加藤紘一元自民党幹事長の実家・事務所が全焼した事故は、現代日本の民主主義が未成熟だということを証明したようで残念だし、恐怖でもある。右翼団体の男による放火の疑いが強いとのことだが、ただ単なる放火事件ではなく、その背景を含めて徹底した捜査を願っている。
今から20年前、会社の社員食堂から出る生ゴミ回収を巡って、エセ団体に追い回された経験がある。当時、自治体に回収を依頼していた仕事を団体が経営する会社に変更しろとの要請を断ったところ、「同和事業を理解していない」として、連日、会社に抗議に来たのだ。活動家を集める、糾問会を開く等々、まさに脅迫の手口で半年間、追い回された。
会社は言うに及ばず、自宅へも嫌がらせの電話がかかって来たし、家族までノイローゼ気味になり、自治体や警察に対応策を相談したが、無力だった。1年後、その男が別件で逮捕された新聞記事を目にした時、仕事を回さなくて良かったと心底安堵した。その後も、苦情相談を担当したりして電話恐怖症に陥ってしまった。そのせいか、現職時代はやむを得ず使った携帯電話を、いまは持たない”平成の変人”めいた生活を徹底しているが、全く不自由なく、自分の時間を拘束されずに楽しい。
政治家に限らず、その発言が社会的に大きな影響力を持つ立場の人と意見が異なる場合、時に暴力で封じ込めようとする輩を排除しないと、民主主義は成立し得ない概念だ。現代日本は、自分の意見を自由に口に出来るのは有難いことだが、一方においてそれを組織的に弾圧しようとする勢力があるのも現実だ。ともすると、権利だけを主張しそれが周囲に及ぼす影響度を無視する風潮は厳に慎むべきだ。そうでないと、バランスのとれた民主主義社会が成熟しない気がしてならない。