5年立ってみないと何とも言えないんです・・・
これは、手術の説明を受けているとき、
私の母が、先生に、
「子宮、卵管、卵巣を取ったら、完全に治るんですか?」
と、質問したときの答えです。
その後、「根治治療をしますが、完全に治るとは言えないんです・・・」と、付け加えた。
手術は、根治治療だよねぇ?
根治と完治
どう違うんだろう?と思って、手持ちの国語辞典(新明解国語辞典第6版 三省堂)で、調べてみたら、
根治(こんじ・こんち)・・・根本から治すこと。また治ること。
完治(かんち)・・・・・・・・病気、怪我などが完全に治ること。
と、ありました。
同じようで、微妙に違う。
やっぱりイメージでとらえるしかないのかなぁ。
ちょっと前、貯血と献血って、血を採っている状況は同じだわ~と、思っておりましたが、献血も、この先私は、二度と出来ない事を知りました。
だって、献血の条件として、
「悪性腫瘍の診断を受けて治療中の方はもちろん、悪性腫瘍の手術を受けた後の方も、たとえその術後経過が良好でも、献血をご遠慮いただいています。」(日本赤十字社HPより)と、なっているから。
5年立ってみないとわからないと言われ、献血も出来ない・・・
自分が大変な病気にかかったんだ!と、一瞬だけ思いました。
6月27日
手術の説明だけで、いい加減飽きてしまった私。
自分のことなのに・・・と反省です。
でもまだ先生の説明は、続くんです~~
次は、輸血に関する説明
・輸血が必要になる原因
私の場合は、手術時の出血による貧血
・輸血を受けなかった場合の、合併症の危険性
私の場合は、出血による心不全・循環不全・ショック
・輸血の種類
私の場合は、まずは自己血輸血。仮に足りない場合は、
同種血輸血を行う。
・予定される輸血用血液製剤の種類と量:同種血輸血
人赤血球濃厚液
人血小板濃厚液
人全血液
新鮮凍結人血漿
・副作用
輸血による溶血
発熱、じんましん、ショック、循環障害など
肝炎
ヒト免疫不全ウィルス感染
その他感染症
等の説明を受け、やはり私とダンナが同意書にサイン。
輸血に関して、私自身思い出があります。
私の父が喉頭癌で入院していたとき、誤嚥性肺炎、糖尿病による意識低下などを起こしました。
入院しているのになぜ? と思いましたが・・・
耳鼻科は、耳・鼻・喉以外、見ないってことを、この時知りました。 でもその病院も総合病院。 耳鼻科の先生以外に、呼吸器内科の先生が主治医となって下さいました。
そのうち、血小板の数が低下したため、内科の先生の指示で輸血で補うことになりました。 その時、副反応がおこり、発熱しました。 看護師さんに止めてくれるようお願いしたところ、耳鼻科の先生の許可をもらい、一旦止めたんですが、内科の先生は、「副作用と輸血の重要性を秤にかけたら、輸血のメリットの方が大きい。 今輸血をしないと、内出血、とくに脳でおこったときのダメージが大きいから、やめるなんてとんでもない。」と説明。
冷静に考えると、もっともな意見です。 続けて、「血小板に放射線を照射して、リンパを殺してきたから・・・」と言って、輸血を継続しました。照射後は発熱は起こりませんでした。
それを思い出しながら、説明用紙を見ていたら、
「輸血した血液製剤の中のリンパ球が、患者様の体組織を攻撃
破壊する合併症を防止するため、放射線照射しているので、発生率は激減しております」と、書かれていました。
あの主治医の先生をちょっと思い出した瞬間でした。
説明に飽きてしまった息子と私・・・
あと1つあるんです・・・と、書類を差し出す先生。
・特定生物由来製品(血漿分画製剤など)使用に関する同意書
なんのこっちゃ?と思ったら、
アルブミン、免疫グロブリンなど聞いたことがある言葉が・・・
まあ他の薬剤で治療可能だと使わないとのこと。
未知の病原体による感染まで、心配していたらきりがない。
使わないことを願って、同意書にサイン。
ヤレヤレ やっと説明が終わった。
終わったのは、9時をとっくに回っていた。
やはりお医者さんって、夜遅くまで仕事をするのね。
家族にといって、エレベーターの前で別れた。
さあ、今晩は寝られるかしら・・・
どちらかというと夜行性なのに、と心配する必要はない。
実は、この病院。
一応消灯は10時なんだけど、寝られない場合、イヤホンでテレビを見るのもオッケー、枕元の電気で本を読むのもオッケー。
とっても自由なのです。 逆に気が楽になって、普段寝たことがないような時間に、寝ることになりました。
ヒマなのかヒマじゃないのかわからない、私の入院初日が終わりました。
6月27日
7時から手術の説明だと、聞いていた。
その時間の前は、産婦人科の先生方の会議。
それが終わってから・・・となっているのだが、
本当に、7時までに会議が終わるのか?と、
少々疑っておりました。
案の定、6時45分頃、看護師さんがやってきて
「今先生から連絡があって、『会議が長引いているので、7時半に変更してもらえないか?』と言うことなんですが・・・」
やっぱりね。
akubi: 時間が時間なので、もう家族は家を出ていると思いますので、来たら待っていますね。
nurse: すみません。
念のため、家に電話をしようと部屋を出ると、エレベーターから、ダンナ、息子、母が降りてくるところだった。
なんだ。もう来ちゃったの。
ディルームで時間をつぶすことにした。
しかし、7時半になってもいっこうに先生は来ない。
8時になったので、ナースステーションに、まだ会議が終わらないのか?と聞きに行こうとしたら、ちょうど歩いてくる先生。
いくら会議とはいえ、人を待たせているんだよ。
教授さん、 時間配分を考えてよ!と内心思う。
先生相手に文句を言うのも、かわいそうだから、だまっていたが・・・
教授室へ案内され、図を見ながら、手術内容の説明を受ける。
以前聞いていない、「大網切除」などすこし詳しい話だった。
(前回は、手書きの絵だったし~)
その後は、面談室で、先生から説明を聞くことになった。
面談室に向かうと、あいにく使用中。
こういうのって、前もって決めておかないの?
いつもの私なら、プッツンと切れてしまうのだが、
なぜか我慢。
しばらくディルームで待つことになる。
「空いている部屋がありましたので・・・」と、先生。
何処へ行くのか・・・と思っていたら、産科のナースステーションの中に、ソファーセットがあった。
えっ! ここ?
このドアの向こうは、新生児室じゃないの?
これから子宮をなくそうって言う話をするには、ふさわしくないような気がする・・・
ちょっと私が神経質になりすぎているんだろうか
でも、これ以上待つのもイヤだから、何も言わなかったけど・・・
先生から、
・手術方法について
今回行うのは、単純子宮全摘術、両側子宮付属器切除術(卵巣・卵管)
状況により、大網切除術を追加する場合がある。
またフィーディングチューブを留置する事もある。
リンパ節郭清(かくせい)の可能性はあります。
と、リンパ節郭清以外、先ほど教授から聞いた話を、もう一度丁寧に説明を受けた。
*大網とは、切除するのは?
胃から垂れ下がっていて、骨盤内、腹腔内臓器をおおっている大きな網のような脂肪細胞。
腹水などを吸収する役目を持っているが、切除しても特に害はない。
もし腹腔内に癌がばらまかれていたら、転移している可能性があるため、切除して、病理検査に出す
*フィーディングチューブ?
息子がチョロチョロしていたので、じっくり聞いていなかったので、何のためにこのチューブを使うのか?などの説明を聞き逃していました。
フィーディングチューブとは、鼻から胃へ通すチューブのことです。
*リンパ節郭清 リンパ節を切り取ること。
・手術担当医
教授・先生(腫瘍が専門)・先生・研修医君
貯血の時に、研修医君が研修仕上げに、私の手術に立ち会うかなと思っていたので、驚きはしなかった。
・手術時間
麻酔時間を含めて、4時間
・手術の合併症
①術中の合併症として、多量の出血、子宮周りの臓器の
損傷、血管損傷、薬剤のアレルギー
状況に応じて、臓器の専門医(外科、血管外科、泌尿
器科など)に応援を依頼し対応・・・総合病院のメリット。
輸血に関しては、後で説明を受ける。
②術後の合併症として、因頭痛、頭痛、嘔吐などの症状、
感染症(骨盤内、腹壁の手術創、尿路系、全身など)、
術後の腹腔内出血、膣よりの出血、腸閉塞
術中同様、専門医の診察を依頼する場合がある。
また、非常にまれだが、血栓症、肺梗塞症、脂肪梗塞
症などがおこる可能性がある。
・手術後
手術の状況を家族に説明。
感染予防のため、抗生物質の投与、水分補給のための
輸液点滴
血栓予防に対して、弾力ストッキングの着用(術前より)
下肢へマッサージ器の装着、血栓防止薬(ペパリン)の
点滴を行う。
手術時に膀胱内カテーテルと骨盤内にドレーンを入れて
いるので、しばらくの間そのままにしておき、状況を見て
抜いていく。
・手術後の治療
最終診断が付いた上で、追加治療を行うことがある。
等の説明を受け、
「手術・検査・処置等実施同意書」に、
説明の同席者として、ダンナと母がサイン、
そして同意書に、私とダンナがサインした。
6月27日
いよいよ?
やっと?
ついに?
どんな表現が一番ふさわしいんだろう?
ともかく、私が入院する日がやってきた。
朝は、特に変わった光景ではない。
いつものように、ダンナは本人曰く、しずか~に4時半頃出勤していった。
もっとゆっくり目に出て行くとか、全く思わないのかしら・・・
そもそも「入院するのに、ついていかなくていいのか?」の一言すらなかった。
優しい人なので、こっちから言えばやってくれたかも知れない。ま、いい大人が入院するのだ。
付き添いなんていらないだろ?って、私自身が思っていたので、口にしなかったのだが・・・
早く目が覚めてしまったので、することがない。
息子も早く起きたので、6時半頃からわんこの散歩に出る。
これで、当分散歩も出来ないのか~と、1人しんみり思う。
いつもと同じ時間に、登校していく息子。
帰ってきたときには、お母さんはいないんだよ。
ちゃんとわかっているのかなぁ?
朝早くに散歩に出たので、私がお出かけすると思ったわんこは、すっかりお留守番の体制に入っている。
いつもながら、賢い!と少々親ばか。
でも・・・待っていても、しばらく帰ってこないからね。
おとなしくしているだけに、1人メソメソモード。
10時までに入院手続をしないといけないので、9時過ぎに、後ろ髪を引かれながらも、家を出る。
単なる外出!と周りには思わせないといけないので、ヘラヘラモードを保つように心がけた。
深刻になるのもイヤなので、入院中も努めてヘラヘラしていた。もっとも、なんとかなるだろう!とのほほ~んとしているので、たいした努力はいらないのだが・・・
9時40分頃、病院に到着。
入院受付に行くが、手続までに数人待ち。
ま、10時までに来たんだから、とやかく言われないだろう。
順番が回ってきた。
用意してきた、
・健康保険証、健康保険限度額適用認定証
・入院誓約書、入院保障証、診療費支払い保証証、個人情報保護証確認書
・病衣借用書
・診察券
などを手渡す。
「健康保険証と、健康保険限度額適用認定証は、コピーを取ってもいいか?」と聞かれたので、「どうぞ。」と答える。
待っていると、ファイルと渡され、入院する病棟と行き方を教えてくれる。
「入院中、よろしくお願いします。」そう言った後、近くにあるエレベーターに乗り込む。
私が入院するのは、6階西病棟エレベーターを降りて、右側にナースステーションがあるらしい。
右と左・・・とっさにはわからないという妙な自信がある。
エレベーターに乗る前から、「右」を意識していたのだが、乗る前、体は北向き。 降りると南向き。
案の定、エレベーターを降りると、「右ってどっち?」の心境になる。
でも、目の前にナースステーションがで~ん。
迷うことは、なかった。
「今日からお世話になるakubiです。よろしくお願いします。!」と、近くにいた看護師さんに声をかける。
この看護師さん、パッと見た感じは、宝塚の男役。
また滑舌もよく、行動もてきぱきとしていた。
「akubiさんですか?」と、リストをチェック?
「615号室ですね。こちらです。ご案内します!」と言って、先導してくれる。
部屋へはいるときにも、「今日から入院されるakubiさんです。よろしくお願いします。」
これは、どの看護師さんも、かならず紹介していたが、人の名前と顔を覚えられない私。聞いただけでは、誰1人覚えられなかったが・・・
ともかく、入院中はこの部屋で過ごすのだ。
回復室は隣の613号室だった。
私のベッドは、窓ぎわ。
ラッキーと呼ぶべき何だろうか?
この時、部屋にいたのは、この日退院する人と、午後から手術を控えた人。
とても、話をするどころではないので、黙々と持ってきた荷物を整理する。
片付けていると、お一人、入り口に近いベッドに来られた。どうやら、前日手術を受けた方。
問題がないため、回復室から歩いて戻ってこられたようだ。
だが、この日一日、この中では私1人元気なので、場違いだな~と思っていた。
しばらくして、看護師さんが呼びに来た。
ディルームに行って、家族のこと、自分の性格、長所、短所、今服用している薬などを質問された。
自分の性格・・・長所、短所を含めて、マイペースなところとしか言いようがない。
その後、「入院生活のしおり」をもらい、詳しく説明してもらう。
この6階は、東病棟は産科、西病棟は、婦人科と消化器外科の女性・・・つまり女性患者オンリーなのだ。
よって、入浴日は毎日9時から20時まで、1人30分ずつ。
(8時にナースステーション前に、予約カードが置かれるので、希望する時間のカードを取る仕組み)
お風呂は予約制だが、シャワーは、予約不要で、13時~20時の間なら、いつでもオッケーだった。こ
の点は、すごくラッキーなのだが、産科と同じ階にあるのだ。
これから子宮・卵巣をなくす身に、妊婦さんがウロウロしている姿が目にはいるのは、どうなんだろうか?と疑問を持つ。
息子を産んだ県立病院は、産科と婦人科は別の階だったんだけどな。
その後、医事課の人から、病棟内を案内してもらう。
お風呂の場所、使い方、コインランドリー、トイレ・・・そんなに広くないので、あっという間に終わってしまった。
「なにかご質問は?」
別に・・・ 何がわかって、何がわからないのかすら、わからないんだもの。
1時から、循環器内科の外来を受ける予定になっていたが、入院患者には、来て欲しい時間になると、外来からナースステーションに連絡が入るらしい。
予定より早い時間に、「循環器内科から降りてきて下さい、と連絡がありました。」とお声がかかる。
そうそう・・・と言われ、診察券代わりに「患者識別バンド」を手首につけてもらう。
テーマパークでのフリーパスみたいな感じ。フリーパスと違うのは、氏名と生年月日、IDコード、およびバーコードが印字されていた。
手術後、点滴を受けるときですら、いちいちこのバンドと点滴パックに貼り付けられた名前とを照合していた。
医療ミスの防止なんだろうけど・・・
午後、主治医となる先生が、ベッドサイドになってきた。
昨日、電話をくれた先生ね!とおもったら、第1回目の貯血の時に立ち会った指導医の先生だった。
あら~と、驚く。
この先生、とても優しいしゃべり方で、いつもニコニコしている癒し系。 おまけにまだ若いので、後に同室の人たちの間では、「ぼくちゃん」とあだ名がついた。
最初に、昨日手術の説明時間の変更の電話を、急にしてきたことのお詫びを言ってきた。
そんな~~ 恐縮しますわよ。
こっちにしても、今日の時間の方が都合が良いんだから・・・
その後
「入院の診療計画について」と言う用紙をもらい、それに沿って説明してくれる。
病名について 子宮体癌 stage Ⅰa疑い
入院の目的 手術
病状について 不正出血
検査内容・日程 血液検査(6/29,6/30,7/2,7/5)
レントゲン検査(6/29手術直後、7/2)
手術内容 単純子宮全摘術 両側付属器官切除
看護計画について 術前はオリエンテーションを行い、不安の軽減に努めます。 術後は、痛みのコントロールを行い、異常の早期発見に努めます。
入院予定 約10日
akubi: ふ~ん、10日ですか~
Dr : そう、今日から10日です。
akubi: えっ! 今日から? 術後じゃなくって?
そんなに早く、退院できるんですか?
Dr : はい。 出来るように頑張りましょうね。
全部で10日間の入院と言うことに驚いてしまっている私を残し、先生は去っていった。