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吉川みつこの〝気ままではいられない〟日記
▲産業廃棄物問題:安定型処分場の現状について(毎日新聞より)
安定型処分場では、安定5品目以外のものも混入し、硫化水素が発生したりしています。瀬戸市でも、2年ほど前だったでしょうか、きつい臭いが処分場周辺に漂っていました。廃棄物の過剰埋立などの問題もありますが、まだ、未解決です。
また、最近では、アスベスト使用製品も安定型処分場に運び込まれており、周囲の方々は、様々な不安を持っていらっしゃいます。
毎日新聞に、安定型処分場の現状と課題について、まとまった記事が載りました。参考となるので、ご覧下さい。
産業廃棄物:安定型最終処分場はいま/上 「安全」なのに防げない汚染
◇展開検査導入後も続く違法混入
http://mainichi.jp/life/ecology/archive/news/2008/11/20081117ddm016040186000c.html
産業廃棄物:安定型最終処分場はいま/下 存続か廃止か、国と自治体ねじれ
◇「規制強化で対処」「検査徹底は無理」
http://mainichi.jp/life/ecology/archive/news/2008/11/20081124ddm016040008000c.html
以下、リンクが切れるといけないので展開しておきます。
産業廃棄物:安定型最終処分場はいま/上 「安全」なのに防げない汚染
◇展開検査導入後も続く違法混入
産業廃棄物を素掘りの穴に埋める「安定型最終処分場」の環境への影響が問題になっている。法制度上は安全な産廃だけを埋めるはずなのに、各地で汚染が起き、建設差し止めを認める最高裁決定も今年相次いだ。環境省は25日、検討会を作って対策を議論するが「廃止は考えていない」と、見直しも小幅になる見通しだ。「安定型」の現状と課題を報告する。【日野行介】
◆各地で相次ぎ問題に
安定型の特徴は素掘り処分だ。本当に安全な廃棄物だけなら、安価で合理的な方法と言える。一方、有害物質が混入すれば、周囲への影響を防げない。
滋賀県栗東(りっとう)市の安定型処分場は80年に埋め立てを開始。99年、周辺の排水管から高濃度の硫化水素が噴出し悪臭を放った。県の調査では、場内を通った水(浸出水)から国の基準を上回る鉛やカドミウム、ダイオキシン類が検出された。埋めてはいけない廃油や焼却灰が入ったドラム缶約250本も地中から見つかった。県は01年、業者に改善命令を出したが業者は破産。根本対策は取られていない。
今月上旬、金網で囲まれた処分場に入った。十数本のドラム缶が地面に放置され、腐食した部分から黒い液体が漏れている。薬びんや点滴液のプラスチック容器が無数に転がる。
処分場の隣で園芸店を営む青木安司さん(78)は「地下水は汚染され、ドラム缶も有害物質もまだ埋まっている。取り除いてほしい」と訴える。
宮城県村田町や三重県四日市市などでも同様の環境汚染が問題になっている。
◆最高裁「差し止めを」
汚染が発生した安定型処分場では、有害な廃棄物が「安定5品目」に混じっていた。違法な混入を防ぐため国は廃棄物処理法の省令を改正し、98年6月から処分場業者に対して、産廃を受け入れる際に地面に広げて内容を調べる「展開検査」を義務づけた。だが、それでも混入は続く。
長崎県大村市の安定型処分場は98年9月に埋め立てを始めた。しかし01年と06年、県の検査で浸出水が処分場の水質基準を超えた。地元選出の山田正彦衆院議員(民主)は06年12月に国会で「(安定5品目以外の)布や紙、布団などを埋めているのを見た」と指摘した。県は今年7月、業者に改善命令を出したが、履行期限の10月1日を過ぎても改善は確認できていない。
大阪府泉大津市の「泉大津沖処分場」は、大阪府や大阪市などが共同運営する。海面を埋め立てるため、ダンプカーが次々と、廃棄物を運んでくる。荷台からばらまかれた産廃の中身を、係員2人が1台当たり数分かけて検査する。
だが埋め立て場には、安定5品目外の木くずが無数に転がる。処分場責任者の佐嶋博・泉大津事業所長は「厳しく検査をしているが混入をすべて防ぐのは難しい」と明かす。小さな有害ゴミは、そのまま埋めてしまうという。
産廃を持ち込む側はどう見ているのか。近畿地方のある解体業者は「泉大津は厳しい方。民間の処分場業者が、全ダンプカーを検査するのは物理的に難しい。何でも受け入れる処分場もある」と打ち明けた。
展開検査の実効性は裁判でも疑問視された。水戸市の住民が安定型処分場の建設差し止めを求めた訴訟で、05年7月の水戸地裁判決は「(検査をする)処分場業者は(代金を払って産廃を運び込む側と)経済的な依存関係にあり(検査の)実効性は疑問視せざるを得ない」と指摘、建設を禁じた。今年5月にはこの判決を支持する最高裁決定も出た。
日本弁護士連合会の調査では、安定型処分場の建設差し止めなどを認める判決や決定は92年から05年までに17件。多くが水戸地裁判決同様、展開検査などの実効性を認めなかった。日弁連は昨年9月、安定型処分場制度の廃止を求めて環境省に意見書を出した。
◆5品目自体も「危険」
「安定5品目」自体にも環境汚染の危険が指摘されている。国立環境研究所の94年の報告書によると、安定型処分場の浸出水から環境ホルモン(内分泌かく乱物質)と疑われてきた化学物質「フタル酸化合物」が検出された。プラスチックの添加剤が溶け出したとみられ「将来的にはプラスチックを安定型処分場に埋め立てるのは見直すことが望ましい」と指摘した。
関口鉄夫・元長野大講師(環境科学)は約15年前、雨水にさらされる地中にプラスチックを3カ月間埋めて実験した。浸出した水から、環境基準を上回る鉛や、ベンゼンなどの有機溶剤が検出された。
処分場の設置許可は都道府県が出す。滋賀県は、安定5品目の中でも金属くずは投棄を認めない方針で、処分場業者には残り4品目に限った許可申請を指導している。県の担当者は「以前からの慣習。腐食した場合の汚染を恐れるからではないか」と説明する。
処分場問題に詳しく、理学博士(生化学)でもある梶山正三弁護士(横浜弁護士会)は「純粋な安定5品目など存在しない。添加剤が重量の50%以上を占めるプラスチックもあり、化学物質の固まりを素掘りの穴に捨てるようなもの。金属も必ず腐食する。リスクは無視できず、安定型処分場は廃止すべきだ」と話す。
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■ことば
◇安定型最終処分場
産業廃棄物のうち、廃プラスチック類▽ガラス・陶磁器くず▽がれき類▽ゴムくず▽金属くず--の「安定5品目」に限って受け入れを認める処分場。5品目は化学的に安定で有害物質は出ないとされ、素掘りの穴に埋めてよい。環境省によると、06年4月現在、全国に1413カ所ある。より規制が厳しい「管理型処分場」は889カ所だ。05年度には、産廃の最終処分量約2400万トンのうち約700万トンが安定型に埋められたとみられる。
毎日新聞 2008年11月17日 東京朝刊
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産業廃棄物:安定型最終処分場はいま/下 存続か廃止か、国と自治体ねじれ
◇「規制強化で対処」「検査徹底は無理」
各地で汚染が問題になっている「安定型最終処分場」だが、廃棄物を持ち込む業者はコストが安い「安定型」での処分制度の存続を求め、環境省も存続を目指している。一方、汚染に悩む周辺住民は制度廃止を求め、処分場業者を監督する自治体も「本当は廃止してほしい」と漏らす。【日野行介】
◆安さが魅力
産廃の最終処分場には安定型のほか、地下水汚染の恐れがある産廃を対象とする「管理型最終処分場」がある。管理型処分場では、穴の周囲にゴムやビニールのシートを張り、水がしみ出すのを防ぐ。穴の中の水は排水管で集め、専用の設備で浄化して放流する。設備費がかさむ分、利用料も高い。産廃1トンを処分してもらうのに2万円以上かかる。
一方、安定型処分場は素掘りで、シートなどは張らない。必要な設備は、産廃からしみ出す水を検査するため地下に向けて通したパイプぐらい。処分料は1トン5000円程度で済み、管理型の約4分の1。がれきなどを大量に出す解体業者にはありがたい存在だ。
京都市西京区で、バス営業所の解体工事に立ち会った。解体会社「久五郎」(同市伏見区)の作業員がパワーショベルで木造の建物を壊す。マスクを着けた作業員が、がれきや瓦などの「安定5品目」と、それ以外の木くずや鉄くずなどに分ける。礒谷真也工事部長は「壊すよりも分別に手間がかかる」と語る。
同社は年間約1万トンの解体ごみを滋賀県の安定型処分場に運ぶ。数年前に手がけた大型商業施設の解体では、約3万7000トンのがれきが出た。西田彰邦社長は「安定型処分場は不可欠だ。廃止されたら年間の処分費用が数億円はね上がる」という。
全国の安定型処分場に埋められる産廃は、推計で年約700万トン。すべて管理型に埋めると、単純計算でも費用が1000億円以上増える。全国約1万6000社の産廃処理業者が加入する「全国産業廃棄物連合会」(事務局・東京都)も、産廃を持ち込む顧客の意向を受けて安定型処分場の存続を求める。
◆「不法投棄が増える」
こうした要望に対して環境省産業廃棄物課は「安価な処分の道を閉じれば、不法投棄が増加する恐れもある」として、安定型処分場の廃止は考えていないと説明する。
だが今年、環境汚染の恐れを重視して安定型処分場の建設差し止めを認める最高裁決定が2件続いた。環境省が安定型処分場に義務づけている産廃の内容物の事前検査(展開検査)についても、最高裁決定を含め多くの司法判断が実効性を否定。処分場に有害物質が混入する危険性を認めた。
それでも環境省は「最高裁はすべての安定型処分場を否定してはいない」と主張する。「展開検査をしっかりやっている処分場もあり、問題は徹底されないこと。都道府県が業者に実施させることが必要」と、規制強化で対処する意向を示唆した。
一方、最高裁決定への対応として環境省は今月25日、安定型処分場についての検討会を発足させる。有識者5人と都道府県の担当者1人、全国産業廃棄物連合会から1人の計7人が委員。省令で定める技術基準の強化・徹底や、有害物質が漏れ出たとしても水源への影響が避けられる立地規制など、「存続」を前提に議論してもらう。非公開で3回ほど会合を開き、今年度中に方向を定めたいという。
◆「責任取るのは現場」
同じ行政でも、現場で処分場の規制を担う自治体の意見は異なる。国の方針に表立って逆らうのは難しいが、不安を隠さない。
自治体は、汚染が生じれば、住民に直接、責任を追及される。しかも汚染対策には費用がかさむ。滋賀県栗東(りっとう)市の汚染では約50億円、宮城県村田町では約30億円に上る見通しだ。処分業者が倒産して対応できない場合、費用はたいてい、自治体の負担になる。
全国知事会は今年7月、「(安定型処分場)周辺の水道水源への影響に配慮し、設置の許可基準や規制を強化すべきだ」と環境省に要望した。表向きは廃止までは求めていない。
だが、西日本のある県職員は「展開検査で有害廃棄物の混入を防げないことなど分かっている」という。「存続する限り汚染は続く。すぐにでも廃止してほしい」。別の県の職員は「担当者が少ないため、県内すべての処分場に年1回立ち入るのも難しい。どうやって展開検査を徹底させるのか」と話し、環境省の徹底方針には現実味がないと指摘する。さらに「安定型処分場を許可しても地元自治体にメリットは少なく、責任だけ負わされる。許可は心情的に苦痛だ。できればなくしてほしい」と打ち明けた。
廃止を求める声は市民団体などにも強い。「廃棄物処分場問題全国ネットワーク」は今年8月、環境省に廃止を求めた。日本弁護士連合会も昨年9月、廃止を求める意見書を環境省に提出した。
「安定」といいながら安全が保証されない安定型処分場。司法判断もこれを認める。低コストを優先してきた現状の処分制度は曲がり角にさしかかっている。
毎日新聞 2008年11月24日 東京朝刊