細田暁の日々の思い

土木工学の研究者・大学教員のブログです。

一流のもの

2014-07-27 19:41:50 | 職場のこと

これは真実だと思うのですが、一流のもの、というのは、それに実際に触れた人でないと理解できないと思います。一流のもの、とは何か、という議論はとりあえず置いておきます。

まず、学生時代の私自身、JR東日本に就職して数年間の私自身の行動の結果が一流ではなかったことを断っておきます。でも、その間に触れたものは一流でした。

関係する方々は気持ちの良い話ではないと思いますが、真実を記載します。

私が2003年10月に大学に赴任した後の、私が所属した研究分野の研究室ゼミは、とても一流のものとは言えないものでした。いろいろな理由があると思います。助教授がいない状態でしたから、教員側の戦力が十分でなかったのかもしれないし、まだ研究が本格化していなかった時期なのかもしれない。でも、とにかく私の目には、そのままでよいとはとても思えなかった。だから、実際にアクションを起こした。出来得るありとあらゆることをやったと思いますが、ここでは省略します。

一流のものを見たことがあって、志があって、 行動力があれば、少しずつですが、一流に向かって歩んでいくことができます。

問題は、一流のものを見たことがない人には、そんなものがあることすら分からない、ということ。

研究室では、学生が毎年のように入れ替わります。全員とは思いませんが、高い志を持った学生たちが多く、我が研究室の門戸をたたいてくれていると思っています。

例えば研究室ゼミ。学生たちがベストを尽くしたとしても、一流のものを見たことのない人たちがいくらベストを尽くしても、高いレベルには到達できないと思います。

一流の考え方とはこういう考え方で、それを例えば研究室ゼミという議論の場で実践する場合は、こういうやり方になる、ということを、具体的に示すのは教員の役割と思います。哲学を示すということです。哲学が明確な場の中で、学生たちはベストを尽くせばよい。また、哲学について語り合えばよいし、もっと高いレベルの考え方に気付くこともあるかもしれない。

そのような、哲学に溢れ、気力にみなぎった組織というのは、それらが自然に外にも伝わってきます。

なかなか簡単には上手くいかないとは思いますが、問題の根幹には、冒頭の「一流のものを見たことがない人には分からない」ことがあることを認識しておかないといけないと思っています。

もちろん、私なりのアクションは起こしております。。。。 


SWATのしきい値

2014-07-27 19:25:41 | 研究のこと

専門分野の話。

コンクリート構造物の品質確保小委員会(350委員会)がまだ準備段階ではあるものの、8/7の準備会へ向けて着々と段取りが進んでいます。4つのWGで進めることになりそうですが、それぞれのWGのミッションや主査、副査の候補などが決まってきています。私も副委員長ですが、WG3の主査を務めたり、WG1の中に設置される表層品質の評価SWGの主査も務めたり、と縦横無尽に動き回ります。いつものやり方ですが。

WG1は復興道路の品質確保を目的としたWGですが、その中に設置される表層品質の評価手法に関するSWGは、私が主査を務めるつもりです。基礎研究なのですが、実務で表層品質の評価技術を使いこなしていけるように情報を整備します。

例えば、表面吸水試験(SWAT)も、実構造物で計測した値が何を意味するのか、その解釈も含めて、しきい値のようなものを提示する必要があります。

今日は日曜日ですが、先ほど、大学ノートに一つの図を描いて、上記の考察をしていました。手持ちのデータを十分に活用することとともに、いくつかの実験を行ってデータを補足する必要も、もちろんありそうです。およその方向性は、30分弱の考察で固まったように思います。

いずれにせよ、私の思考は、すべて実構造物での実践に向かっています。SWATという手段から考えるのではなく、実構造物で品質確保を達成していくときに何が求められるのか、目的からの思考です。幸いに、SWATは、その目的を達成するために有効な手段の一つのようですので、SWATを用いますが、SWATから思考するわけではない。

目的から思考する、ということは、現実の現場で何が大事で、何が求められているか、を知っていないとできないことです。設計での耐久性照査の体系も十分に知っていないとできないことです。

だから、学生にできることではないと思っています。

であれば、私の力を利用すればよい。30分弱の考察で、方向性が分かるのだから、その力を活用しない手はないでしょう。

大きな方向性、目的達成のシナリオ構築は私の役割であっても、それを実際に達成していく中では無数の小プロジェクトをこなしていく必要があります。そこでは学生たちにも大奮闘していただきたい。

SWATの研究に限りませんが、指導教員、研究助手、学生の役割分担を、特に今年度辺りからはよく意識して、よくコミュニケーションを取ることができれば、研究は大いに進展すると思っています。それができずに従来のやり方に留まれば、機会を逸することになります。

まあ、快適なフランスの夏に比べて、日本の夏は大変でしょうから、体力・気力の維持だけで一杯かもしれませんが、研究室メンバーの奮起を期待します。