元・副会長のCinema Days

映画の感想文を中心に、好き勝手なことを語っていきます。

「狼たちの街」

2006-12-09 07:59:35 | 映画の感想(あ行)
 (原題:Mulholland Falls)96年作品。50年代のロスアンジェルスを舞台に、法の網の目をかいくぐる悪党に正義の制裁を加えるロス市警の4人の刑事“ハット・スクワッド”(ニック・ノルティ、チャズ・パルミンテリ、マイケル・マドセン、クリストファー・ペン)を描く。監督は「ワンス・ウォリアーズ」「007/ダイ・アナザー・デイ」のニュージーランド出身のリー・タマホリ。

 典型的ハードボイルド・タッチの映画だが、同じくロスを舞台にした「ブラック・ダリア」なんかよりもずっと面白い。マフィアのボスを崖から突き落としたりするのは序の口、相手がFBIだろうとCIAだろうとペンタゴンだろうと、全然態度を変えずエゲツない捜査を続ける彼らスクワッドの確信犯的なふてぶてしさがいい。しかも警察上層部が彼らの行動を黙認しているというムチャクチャぶり。4人が並んで通りを歩いたりオープンカーに乗って「パルプ・フィクション」ばりのキレた会話を交わすシーンなんかは結構かっこいいし、時代考証も確かなダンディな衣装も泣かせる。

 でも一番興味深かったのは、舞台がLAの都心部ではなく郊外を中心としていることだ。当時はLAの街自体が外に向かって拡大を始め、宅地開発に伴う利権をめぐって各地からワルが集まってきた。それだけ警察の目が届かない犯罪が増えたということだが凶悪犯罪が都会の路地裏ではなく、何もさえぎるものがない沙漠や荒野の真ん中で横行していたという意外性。西部劇のバリエーションという言い方もできるが、今回の事件は空き地の真ん中に身体中の骨がバラバラになった女の死体が転がっていたことから始まり、郊外のマンションに屈折した覗き魔が登場したり、やがてロスより遠く離れた米軍の原爆実験場に事件の核心があったという設定は(つまり都心から離れるに従って事態は深刻度を増していく)、都市文化を醒めた目で捉える作者のユニークなスタンスがうかがえる。

 ノルティの妻を演じるメラニー・グリフィスや、不倫相手のジェニファー・コネリー(本作でのバストのデカさには感激したぜ ^^;)、上司のブルース・ダーンなど脇もいいけど、やはりノルティと相棒のパルミンテリが最高だ。エグイ捜査やってるわりには繊細で精神分析医に通っているパルミンテリが、ノルティに何かと口実を作って付きまとっていくあたりが愉快。

 アクションシーンはほとんどないが、数少ない暴力場面はかなりのインパクトを与える。画面の飾りに過ぎない“お約束”のバイオレンスシーンではなく、真に必然性のある暴力しか描いていないためだろう。このあたり、ほかのアメリカ映画は見習ってほしいものである。
コメント
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