(原題:Courage under Fire)96年作品。湾岸戦争で同士討ち事件を起こした陸軍士官(デンゼル・ワシントン)が、戦死した女性将校(メグ・ライアン)が叙勲にふさわしいかどうか調査すると意外な事実にぶち当たるというこの映画。中東紛争を扱った映画としては力のこもった作品だと思う。
女性将校の部下たちの証言によって事の真相や彼女の性格までコロコロ変わるという「羅生門」みたいな展開を見せるが、違うのは真実が“薮の中”に入り込んでいくばかりの「羅生門」に対しこの映画ではたった一つの“真相”に向かって話が収斂されていく点だ。しかもその“真相”は戦意高揚の華々しいものとは似ても似つかぬ悲惨極まりないもの。“胡散臭い愛国心”どころか“戦争なんてクソくらえ!”と国家を告発したくなるような内容だ。しかもこの“真相”を隠蔽し“美談”に仕立て上げようとする軍の独善も糾弾される。
いちおう“勝ち戦”とされているあの戦争の後でこういう映画を作るとは、アメリカ映画の良識もわずかながら残っているのだなと思いホッとする。さらに単純なプロパガンダ作品にせず、家族愛をからめた一般人の視点で物語が進んでいくのにも感心した。
エドワード・ズウィックの演出は戦闘シーンと心理描写に非凡なものを見せ、彼の仕事ではベスト。キャストは皆好演で、いくつもの性格を巧みに演じ分けているM・ライアンはもとより事件のキーマンである軍曹ルー・ダイヤモンド・フィリップスの演技も見逃せない。ただ、D・ワシントンはいくら悩んで酒に溺れても少しも崩れた感じにならないのは持ち味なのだろうか(笑)。
女性将校の部下たちの証言によって事の真相や彼女の性格までコロコロ変わるという「羅生門」みたいな展開を見せるが、違うのは真実が“薮の中”に入り込んでいくばかりの「羅生門」に対しこの映画ではたった一つの“真相”に向かって話が収斂されていく点だ。しかもその“真相”は戦意高揚の華々しいものとは似ても似つかぬ悲惨極まりないもの。“胡散臭い愛国心”どころか“戦争なんてクソくらえ!”と国家を告発したくなるような内容だ。しかもこの“真相”を隠蔽し“美談”に仕立て上げようとする軍の独善も糾弾される。
いちおう“勝ち戦”とされているあの戦争の後でこういう映画を作るとは、アメリカ映画の良識もわずかながら残っているのだなと思いホッとする。さらに単純なプロパガンダ作品にせず、家族愛をからめた一般人の視点で物語が進んでいくのにも感心した。
エドワード・ズウィックの演出は戦闘シーンと心理描写に非凡なものを見せ、彼の仕事ではベスト。キャストは皆好演で、いくつもの性格を巧みに演じ分けているM・ライアンはもとより事件のキーマンである軍曹ルー・ダイヤモンド・フィリップスの演技も見逃せない。ただ、D・ワシントンはいくら悩んで酒に溺れても少しも崩れた感じにならないのは持ち味なのだろうか(笑)。


