ようこそ里山へ 茨城笠間・青葉って永遠

茨城県笠間市。観光と陶芸の町の知られざる宝。穏やかな里山と田園は心の原風景。庭と山川草木、体感する旬の言の葉たち。

花あり山河あり、この命もあり

2011-07-27 05:22:59 | 里山に捧ぐ
 小さな流れにノカンゾウが咲いています。この沢の名は井戸沢。小さな山河の小さな歴史。それを覆う森からの水は絶え間なく。この水で我に帰った体験もあり。思いはあれこれとめぐりますが、今日もしっかり生きたいものです。

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 家の脇を流れる小さな沢に、ノカンゾウが咲いております。
小さな沢ですが、どんな旱ばつにも涸れることはなく、井戸沢とも呼ばれています。
もっとも、沢の名の由来である井戸とは、昔のお城の井戸のことらしいです。

鎌倉時代、あるいはそれ以前からかもしれませんが、この沢の上流右側には城館がありました。
笠間の歴史の本では、「飯田館跡」ですが、地元飯田の里では、御城(みじょう)と呼ばれています。
詳しい調査はされていませんが、広範囲に土塁や空堀があり、そのまま森に覆われ、今に至っています。
この小さな流れに、国破れて山河ありを思った先人がいたかもしれません。

 じつは私は、国破れるかというさなかに、この沢の水で我に帰りました。
震災後の原発爆発後のテレビの記者会見、政府高官のせんせいの表情は、のどがカラカラの様子でした。
いい仕事をするためには、のどカラカラ、ではなく、ゆっくり呼吸して無駄なく動くことが基本です。
天に向かいて誠の心、正直に心身を一致させてこそ、危機を乗り越える、思いがけない力は湧いてきます。

それは、わかっていたはずですが、何かつられて、自分までそわそわした感じになり、表に出ました。
これではいけないと、井戸沢のほとりに立ちました。
そして、どういうわけか、今、この沢の水を飲んでおこうと思いました。
が、上流にMさんちもあることですから、とりあえず飲まずに口をすすぐことにしました。
手水場、つくばいのように。
すると、とたんに、妙に落ち着いてきたから不思議です。
なぜ、落ち着いたのだろう・・・本当に落ち着いてしまいました。

 ここで、仏像ガールさんの話を引用させて頂きます。
昨日の新聞に、仏像ガールさんが出ていました。
仏像のやさしさというものは、人の優しさだというお話に、そうかもしれないと思いました。

仏像ガールさんは、少女時代はいじめられっ子で、お父さんとの悲しい死別もありました。
高校生の時、京都の三十三間堂で千体の千手観音さんにお会いしたときに、大粒の涙が流れたそうです。
このたくさんの素晴らしい観音様をつくり、伝えてきた人々。
その長年の誠実な働きに想いが至り、心からの敬意が湧いてきた。
自分をもう一度見つめ直したのだと感じます。

 確かに、優れた仏像さんは、優れているだけの深さがあると、私でも思います。
自分の心のありようで、いろいろなお顔に見えます。
観音様のように、お顔が十一もあるというのも、心理的には真実かもしれないと思ったりします。
要は、見つめている自分が問われているわけですが、自然の風物というものにも、それは言えると思います。
お前は何者だと問うたのは、井戸沢の水でしょうか。
それとも、この地の先人の心、あるいはまた、山河を生み育てる存在でしょうか。

三十三間堂には、鎌倉時代の笠間の領主・笠間時朝(かさまときとも)が二体寄進しているそうです。
時朝さんは、歌道に優れた文化人でもありました。
笠間市内には、時朝さん寄進による、国の重要文化財指定の貴重な仏像さんが遺されています。
この井戸沢の奥の尾根を越えた石寺地区の方々は、その一つ、弥勒菩薩さんを今に伝えています。

 小さな流れに咲くノカンゾウですが、輝きがあります。
この沢に秘められた歴史を知ってか知らずか、今日の命を健気に生きています。
有難く、そして、懸命に生きているかと、人々に問うかのように。


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