元・副会長のCinema Days

映画の感想文を中心に、好き勝手なことを語っていきます。

「ウィンターソング」

2006-12-01 06:48:21 | 映画の感想(あ行)

 (原題:如果愛 Perhaps Love)香港映画久々のミュージカル作品という触れ込みだが、肝心のミュージカル場面が低調なのでは話にならない。見た目は賑々しいものの、振り付けもセットもハリウッド作品をはじめとする他国映画のパクリ。音楽は凡庸で印象に残るメロディのひとつもありゃしない。さらに言えばミュージカルのシーンそのものも少なく、あとは香港映画得意の古色蒼然とした“歌謡映画”のルーティンを追うのみ。

 ストーリーはといえば、映画監督を目指す主人公と女優を夢見るヒロイン、それに彼女を狙っている映画監督の三角関係を、意味もなく時制をバラバラにした要領の得ない作劇で漫然と語ってるだけだ。狂言回しとしてチ・ジニ演じる“天使”まで登場するが、これがいてもいなくても良いような中途半端なキャラクター。しかも微妙にハズしたようなところにしか出てこない。

 全体的にメリハリのない展開がダラダラと続くだけで、いつからピーター・チャンはこんな下手な監督になったのだろうかと、落胆した。

 救いは主役3人の頑張りだろうか。金城武は基本的には“いつもの通り”なのだが(笑)、こういう内省的な役柄をナイーヴに演じるとやっぱりサマになる。監督役のジャッキー・チュンは見かけもワイルドなら歌声もワイルドだ(爆)。さすが“香港四天王”の肩書きはダテではない。

 そしてヒロイン役のジョウ・シュンはその存在感で観客の目を釘付けにする。いわゆる“中国四大女優”の中では一番個性が強い。私はスクリーン上で彼女を見るのは初めてながら、一度接したら忘れられない印象を残す。

 結論を言えば、本作は俳優を見る映画で、質的なものを期待してはいけない。その意味で古い香港映画の方法論を踏襲しているシャシンであり、割り切って観ることが肝要かと考える。
コメント
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