打越通信

日記ふういろいろ

ヴィンテージ

2016-01-29 21:21:56 | 日記ふう
自宅に帰りさっそくCDをプレイヤーにかけてみた。
やはりクルマで聞くより重みがあり迫力がある。
CDの後半にはチャイコフスキー:ピアノ協奏曲第1番が収録されていた。
CDには<April 23.1947 in New York Carnegie Hall>とあった。
今から70年も昔(ホロヴィッツが43歳の頃)の録音になる。
当然モノラル録音なのだが、デジタル技術でノイズカットやその他の加工がされているのかも知れない。
ピアノも小さな音から大きな音までレンジが広いが見事な音だ。
でも音の善し悪しではない。

中学生の頃だったか、当時ディープパープルやピンクフロイド、レッド・ツェッペリンといったハード・ロックの全盛の時代だった。
担任の先生が音楽の担当だった。
家に遊びに行くと、当時ステレオセットなるモノがデンと置いてありクラシックをとくと聴かせてくれた。
その影響かクラシックのLPを数枚買った思い出がある。
その一つがヴァン・クライバーンのラフマニノフのピアノ協奏曲3番とチャイコフスキーのピアノ協奏曲第1番だった。
ピアニストも知らなければピアノ協奏曲も知らずに買ったレコードだった。
それでも何度か聞いて曲は知っていた。

妻と一緒にチャイコフスキーの1番を聞いた。
パパパパーンと壮大な演奏で始まるのだが、ピアノの音が出てくるなり妻が笑い出した。
「リズムが合っていないよ」
と言う。
私もピアノとオケが喧嘩してるみたいだと思った。
「誰だかわかる?」
と問いかけると、何人かのピアニストらしき名前が挙がった。
「男なんだけど」
と言うと
「そうでしょうね、それも体格がいい人」
名前をいうとさすが元音大生でピアノ専攻していた人だ。
「そう「ヒビの入った骨董品」といわれた人」
とすぐに返事が返ってきた。
晩年(80歳過ぎ)に来日したとき、演奏を聴いた音楽評論家がそう評したそうだ。
それからピアニスト達の話になった。
まあ、私も中村紘子、フジコヘミングウェイ、辻井伸行くらいは知っていたが、ルービンシュタイン、アルゲリッチ、アシュケナージなど次から次へと名前が挙がってくる。
そういえばブーニンの演奏会にも行っていたっけ。
クラシックの事や特にピアノ関係の話になるととてもかなわない。
チャイコフスキーの1番も何度も聞いていたが、この演奏では細かな部分に大きな違いがある。
まるで違う曲を聴いているような感覚だった。
妻も笑いながら聴いているが
「面白い!」
と、最初はちぐはぐだった演奏も終わりになるに連れ意気が合い、終わった。
ピアノが壊れるのではないかという演奏に度肝を抜かれた思いだった。
古き良き時代というのか、温厚だった親父がこんな高揚のある音を聴いていたとは知らなかった。
ヴィンテージという言葉が合うのかわからないが、アンティークとは言いたくないのだ。