チエちゃんの昭和めもりーず

 昭和40年代 少女だったあの頃の物語
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第50話 春祭り

2007年03月18日 | チエちゃん
 今日は熊ん様(くまんさま)のお祭りです。
チエちゃんの家では、朝からお赤飯と煮物が出ました。
には、鎮守の熊野神社があったのです。

 熊ん様は、の中心にある仕立て屋さんから、やや下[しも](村の中心街に向かう方向のこと ちなみに、にしゃばあちゃん家遠藤商店はチエちゃん家よりも上にあった)に位置しており、鳥居がある参道広場は村道に面していました。

 その広場に、露店が並ぶのです。春は、秋祭りと比べてお店が少ないけれど、綿あめ屋さんぐらいは出ているはずです。
お母さんからお小遣いを貰ったチエちゃんと弟たかひろ君は連れ立って、熊ん様にやって来ました。
大きなのぼりがお祭りであることの印です。それは、昨日氏子の人たちが立てたものです。出稼ぎから帰ってきたお父さんも手伝いました。

 まず、チエちゃんたちは一つだけ出ていた露店をのぞいてみました。
セルロイドのお面だの、おもちゃのピストル、刀、ガラス玉のネックレス、ビーズセット、いかにも当りそうなくじなどを売っています。

 いつもは、お店を巡っただけで、お参りもせずに帰ってくるチエちゃんでしたが、今年は何十年に一度の遷宮の年とかで、獅子舞が奉納されることが決まっていたので、笛や鐘の音が聞こえる境内へ行ってみることにしました。

 神殿と境内へは、数十段もの階段を登っていきます。息を切らして、登りつめると、そこには大勢の人が集まっていました。従姉妹の由美ちゃん・洋子ちゃん姉妹の姿もありました。もうすぐ獅子舞が始まるらしいのです。

 神楽殿の方には獅子舞をする人たちの姿が見えました。中学生のお兄さんたちです。顔を白粉で塗り、赤い口紅をつけ、羽根の付いた獅子頭を頭につけています。お腹のあたりに太鼓をくくりつけています。ひょっとこ面をつけている人もいます。

 いよいよ獅子舞が始まりました。笛や鐘の音に合わせて、三匹の獅子が頭を振りながら太鼓を打って踊るのです。

 チエちゃんが生まれる前までは、毎年奉納されてきたそうですが、勤めに出る若者が増えて、ここ数年は全く行われていませんでした。
初めて見る獅子舞は何だか不気味でもありました。たかひろ君もチエちゃんの手を強く握り締めています。

 あっ、お父さんだ!

獅子の向こうにお父さんが、槍のようなものを持って、ニコニコしながらこちらを見ていました。

 獅子舞を見終えたチエちゃんとたかひろ君は、広場に戻り、はずればかりのくじを引いた後、綿あめを買って家へと帰ったのでした。

注:リンクした彼岸獅子は喜多方市のものですが、熊野神社の獅子はこれと似ていますので参考まで(顔を布で覆っていません)