どうもグリムにはまると長くなる。
先日も、「ラプンツェル」の件であっちこっち調べまわり、
なんと日本でもこの植物の種を売っている!
というところまでたどりつき(音夢鈴さん、ご教示感謝です)、
それを買ってみようかどうしようかと目下思案中なのですが、
その前には、数日にわたり「マルモット」を調べまわっていたのでした。
いえ、グリム童話に「マルモット」という話はありません。
これは何かというと、以前調べた「あめふらし、またはてんじくねずみ」の
副産物のようなもので、えーと、そこまでの経緯はこちらを・・。
・・すみません、3年も前の記事ですね(笑)。
さて、日本では「てんじくねずみ」より「モルモット」のほうが
通りがいいのですが、この名前がそもそも謎。
英語圏では「モルモット」とはいわず「ギニーピッグ」というのです。
じゃあ、モルモットって何なのか、というと、
じつはマーモット(マルモット)という動物が別にいまして、
その名前が、日本に伝わったとき、どこかで間違って
「てんじくねずみ」と結びついてしまったらしい。
おかげで、本物のマーモットには、和名がないことになってしまった。
(うちにある国語辞典で「てんじくねずみ」をひくと「モルモット」と出る。
「モルモット」をひくと「てんじくねずみの俗称」と出る。
そして、仏和でmarmotteをひいても「モルモット」と出ますが、
「モルモット」=「てんじくねずみ」と思ってるのは日本だけなのね)
じつは、「あめふらし」の正体は「マーモット」ではないか?と、
最初、考えたのでした。
アルプスの山岳地帯に住むヨーロッパマーモットじゃないかと。
ところがこのマーモット、検索していただくとわかりますが、
ねずみの仲間とはいえ、大きさは「猫くらい」あるのです。
こんなのが頭にのっかってたら、肩こっちゃう、という以前に、
お姫さま、気づかないほうが絶対おかしいって・・。
ということで、グリムのほうは、これではない、と。
そうすると、ベートーヴェンの「モルモット」という歌曲は
いったい何を歌ったものなのか、という、あらたな疑問が生じました。
その答えを、書くつもりでいて、3年たってしまったのですが、
先日、在庫整理のおりに、押入れの奥から出てきた「玉手箱」の中で
昭和20年代の古い楽譜を見つけたわけ。
はい、これです。
タイトルは「旅芸人」(Marmotte)
作詞はゲーテ、訳詞は堀内敬三。
♪ 越え行く山川 果てし無き道を
けもの引き連れて さすらう此の身
身すぎ世すぎの 浮世の旅路
身すぎ世すぎの 浮世の旅路
(最近の訳詞では、ほとんどがこれを「旅の行商人」としており、
モルモットもマーモットも出てこないので、
よけい謎になってしまうのですが・・)
ポイントは上の歌詞の「けもの引き連れて」。
原詩はドイツ語、しかし、リフレインだけフランス語で、
♪ Avec que si, avec que la,
Avec que la marmotte.
18世紀、フランスのサヴォア地方の旅芸人は、
野生のマーモットを飼いならして芸を仕込み、
手回し琴を奏でながら町々をまわったという・・
つまり、日本でいえば「猿まわし」みたいなものではないか。
ということで、たどりついたのが、こちら。
宮廷御用画家フランソワ=ユベール・ドルーエの描いた
「マルモット使いの旅芸人(の扮装をした貴族の子どもたち)」。
左端で「立ってる」マルモットが可愛いですね。
(ただし、クライアントの坊ちゃん方より目立たぬよう
ひかえめに描いてある・・)
ゲーテが詩に書き、ベートーヴェンが曲をつけたのは、
まさにこの「旅芸人」だった、ということが、
これでやっと納得できたのでした。
「あめふらし」から「マルモット」に行き着いて、
それで何なんだ?・・というと・・べつに何でもありません。
こういう「はるばる・うろうろ・ひとり旅」が好きな閑猫です。
さあ、すっきりしたから、お仕事しよう。
(と言いつつ、こんどは「山姥」にはまっていたり・・笑)
<追記>
「旅芸人」の曲(動画)はこちら↓
タイトルのMarmottenbubenは、辞書にないけれど、
bubenはドイツ語で「少年(たち)」だそうだから、
「マルモット使いの少年の唄」で、いいような気がする。
最初からそういう邦題なら、悩まなくて済んだのに!
だけど、bubenで画像検索すると太鼓の写真ばかり出るのは
いったいどういうわけでしょう?(あらたな謎・・笑)
<また追記>
もうひとつ、曲の動画追加。
's Lumbegsindel - La Marmotte
なんだか六大さんの絵みたいですね。