平成19年5月14日
私にとって、忘れられない日となった。
外出の予定がなかったので、家でパソコンに向かっていた。
お昼を過ぎた頃、そろそろお昼ご飯にしようかなと思った瞬間、電話が鳴った。
お昼時分に電話してくるなんて・・・非常識な人だな。
一体誰なんだろう?
表示されている番号にも、心当たりがない。
でも電話に出ないと、自動的に私の携帯に転送されてしまうので、仕方なしに受話器を取った。
もしもし・・・と、不機嫌な声で言う。
「akubiさんのお宅でしょうか?」
ちょっと! 名を名乗れ!と瞬間的に思い、
akubi: そうですけど、どちら様ですか?
tel : akubiさん、ご本人ですか?
akubi: そうですよ。
tel : 失礼いたしました。 こちらは○○レディスクリニックですが、早急に受診していただきたいんですが、今日の夕方は無理でしょうか?
えっ! 心臓のドキドキする音が、はっきり聞こえる。
akubi: 今日はちょっと無理かも・・・。明日の朝なら行けますが。
tel : それでもいいので、必ず来てください。
akubi: それって・・・検査の結果が悪かったということですか?
tel : そう言ったことは、先生とお話ししてください。
akubi: わかりました・・・
電話を切ったモノの、しばらく放心状態。
わざわざ連絡をしてくるって事は、この前の細胞診が良くないに決まっている。
私って、子宮ガンなんだろうか?
と思いつつも、食事をしなきゃ!と思って、インスタントラーメンを作るが、
一口も食べられない。
食い意地が張っている私にとって、信じられないことだ。
しかし、何をしていても落ち着かない。
やはり落ち着くには、今日受診をするしかない。
ダンナに「今日夕方から出かけたいので、早く帰ってこられないか?」と連絡を入れる。
と言うのも、わがやの家族構成は、ダンナ・私・小6の息子・7歳になるわんこ。
つまり、ダンナに帰ってきてもらわないと、夕方から出かけられないのである。
出かける理由をダンナに説明するが、なかなか伝わらない。
そもそもガン検診を受けたことすら、話していないんだもん。
それをいきなり「子宮ガン検診で引っかかったみたい」と言われたのだ。
藪から棒の話でとまどったに違いない。
が、とりあえず早めに帰ることを約束してくれた。
ぼぉ~としていても仕方がないので、ネットで「子宮体ガン」について検索する。
いくつか、HPやブログにヒットしたので、読みあさる。
ふ~ん。こうして治って元気に過ごしている人もいるんだ。
すこし気持ちに余裕が出てきた。
私としたら、1人で受診するつもりだったが、ダンナと息子が一緒に行くという。
なんで?
でも結果的には、ダンナはクリニックの中には、一歩も足を踏み入れなかったのであるが・・・
名前を呼ばれ、診察室へ・・・
なぜか息子も一緒に付いてくる。
大事なお話なんだから、静かにしていてね。
待ち受ける先生・・・今日は院長先生の診察日。
私は初対面なのだが、クリニックのHPに写真が掲載されているので、ふ~んこの人が・・・という妙な余裕があるのが不思議。
Dr : 電話があって、ビックリしたでしょう。
akubi: はい。
Dr : 薬を飲み終わっているはずなのに、全然受診されないんで・・・・。 連休があったからかなと思っていたんだけどね。
akubi: えっ! そうなんですか? 薬が飲み終わったら、生理が来るから、これが終わってからでいいと言われたので、次の金曜日に来ようと思っていたんですけど?
Dr : そう・・・ で、生理は終わった?
akubi: はい。 薬が飲み終わって、6日に始まって、1週間で終わりました。でも終わったと思ったら、日曜日すこしだけ出血しました。
そうなのだ。 薬を飲んでいる間は、特に吐き気はなかったのだが、飲み終わった翌日の5日、猛烈な吐き気と腹痛が襲ってきた。 ホルモンバランスが狂ったから? ひたすら我慢するしかなかった。
Dr : 実は、検診で良くない細胞が見つかったんですよ。 紹介状を書くから、設備の整った病院で診て貰ってください。
akubi: はぁ・・・
Dr : ここから一番近いのは、医大なんだけど、そこでいい?
akubi: 医大ですか・・・
実は、私にとって、医大病院って、あまり良い印象ではない。
今はどうか知らないが、昔は国家試験の合格率が低かったはずだ。
それにH医大病院は何でも受け入れるが、入ったら最後と、言われていたのだ。
だから、ためらったのだけど、こんな理由を先生に言えるはずがない。
akubi: 他にないですか?
Dr : あるけど・・・ がんセンターは、市にあるので、遠いよ。
確かに・・・ 市へは、電車を使っても結構かかる。
検査とかを受けるのに、朝一番に行くなんて不可能だ。
そうなると、やはり医大病院しかないのか・・・
akubi: 医大病院以外にも、行ってもいいんですね。
Dr : そりゃそうだけど・・・
そう言いながら、先生はパソコンへ向かい、紹介状を書き始める。
えっ! 紹介状って、患者の目に触れないように書くんじゃないの?
Dr : (打ち込んだのを、声に出して読み)こんな感じで良いかな?
akubi: (意外な展開に)はぁ・・・(としか言えないだろ)
その後、プリントアウトするのだが、インク切れらしい。
バタバタして交換して、打ち出し完了。
横にいた看護師さん? に手渡し、印鑑を押し、封筒に入れるように言う先生。
その看護師さんらしき人、「あて名はなんと書くんですか? 県立・・・・?」
はぁ? 何を言っているんだ? この人?
「医科大病院ですよ」と、口を挟む。
聞いたこと無いんだろうか?
Dr : まあ、今見た感じなら、十分治療可能だと思うから、心配しなくても良いよ。 検査結果とプレパラートも同封しておくね。
そう言って、私の目の前で、封をし、手渡してくれた。
あれ? こんなのアリ?
紹介状は封をして渡されるので、何が書いてあるのか気になって仕方がない・・・っていうイメージなんだけどねぇ。
しかし、ガンってことを患者本人と話のするの?って、不思議な気持ちでいっぱいだった。
私にとって、ガン告知とは、患者本人には、腫瘍とごまかし、家族にだけ本当のことを言う・・・という認識だった。
現に、十数年前、私の父が喉頭ガンになったとき、本人には、「このまま何もしないでいたらガン化する可能性があるので、治療します。」と告げられていたのだ。
でも・・・
診察室に入ってから、自分で言うのも変だが、平常心でいられた。
まあ、息子が一緒にいて、あれこれ話しかけるので、そっちに気が取られていたこともあるが、心の準備が出来ていたからだろうか?
ガンだと言われても、ショックは小さかった。
正直言うと、今から7年近く前に受けたショックの方が遙かに大きい。
私の息子には、障がいがある。
4歳の頃、言葉の発達が遅れていたので、ある訓練期間に相談に行ったとき、
なんの心の準備もしていない私に、「あなたのお子さんには、障がいがあります。この子の将来は楽観できません。」と告げてきたのだ。
一瞬何のことだか、わからなかった。
この子に障がい? 障がいって・・・一生治らないんだよねぇ。
立ち直るまで、かなりの時間を要した。
その時のショックに比べたら、今回は軽い軽い・・・
いや、自覚症状がないので、まったく事態の深刻さを理解できなかっただけかも知れない。
私にとって、忘れられない日となった。
外出の予定がなかったので、家でパソコンに向かっていた。
お昼を過ぎた頃、そろそろお昼ご飯にしようかなと思った瞬間、電話が鳴った。
お昼時分に電話してくるなんて・・・非常識な人だな。
一体誰なんだろう?
表示されている番号にも、心当たりがない。
でも電話に出ないと、自動的に私の携帯に転送されてしまうので、仕方なしに受話器を取った。
もしもし・・・と、不機嫌な声で言う。
「akubiさんのお宅でしょうか?」
ちょっと! 名を名乗れ!と瞬間的に思い、
akubi: そうですけど、どちら様ですか?
tel : akubiさん、ご本人ですか?
akubi: そうですよ。
tel : 失礼いたしました。 こちらは○○レディスクリニックですが、早急に受診していただきたいんですが、今日の夕方は無理でしょうか?
えっ! 心臓のドキドキする音が、はっきり聞こえる。
akubi: 今日はちょっと無理かも・・・。明日の朝なら行けますが。
tel : それでもいいので、必ず来てください。
akubi: それって・・・検査の結果が悪かったということですか?
tel : そう言ったことは、先生とお話ししてください。
akubi: わかりました・・・
電話を切ったモノの、しばらく放心状態。
わざわざ連絡をしてくるって事は、この前の細胞診が良くないに決まっている。
私って、子宮ガンなんだろうか?
と思いつつも、食事をしなきゃ!と思って、インスタントラーメンを作るが、
一口も食べられない。
食い意地が張っている私にとって、信じられないことだ。
しかし、何をしていても落ち着かない。
やはり落ち着くには、今日受診をするしかない。
ダンナに「今日夕方から出かけたいので、早く帰ってこられないか?」と連絡を入れる。
と言うのも、わがやの家族構成は、ダンナ・私・小6の息子・7歳になるわんこ。
つまり、ダンナに帰ってきてもらわないと、夕方から出かけられないのである。
出かける理由をダンナに説明するが、なかなか伝わらない。
そもそもガン検診を受けたことすら、話していないんだもん。
それをいきなり「子宮ガン検診で引っかかったみたい」と言われたのだ。
藪から棒の話でとまどったに違いない。
が、とりあえず早めに帰ることを約束してくれた。
ぼぉ~としていても仕方がないので、ネットで「子宮体ガン」について検索する。
いくつか、HPやブログにヒットしたので、読みあさる。
ふ~ん。こうして治って元気に過ごしている人もいるんだ。
すこし気持ちに余裕が出てきた。
私としたら、1人で受診するつもりだったが、ダンナと息子が一緒に行くという。
なんで?
でも結果的には、ダンナはクリニックの中には、一歩も足を踏み入れなかったのであるが・・・
名前を呼ばれ、診察室へ・・・
なぜか息子も一緒に付いてくる。
大事なお話なんだから、静かにしていてね。
待ち受ける先生・・・今日は院長先生の診察日。
私は初対面なのだが、クリニックのHPに写真が掲載されているので、ふ~んこの人が・・・という妙な余裕があるのが不思議。
Dr : 電話があって、ビックリしたでしょう。
akubi: はい。
Dr : 薬を飲み終わっているはずなのに、全然受診されないんで・・・・。 連休があったからかなと思っていたんだけどね。
akubi: えっ! そうなんですか? 薬が飲み終わったら、生理が来るから、これが終わってからでいいと言われたので、次の金曜日に来ようと思っていたんですけど?
Dr : そう・・・ で、生理は終わった?
akubi: はい。 薬が飲み終わって、6日に始まって、1週間で終わりました。でも終わったと思ったら、日曜日すこしだけ出血しました。
そうなのだ。 薬を飲んでいる間は、特に吐き気はなかったのだが、飲み終わった翌日の5日、猛烈な吐き気と腹痛が襲ってきた。 ホルモンバランスが狂ったから? ひたすら我慢するしかなかった。
Dr : 実は、検診で良くない細胞が見つかったんですよ。 紹介状を書くから、設備の整った病院で診て貰ってください。
akubi: はぁ・・・
Dr : ここから一番近いのは、医大なんだけど、そこでいい?
akubi: 医大ですか・・・
実は、私にとって、医大病院って、あまり良い印象ではない。
今はどうか知らないが、昔は国家試験の合格率が低かったはずだ。
それにH医大病院は何でも受け入れるが、入ったら最後と、言われていたのだ。
だから、ためらったのだけど、こんな理由を先生に言えるはずがない。
akubi: 他にないですか?
Dr : あるけど・・・ がんセンターは、市にあるので、遠いよ。
確かに・・・ 市へは、電車を使っても結構かかる。
検査とかを受けるのに、朝一番に行くなんて不可能だ。
そうなると、やはり医大病院しかないのか・・・
akubi: 医大病院以外にも、行ってもいいんですね。
Dr : そりゃそうだけど・・・
そう言いながら、先生はパソコンへ向かい、紹介状を書き始める。
えっ! 紹介状って、患者の目に触れないように書くんじゃないの?
Dr : (打ち込んだのを、声に出して読み)こんな感じで良いかな?
akubi: (意外な展開に)はぁ・・・(としか言えないだろ)
その後、プリントアウトするのだが、インク切れらしい。
バタバタして交換して、打ち出し完了。
横にいた看護師さん? に手渡し、印鑑を押し、封筒に入れるように言う先生。
その看護師さんらしき人、「あて名はなんと書くんですか? 県立・・・・?」
はぁ? 何を言っているんだ? この人?
「医科大病院ですよ」と、口を挟む。
聞いたこと無いんだろうか?
Dr : まあ、今見た感じなら、十分治療可能だと思うから、心配しなくても良いよ。 検査結果とプレパラートも同封しておくね。
そう言って、私の目の前で、封をし、手渡してくれた。
あれ? こんなのアリ?
紹介状は封をして渡されるので、何が書いてあるのか気になって仕方がない・・・っていうイメージなんだけどねぇ。
しかし、ガンってことを患者本人と話のするの?って、不思議な気持ちでいっぱいだった。
私にとって、ガン告知とは、患者本人には、腫瘍とごまかし、家族にだけ本当のことを言う・・・という認識だった。
現に、十数年前、私の父が喉頭ガンになったとき、本人には、「このまま何もしないでいたらガン化する可能性があるので、治療します。」と告げられていたのだ。
でも・・・
診察室に入ってから、自分で言うのも変だが、平常心でいられた。
まあ、息子が一緒にいて、あれこれ話しかけるので、そっちに気が取られていたこともあるが、心の準備が出来ていたからだろうか?
ガンだと言われても、ショックは小さかった。
正直言うと、今から7年近く前に受けたショックの方が遙かに大きい。
私の息子には、障がいがある。
4歳の頃、言葉の発達が遅れていたので、ある訓練期間に相談に行ったとき、
なんの心の準備もしていない私に、「あなたのお子さんには、障がいがあります。この子の将来は楽観できません。」と告げてきたのだ。
一瞬何のことだか、わからなかった。
この子に障がい? 障がいって・・・一生治らないんだよねぇ。
立ち直るまで、かなりの時間を要した。
その時のショックに比べたら、今回は軽い軽い・・・
いや、自覚症状がないので、まったく事態の深刻さを理解できなかっただけかも知れない。