チエちゃんの昭和めもりーず

 昭和40年代 少女だったあの頃の物語
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第46話 風 邪

2007年03月06日 | チエちゃん
 あれっ!何だか喉が痛い!

 寒い日が続いた後、寒気が緩んで急に暖かくなった朝、布団の中で目覚めたチエちゃんは「風邪を引いたかな」と思いました。
先週の土曜日、夜更かしをしたせいかもしれません。
チエちゃんは、喉からくるタイプです。

 それでも、滅多なことで学校を休まないチエちゃんは、仏壇の脇に重ねて積んである富山の薬箱の中から「ケロリン」を取り出して飲み、登校しました。
 
 だけど、学校でも喉の痛みはよくなりませんでした。
家に帰る頃にはすっかり鼻声になってしまいました。
体もだるくなってきました。

 チエちゃんは家に着くなり、

 風邪引いだがら、寝る!

そう言うと、ランドセルを放り出し、布団に入りました。
 布団の中で、うつらうつらしていると、おばあちゃんが心配そうに覗き込んでいます。夕飯が食べられるかと、訊いています。
自分では眠った気がしなかったのに、いつの間にか夕飯の時間になっていたのでした。こんな時チエちゃんは、いつもよりずっと甘えて、「ご飯は食べられない」と答えます。
そうすると、おばあちゃんが桃の缶詰を開けてくれるからです。

 チエちゃん家では、「桃の缶詰」は風邪を引いた時だけ食べられるものでした。
砂糖を混ぜた「すりおろしりんご」の時もありました。「みかんの缶詰」の時もありました。それから、おばあちゃんは葛湯もよく作ってくれました。
風邪はつらいのだけれど、「桃の缶詰」はうれしく、またいつもより大事に扱ってもらえることも心地よいチエちゃんなのでした。

 この後、お母さんが作ってくれた「おじや」を食べ、また「ケロリン」を飲んで休んだチエちゃんは、次の朝、まだ鼻声ではありますがのどの痛みは消え、元気に学校へ出かけるのでした。

 あの頃は、余程ひどくない限り、風邪ぐらいでお医者さんに行くということはありませんでした。だから、未だに風邪で病院に行くのは気が引ける昔人です。
具合が悪い時には、富山の置き薬を頼っていたものです。
お腹が痛くなれば「赤玉」か「正露丸」、切り傷には「赤チン」か「オロナイン軟膏」。「雪ノした?」という二枚貝に入った白い軟膏もありました。