前回(2月24日)からちょっとあいてしまいましたが…
時鳥さんの「ヒトデ五方十方説」をいただいて、
続けます。
ヒトデには前後左右の概念はないが、
方位感覚はあるかもしれない、と。
あるとすれば、それは「東西南北」ではない。
たとえば北(または南)をひとつの頂点として、
360度を5等分したもの、になるのではないか。
ヒトの文明に、これと同じものがあるかどうか、
昔の中国で「五方」といったのは、東西南北に
「真ん中」を足して五という数になるらしいから、
ヒトデ族の五方向とは根本的に違う。
ヒトデは、どれが自分の「お箸を持つ手」かは知らないが、
どっちが「北」かはわかるのだろうか。だとすれば、
少なくともその点においては、わたしより優れた生物だ。
頭で考えることはヒトよりはるかに少ないだろうが、
身体で感じることでその不足を補っている。
あれはつまり五角形の生体コンパスなのではないか。
そう考えたら、きゅうにイメージがはっきりしてきた。
ここは浅い海の底。
ヒトデは、砂の上でぼんやりしている。
ぼんやりしているが、おなかがすいた。
そろそろ移動する必要があるようだ。
1本の足の先に、ちりちりとかすかな刺激を感じる。
そっちが「北」なのだ。
あまり寒い方面は好きでないので、
残りの4本の足を慎重に動かしてみる。
とりあえず間近に迫った危険はないようだ。
無数の触手が、水温と潮流をはかり、水質を分析する。
北から2本目の足が、反応した。
ヒトの方位でいえばおよそ南南東。
しかしヒトデにとっては「2本目の足の方向」。
感じるのは漠然とした予感のようなものにすぎないが、
ヒトデの動機としてはじゅうぶんだ。
あっちへ行こう、と「2本目の足」がいう。
よし、あんたがリーダーだ、と他の4本の足がいう。
ヒトデはゆっくりと動き始める。
(…というのが生物学的に正しいかどうかはわかりません。
ちょっとSF的に想像してみただけ)