かONSTEP GPを3台作りました。
Vixen GP、DECのバックラッシュがなかなか大きいです。
調整も一筋縄ではいかない。
ある特定の箇所であればほぼ完璧にバックラッシュ調整できますが、赤緯軸全周で、となると難しい。
ある特定の角度でほぼ完璧であったとしても、そこから赤緯軸を90度回転させてみると、ウォームとウォームホイールの噛み合わせがゆるゆるでバックラッシュが大きすぎたり、逆にウォームとウォームホイールの噛み合わせがキツ過ぎて赤緯軸が回転しなかったり。
あまり製造精度がよくないということ?
それとも分解整備した後の組み立てが甘い?
ONSTEP GP 3号機のバックラッシュがとにかく大きくて正直、心が折れそう。
これでは実質的に一方向ガイドしかできません。
バックラッシュがないに越したことはないんですが、一方向ガイドだけで対応できないものだろうか?
赤経方向についてはバックラッシュは関係ないように思います。
赤経方向のギアの回転は一方向のみ。
赤道儀の赤経方向の回転が星の動きに遅れをとるなら、ギアの回転を早めて星の動きに追いつくように赤道儀の動作を修正すれば良い。
赤道儀の赤経方向の回転が星の動きよりも早すぎる場合は、ギアの回転を遅くしてガイド星が追いついてくるのを待てば良い。
この2種類の動作で、ギアの回転方向が変化しない。
逆回転がないということは、歯車同士は常に噛み合っているということ。
ウォームとウォームホイールは常に噛み合っていて、歯車同士の間に遊びが生じる余地がない。
赤緯軸の動作はこれとは異なる。
ガイド星が北側にズレれば、赤緯軸を北方向に回転させてガイド星を追わせる。
ガイド星が南側にズレれば、赤緯軸を南方向に回転させてガイド星を追わせる。
つまり、歯車の回転方向が逆転することがあるのだ。
逆回転するときに、歯車と歯車の間に遊びがあると、動作の空白が生まれる。
これがバックラッシュだ。
歯車の噛み合わせ(ウォームとウォームホイールの噛み合わせ)の遊びをゼロにすることはとても難しい。
遊びがあまりに大きいと、こういうことになる。(再掲)
望遠鏡の視野における星の南北方向の動きはどういうものになるだろうか。
まずは望遠鏡の極軸が地軸より高くなった場合を考える。
状況を単純化するために、望遠鏡の極軸の東西方向は地軸と一致しているものとする。
下の図で、望遠鏡は真南を向いているものとする。
望遠鏡を真南、かつ、望遠鏡の極軸に対して90度の方角に向けた時に視野の中心に見えた星aは6時間後、西の地平線に沈むとき、この図面上、どこにくるだろうか。
星aは地軸を中心に回転して見えるので、6時間後には西の地平線の少し下のBの位置に来るはずである。
望遠鏡の視野中心は望遠鏡の極軸を中心に回転するので、6時間後にAの位置に来る。
つまり、真南の空で星aを望遠鏡の視野中心に捉えてから観察し続ければ、星aは時間とともに望遠鏡の視野中心からゆっくりと南の方向(望遠鏡は倒立像なので視野の上方向)にズレていくように見えるはずだ。
今度は望遠鏡の極軸を地軸より低くしてみる。
望遠鏡を真南、かつ、望遠鏡の極軸に対して90度の方角に向けた時に視野中心に見えた星bは6時間後、西の地平線に沈むとき、この図面上、どこにくるだろうか。
星bは地軸を中心に回転して見えるので、6時間後には西の地平線の少し上のCの位置に来るはずである。
望遠鏡の視野中心は望遠鏡の極軸を中心に回転するので、6時間後にAの位置に来る。
つまり、真南の空で星bを望遠鏡の視野中心に据えて観察すると、時間とともに視野の中心からゆっくりと北の方向(望遠鏡は倒立像なので視野の下方向)にズレていくように見えるはずだ。
望遠鏡の視野の星が南北いずれの方向にズレていくにしても、ズレていく方向は一方向のみ。
南方向に動いていた星が、いきなり北方向に向かうことはない。
もちろん、北方向に動いて見えた星がいきなり南方向に動き出すこともない。
ただ、実際はこれに加えて、望遠鏡の極軸と地軸の東西方向のズレが加わってくるので、事態はもう少し複雑になる。
下の図は、望遠鏡の極軸の仰角は合っているが、極軸の向きが東側にズレている場合の模式図。
望遠鏡の視野中心は望遠鏡の極軸を中心に回転するので、赤い点線のように動く。
実際の星は地軸を中心に回転するので黒い実線の軌道上を動く。
よって、望遠鏡の視野中心に捉えた星を観察し続けると北方向(望遠鏡は倒立像なので視野の下方向)に星が動いていくはずである。
次は、望遠鏡の極軸の仰角は合っているが、極軸の向きが西側にズレている場合。
望遠鏡の視野中心は望遠鏡の極軸を中心に回転するので、赤い点線のように動く。
実際の星は地軸を中心に回転するので黒い実線の軌道上を動く。
よって、望遠鏡の視野中心に捉えた星を観察し続けると、南方向(望遠鏡は倒立像なので視野の上方向)に星が動いていくはずである。
極軸の東西方向のズレによる影響に関しても(極軸の仰角がズレていた場合と)同様で、望遠鏡の視野の星が南北いずれの方向にズレていく。
そして、ズレていく方向は一方向のみ。
南方向に動いていた星が、いきなり北方向に向かうことはない。
もちろん、北方向に動いて見えた星がいきなり南方向に動き出すこともない。
望遠鏡の視野の星の動きは、望遠鏡の極軸の東西方向のズレの影響と、仰角のズレによる影響が合わさったものになる。
それがどういうものであろうと、おそらく、ズレていく方向は一方向のみ。
南方向に動いていた星が、いきなり北方向に向かうことはない。
もちろん、北方向に動いて見えた星がいきなり南方向に動き出すこともない。
ということは、原理的にはDECのオートガイドは南北どちらかの一方向ガイドのみで対応できるはず。
オートガイドを開始した直後はDECが南北方向に暴れるかもしれない。
けど、しばらくそのまま放置すれば、いずれ南北どちらか一方向への修正動作に落ち着くはず。
というわけで、早速試してみました。
赤道儀は、バックラッシュが大きすぎるONSTEP GP 3号機
望遠鏡は、f=1,200mm, F20, アクロマート Scopetech Nagamitsu 60maxi
撮影カメラは、EOS 60Da
ガイド鏡は、SV BONY f=160mm, F4
ガイドカメラは、QHY5LⅡ
極軸をPole Masterで合わせたあと、PHD2のガイドアシスタントで動作解析を行った結果がこれ。
極軸のズレは3分角程度。
Pole Masterで極軸合わせをすると、いつも1分角程度で済むことが多いのですが、GPの三脚はEQ6proやAXDと比較してかなり頼りないものであることに加え、今回は自宅の屋根の上にセットアップしたので、僕が腰を上げただけで視野が揺れてたので、これくらいは仕方がないと思われます。
その後、オートガイドをしばらく行わせました。
とちって、DECの動作を示す赤い棒グラフのスケールが小さいままでした (>_<;)
見えづらいですが、グラフの中心の赤い横線の下側に、DECの動作を示す赤い棒グラフがあることを確認してください。
DECの動作を示す赤い棒グラフは全て赤い横線の下側に伸びているのがわかると思います。
グラフの下方向は南方向への修正動作になります。
(グラフの右端に、グラフの上方向はGuide North (北方向への修正動作)と書いてあります)
オートガイド開始直後は、おそらく、ウォームとウォームホイールの間に大きな遊びがあり、その遊びを解消するためにひたすら南方向への修正動作を行なっていたものと思われます。
グラフの真ん中あたりからは、ウォームとウォームホイールがやっと噛み合ったのでしょう。
それ以降も修正動作が全て南方向。
つまり、視野の星は北方向にしか動いていなかったということ。
(グラフの右端は、僕がオートガイドの結果を確認しに屋根の上に登ってきたことで望遠鏡が大きく揺れた影響です。)
このあと、今が旬のオリオン大星雲 M42を撮影しました。
光害地のど真ん中、埼玉県南部です。
北極星ですら、すぐには見つかりません。
写りは期待しないでください。
ISO 800
露出時間 240秒
青ハロが出ているのはNagamitsu 60maxiがアクロマートだからです。
F20といえども長時間露出するとこんなものなんですね。
それか、狭い家の中でたくさん壁にぶつけたために光軸が少しズレているか?
いずれにせよ、240秒露出で点像です。
僕的には十分合格レベル。
その時のオートガイドのグラフ。
今回は棒グラフのスケールを大きくしてみました。
グラフでは南北両方向の修正動作が認められます。
(バックラッシュが大きいので、南方向の修正動作しか実質的に機能してないと思われます。)
ターゲットグラフを見てください。
ガイド星の位置が横線よりも上側(北側)に集中しています。
つまり、過去100回の修正動作の大半は南方向への修正動作であったことが確認できます。
ONSTEP GP 3号機はしばらくバックラッシュが大きいまま使用しようと思います。
バックラッシュが大きい赤道儀での撮影がどんなものか、勉強をしたいと思います。
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