後期高齢者保険制度は、政局を揺るがしかねない大問題なので、政府与党も防戦に必死だが、問題の本質を見誤っている。年齢により線引きしたことで、高齢者に疎外感を与えたこともあるが、財源問題に端を発したことへの不満の方が大きい。
私も7月で65歳。高齢者と呼ばれることへの抵抗感が強く、町内の老人会への加入を辞退しただけに、数字で線引きする根拠を調べてみた。1956年、国連が統計をとるにあたり、「65歳以上の人口比率を高齢化率」と定義付けた際、日本もそれに合わせたというのが経緯のようだ。
当時の世界人口は30億人弱で現在は66億人強。日本の高齢化率は約10%だったが、今では20%近くになり、現在の75歳以上人口が10%に合致する。長寿社会が到来した今、年齢を10歳繰り上げることで、従来通りの10%を維持することができる。数字が奇妙に符合するのだが、この10%に対する政府の発想が逆だ。
半世紀前、高齢者に抱いていた尊崇の念を、現在の75歳以上の国民に注げば、もっともっと手厚い制度になって然るべきだ。政府から、明確な説明がない以上、本問題の考え方が数字合わせでしかないと勘繰ってしまう。世界一の長寿国日本が範を示すべきは、死ぬ時に「この国に生まれてきて本当に良かった」という制度作りではないのだろうか。