。
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●横浜事件刑事補償

2010年02月09日 05時13分03秒 | Weblog

敗戦前の冤罪事件として注目すべき横浜事件について、inti-solさんの2月4日のブログ(http://plaza.rakuten.co.jp/intisol/diary/201002040000/)にも出ていましたが、以下は、AMLに代わるCMLに出ていた記事です。

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【http://list.jca.apc.org/public/cml/
              2010-February/002815.html】
[CML 002865] 横浜事件で遺族の訴えを認める判決
 
戦時下最大のえん罪事件である横浜事件で、遺族が提訴した刑事補償について、横浜地裁は遺族の訴えを認める決定を出したとのこと。判決では当時の司法関係者を批判したとのこと。
・・・・・・
========================================

 最高裁で再三の再審請求を免訴しておきながら、今さらという感じはぬぐえませんが、遺族の皆さんには「判決では当時の司法関係者を批判した」という部分がせめてもの救いでしょうか。
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●アフガニスタンの現実

2010年02月08日 05時11分21秒 | Weblog

アメリカ米軍侵略先のアフガニスタンで何をやっているのかについて世田谷通信に以下の記事が出ていましたので、コピペさせていただきます。
 
侵略軍とはそういうものであり、われわれも
加害者

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【http://kikko.cocolog-nifty.com/kikko/
                 
2010/02/post-0f35.html】
「米軍がアフガニスタンで赤ん坊を射殺」(世田谷通信)
 
NATO(北大西洋条約機構)は、アフガニスタンで米軍部隊が民家を襲撃し、赤ん坊を含む民間人を少なくとも5名殺害したと、日本時間の2日、発表した。NATOの発表によると、1月30日、アフガニスタンのウルヅガン州の村のテロリストのアジトを夜襲した米軍部隊は、テロリストとは無関係の民間人を銃撃し、赤ん坊を含む5人を射殺、赤ん坊の母親と思われる女性をはじめ数名に重軽傷を負わせた。スポークスマンのウェイン・シャンクス米軍大佐は遺憾の意を表明したが、米軍部隊によるアフガニスタンの民間人殺害は毎月のように起こっており、昨年の年末にもクナール地区の東の村の民家を襲撃し、テロリストとは無関係の11才から17才までの少年8名を含む計10名の民間人をその場で射殺した。アフガニスタンでは米軍に抗議する大規模なデモが続いており、米軍に協力している日本を始めとした国々にも批判の目が向けられている。アフガニスタンの民間人を殺し続けている米軍部隊の中には、沖縄の基地から出兵している部隊も含まれており、日本に米軍の基地がある限り、われわれ日本人も無差別殺人の加害者なのである。(201023日)
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●『下山事件〈シモヤマ・ケース〉』読了(1/6)

2010年02月07日 16時57分48秒 | Weblog

下山事件〈シモヤマ・ケース〉』、2月に読了。森達也著。新潮文庫。2006年12月刊。単行本に続いて、購入。

 昭和最大のミステリーに対する、ワクチンなき「下山病」(p.68、325、376)。

 井筒和幸監督と『彼』こと柴田哲孝氏(p.400)。『彼』の正体は今回初めて「文庫版のための付記」で知る。

 国鉄三大ミステリー、あるいは、陰謀事件。「初代国鉄総裁である下山定則が、常磐線の線路上で轢死体で発見された下山事件、車庫にあった無人電車がいきなり暴走して運送店に突っ込み、多くの死傷者を出した三鷹事件、そして列車転覆してやはり死傷者を多数出した松川事件、この三つの事件が、一九四九年の七月から八月にかけて立て続けに起きた」(p.13、63、135、139)。
 「・・・初代国鉄総裁が就任早々に轢死体で発見されるというこの衝撃的な事件・・・。/・・・今も決定的な証拠はない。しかしこの事件がきっかけとなって、戦後日本の進路が、大きく軋みながらドラスティックに変わったことは間違いない。労働運動は大きな転機を迎え左派勢力は急激に衰退し、日本とアメリカの関係はより強固なものとなった。翌年に勃発した朝鮮戦争では、米軍からの特需がその後の高度経済成長の大きなきっかけとなり、その帰結が日米安保と五五年体制に結びついた」(p.31)。
 家永三郎さんは「・・・松川事件について、・・・「結果的にはこの事件が当時の権力者、支配者の側に大きなプラスをもたらした・・・。それまで政府は革新勢力に押されていたのだが、事件は・・・、日本の局面を大きく変えた」」(p.64)。

 児玉誉士夫、笹川、岸信介(p.44、162)。

 元共同通信の斎藤茂男さん(p.59)。新右翼「一水会」顧問の鈴木邦男さん(p.162)。安岡卓治さんと丹羽順子(にわ)さん(p.228、324)。
 斎藤茂男さんの訃報とやり残したこと。「こうして「週刊朝日」と自主制作ドキュメンタリー映画という二段構えの取材が始まった直後、斎藤茂男の訃報が届いた。一九九九年五月二十八日。享年七一歳。胃癌だった。・・・/・・・記事中には家族の談話として、斎藤が「ひとつだけやり残したことがある」と語っていたことが紹介されていた。/「その、やり残したことって何だと思う」/・・・「・・・・・・下山事件?」/「僕はそう思っている」」(pp.234-235)。
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●『下山事件〈シモヤマ・ケース〉』読了(2/6)

2010年02月07日 16時54分52秒 | Weblog

森達也著、下山事件〈シモヤマ・ケース〉』】

 ドキュメンタリー映画『』。「・・・オウム施設からみる社会の剥きだしの断面に衝撃を受けた僕は、「オウムを視点に見る日本社会」というテーマにこだわりつづけた」(p.133)。「オウムや下山事件以外にも、放送禁止歌動物実験、日本で死んだベトナム王族の生涯や超能力者の日常など、・・・視聴率が望めないことやテレビメディアにおいてはタブーであることを理由に、局からは拒絶されることが続いた」(p.133)。ドキュメンタリー映画『A2』(p.372)。
 「・・・「週刊朝日」のデスクに言われた「世紀のスクープ」という慣用句にあるのだろう。・・・このフレーズが、ここのところなぜかしっくりこない。口にするたびに舌の先に拭(ぬぐ)えない違和感が残る。/・・・事件の背景や真相を暴くこと・・・、それで終わって良いのかという感覚が、少しずつ僕の中に芽生え始めていたからだ。・・・ドキュメンタリー『』を撮る過程でメディアから疎外された僕は、それまで臆面もなく信じ込んでいた報道の客観性や中立性などの概念を、自分の中で一旦解体しなければならない局面に追い込まれた。その帰結として、僕らが取材で知ったつもりになっていた数々の事実が、実は事象の一面でしかなく、如何に不確かで脆弱な存在であるかということをつくづく思い知ってもいた。/要するに事実を暴くことは、僕にとっての最終的な目的ではない。知った事実を素材にして、そこから何を自分が感知するのかが重要なのだ。・・・「週刊朝日」が・・・それ以上は求められていない。僕の思いなど不要なのだ。/・・・僕はこの感情を封印した。想像すらできなかった事態が起きるのはこの翌年だ」(pp.199-200)。「・・・「週刊朝日」の短期連載では、事件の謎ときが主軸となる。・・・そこに付随する僕の煩悶(はんもん)や葛藤は、恐らく不要なものとして切り捨てられる。商業誌である以上、それは仕方がない。/謎は解きたい。でもそれだけで終わらせたくない」(pp.228-230)。
 『週刊朝日』の現編集長・当時記者山口一臣氏と諸永裕司氏(pp.195-197)。裏切り(p.313)。「『彼』・・・「もういいよ」と呆れたように言ったそうだ。・・・僕には連絡がない」(p.323)。「とことんやられている・・・。/呆れたように・・・」(p.368)、「・・・最低限の仁義はあるはずだ。・・・そのルールは守ってくれるはずだ・・・。」(p.372)。「・・・僕に一言知らせるべきだろう」(p.373)。
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●『下山事件〈シモヤマ・ケース〉』読了(3/6)

2010年02月07日 16時51分47秒 | Weblog

森達也著、下山事件〈シモヤマ・ケース〉』】

 キーとなるもの、「亜細亜産業」(p.65、316、367)、「矢板玄(くろし)」(p.41、66、203)、「キャノン機関」(p.132、160)、「ライカビル」(p.226)、初代国鉄副総裁・第二代目総裁加賀山(p.345)。
 「キャノン機関の犯罪であったことが公式に証明された鹿地事件や、・・・佐々木克己大佐事件・・・。・・・この時代はアメリカの諜報機関が背景に動く誘拐拉致事件が相次いだ。・・・。下山事件も含め、拉致監禁は占領軍諜報組織のお家芸のようだ」(p.160)。

 権力者やメディアの恣意的誘導。「・・・増田甲子七(かねしち)官房長官は公式発表した。三鷹事件直後の吉田茂の発言と同様に露骨なまでに恣意的な世論操作だが、アカ(共産党)への恐怖におびえる国民のほとんどは、この声明をまさしく額面通りに受け取った。/・・・子供の悪戯レベルの妨害事件までも、全国紙が大々的に報じ始めたと・・・。その理由は単純だ。不安や危機意識を掻きたてたほうが、読者の関心を喚起し部数は伸びるからだ。この構造は、・・・現在もまったく変わらない。いやむしろエスカレートしている。何か事が起きるとき、メディアはこれを煽り社会不安を掻きたて、そしてこれを利する力が闇に動く。/・・・自覚や葛藤をメディアが失ったとき、民意のスタンピード現象が起き、国家という共同体の暴走がいつのまにか始まっている。スタンピードを起こした牛の群れに、きっかけは最早わからない。ただ突進するだけだ。川に落ちるか崖にぶつかるまで。過去もそして現在も、日本はこの同じメカニズムをくりかえしている」(pp.139-141)。
 「・・・事件をきっかけに世論が大きく一方に動き、その流れを利する組織や人間たちが現れるというこの構造は、たぶん今も昔も変わらない。・・・地下鉄サリン事件を契機に国旗国歌法有事法制が具体的に決められ、北朝鮮拉致問題が大きくクローズアップされると同時に国交正常化が棚上げにされて最悪の日朝関係に閉塞したように、日本という国は常に、事件が起き、世相が沸騰し、行政やメディアがこれに便乗や従属するというダイナミズムをくりかえしてきた。/もちろんこの構造は日本だけの現象ではない。「9・11」後のアメリカ・・・」(p.208)。
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●『下山事件〈シモヤマ・ケース〉』読了(4/6)

2010年02月07日 16時49分25秒 | Weblog

森達也著、下山事件〈シモヤマ・ケース〉』】

 弱みにつけ込む宗教家もどき。「「・・・警視庁捜査一課は自殺と結論づけましたが?」/「一課? あそこは何が何でも自殺にしたかったんだよ。だから霊媒師まで連れて来た」/・・・捜査の打ち切りに、下山の家族、特に芳子さんは納得していなかった。自殺を主張する捜査一課の刑事が二人、霊媒師と称する女性を下山家に連れて行ったのはそのころだ。仏壇の前に座った彼女は突然、「私の死は自殺だ。このことをお前の口から世間に広めて欲しい」と芳子に語りかけた。要するに下山の霊が憑依したということらしい。/・・・/「芳子さんはすぐに彼らを追い返したひどい話だ、怒るのも当たり前だ」/「でも、どうして一課はそこまでして自殺にしたかったんでしょう」/「さあね。でもこれは事実だよ」」(pp.204-205)。

 
裏切りへの絶望と諦観、取材対象との関係。「・・・「週刊朝日」が店頭に並ぶ。その前に■■○○には会わねばならない。会って詫びねばならない。彼や彼の家の名誉やプライバシーを侵害することそれ自体を、過剰に詫びるつもりはない。加害はぼくらの仕事の宿命。掲載を止めろと詰め寄られても応じる気はない。・・・ただ予期しなかったこととはいえ、今回は明らかに手続きを誤った。加害が宿命だからこそ、僕はその加害に対して自覚的でありたかった。伝えねばならない。不意打ちだけはしたくない」(p.318)。
 「「最初から?」/・・・/「・・・・・・そのつもりでした」/「ずっと、俺や兄貴が下山事件の犯人かもしれないと思っていたのかい」/「思っていました。今もその可能性はあると思っています」/・・・/「・・・・・・信用した俺が甘かったんだよ。森さん、謝ることはないよ。あんたはそういう仕事なのだろう。信用したのは俺なんだから。」/・・・/■■○○は・・・仄かに赤みを帯びた目元が微かに潤んでいる。・・・/いつのまにか席を外していた奥さんが、皿に切り分けた西瓜をテーブルに運んできた。森さん食べてください。残されても困ります。夫婦二人で持て余すだけなんだから。切り分けた西瓜はもう元には戻せないんですよ。・・・甘さが左の奥歯に染みた」(pp.320-322)。「・・・静養中の■■○○に連絡を入れて、僕は撮影を打診した。連載が終わった直後だ。われながら呆れるほどの無神経さだ。/・・・/また新しい誰かを紹介してくれるのかい? と○○は受話器の向こうで快活に笑う。/・・・/・・・連載はすべて読み終えたはずなのに、彼の僕に対する姿勢には、まったくといっていいほど変化はない。・・・恨みごとのひとつも言いたくなるはずだと思うのだが、そんな気配は欠片もない。/もしかしたら○○は、最初に自宅を訪ねたその日から、僕の内心の思惑になんとなく気づいていたのかもしれない。・・・ふとそう思いたくなるほどに、○○は徹底して自然だった」(pp.362-364)。
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●『下山事件〈シモヤマ・ケース〉』読了(5/6)

2010年02月07日 16時45分48秒 | Weblog

森達也著、下山事件〈シモヤマ・ケース〉』】

 誰が得をしたのか? 「「あの事件で得をしたのはだれだと思いますか」/「それは、・・・加賀山さんだろうなあ」/・・・視線が合った。ほんの一瞬だけ停止した。・・・視線を逸らす。思わず口走ってしまったことを反射的に後悔した動作のようにも見えるが・・・。/得をしたのは加賀山。この台詞(せりふ)は、当時の国鉄関係者の何人かが口にした」(p.345)。
 佐藤栄作元首相と検閲で消えた名前。「・・・佐藤(栄作)に頼まれて、下山事件の下手人を逃がすために弘済会を利用させたんだ」(p.347)。「・・・ゲラを見て驚いた。「佐藤栄作」と記したはずが、「宰相経験者のA」という表記にかえられている。・・・/「・・・朝日は過去に佐藤栄作の自叙伝を出しているからだって」/「ジョークにもならない」/・・・連載に触発されて後世に残すべきかと煩悩しながら、意を決して僕を訪ねてくれたのだ。・・・決意と思いを、過去にその人物の出版物があるからという下らない理由で踏み躙られたくない」(pp.356-357)。

 バンクーバー映画祭での盛況下、次回作について。「・・・次回作について聞かれ、そのたびに僕は「シモヤマ・ケースのドキュメンタリーを今撮影しています」と答えていた。・・・事件の概要と併せて、「オウムを撮りながら、・・・シモヤマ・ケースがその後の日本の進路を変えたことは明白な事実だが、日本人のメンタリティにも大きな影響を与えた可能性があると思うのです」などと動機も説明した」(pp.360)。

 「その中曾根が田中角栄や児玉誉士夫と共に関与が噂されたロッキード事件の際に、子飼いの中曾根の逮捕だけは見送るようにと法相だった稲葉修に圧力をかけたことを四元は・・・インタビューで自ら明らかにしている。ちなみにこのときの検事総長は、かつて東京地検で下山事件を担当した布施健だ。/・・・/・・・四元の威光を背景にした中曾根は首相となって行革を推進し、一九八七年には念願の国鉄分割民営化も実現した。新しく発足したJR総連・・・は、革マルとの関係を取りざたされ、二〇〇二年には警視庁公安部によってJR東労組組合員六名と元組合員一名が強要容疑で逮捕されるという浦和事件が起きた。JR総連側は冤罪不当逮捕を主張している」(pp.383-385)。
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●『下山事件〈シモヤマ・ケース〉』読了(6/6)

2010年02月07日 16時41分20秒 | Weblog

森達也著、下山事件〈シモヤマ・ケース〉』】

 森さんの見るシモヤマ・ケースShimoyama Caseの本質。「アメリカにとって最も都合が良い展開は、下山殺害の背景に共産党が暗躍していたというイメージを日本人が抱くことだ。・・・共産化はくいとめられる。・・・マッカーサーとしては、最も好ましい展開だ。しかし警察が他殺の線で本格的に動けば、捜査の手がいつかは真相に及ぶ可能性はある。・・・警察や検察は抑えることはできるとしても、メディアによってこの謀略が世に知られることだけは、絶対に防がねばならない。なぜなら日本という国は総体として民意で動く。そしてその瞬間、アメリカは極東での足場を失う。/だからこそ公式には自殺にして、捜査は中断させねばならない。しかし総裁は殺されたのかもしれないという意識だけは、日本に根付かせたい。「何をするかわからない」共産主義によるテロの脅威を、しっかりと植え付けたい。/事態はまさしく、このとおりに展開した。下山の後に三鷹、松川と事件が続き、実際に共産党員が検挙されたことで、日本国民の不安と共産党への警戒心充分に喚起された。裁判はどうせ長引く。そのあいだに日本を変えればよいハリウッド 映画や野球やコカコーラで、アメリカナイズすればよい」(p.389)。その後の日米同盟関係、イラクへの侵攻、北朝鮮との関係・・・ご存じの通り。

 三つの書物の不幸な関係。解説は佐野眞一氏「戦後という時空間の底知れない闇」(p.407)。
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●有益どころか「危険・損・無意味」・・・最悪

2010年02月06日 05時35分49秒 | Weblog

 原発・プルサーマルに関して、AMLに代わるCMLに以下の記事がありましたので、一部をご紹介

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http://list.jca.apc.org/public/cml/2010-February/002790.html
[CML002840](九州) プルサーマル裁判準備集会 2月21日
 佐賀県の・・・です。我が国初のプルサーマルこと商業用プルトニウム核分裂発電が佐賀県で12月に始められてしまいました。京都大学 原子炉実験所の小出裕章先生に言わせれば 「技術的には危険、経済的には損、資源的には何の意味もない」 プルサーマルです。これをやめさせるべく九州電力 株式会社を相手に裁判を起こします。その準備集会のご案内です。・・・・・・
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 小出裕章さんの「「技術的には危険、経済的には、資源的には何の意味もない」プルサーマル」という言葉の意味を考えてもらいたい。有益どころか、危険・損・無意味・・・なんのためにやる必要があるのだろうか。かって「巨費を使えば使うほど儲かるシステム」が公的電力企業にも認められていた訳だが、電力私企業に富をもたらす仕掛けが今も健在なのか? 松下竜一センセの云う「もう、もうけもほどほどにしましょうや」・「ほどほどにとどめよう」、あるいは、内橋克人さんの唱える浪費なき成長や「EC」に素直に耳を傾けるべきではないのか。電力を使いつつも、開き直ってわれわれも主張して良いのではないか。
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