秀丸(笑福亭鶴瓶)は妻、妻の浮気相手、さらに病床の母親を殺害して死刑囚となった。死刑執行後に蘇生したため、行き場所のない秀丸は掃き溜めに捨てられるように精神科病院に入れられる。チュウさん(綾野剛)は普段は落ち着いているが、幻聴があるとひどく錯乱し、家族に厄介者扱いされている。秀丸やチュウさんが入院する長野県の精神科病院に、ある日、由紀(小松奈々)という少女が連れてこられる。由紀は義父から性的虐待を受けていて、診察で妊娠していることが発覚する。
秀丸、チュウさん、由紀を中心に物語は展開するのだが、出来栄えを論ずる前に、精神科病院としてのリアリティが欠如しているのが気になる。「閉鎖病棟」というタイトルにも関わらず、描かれているのは開放病棟に近い。患者がエレベーターを自分で操作し、院内や院外への外出もフリーで、患者達だけで街へ出かけていく。由紀が飛び降り自殺をする時に屋上の鍵が掛かっていないのも違和感を覚えるし、作業療法(陶芸)の時もスタッフが誰もついていない。病院内でレイプや殺人が起こるというのも、精神科病院の管理体制の厳しさを考えると、現実離れしていると言わざるを得ない。
映画の舞台をなぜ精神科病院にしたのだろうか。由紀が暴行された事実を知った秀丸が犯人を殺し逮捕される。由紀は裁判の席で自分が暴行を受けたことを証言し、秀丸の刑が少しでも軽くなるように嘆願する。この作品は秀丸と由紀の友情が中心的なテーマになっているが、別に精神科病院を舞台にしなくてもよかったのではないか。もし精神科病院を描くなら、精神科に普遍的な問題をもっと掘り下げてほしかったなと思う。
チュウさんは母親を施設に入れようとしている妹夫妻に反発し、退院して自分が母親の面倒をみると宣言する。チュウさんは退院後に母と同居して仕事にもつくのだが、その過程は描かれていない。幻聴のためにパニック状態に陥るチュウさんが、地域で暮らしていくのは容易ではなく、多くの支援が必要なはずだ。由紀は病院から飛び出した後に夜の街をさまようが、橋から見た朝焼けに心動かされる。次に登場した時に看護師の見習いになっていたが、あれだけ壮絶な体験をした由紀がどうやって立ち直ったのか。朝焼けに感動したからというのでは説得力が乏しい。病気を抱えつつ、地域で暮らし、職を得るというのは大変なことで、家族の無理解や周囲の偏見・差別と闘っていかなければならない。そうでなければ、また病院に戻って来ることになる。精神科病院が社会の掃き溜めにならないためにも、再生のプロセスは重要である。(KOICHI)
監督:平山秀幸
脚本:平山秀幸
撮影:柴崎幸三
出演:笑福亭鶴瓶 綾野剛 小松奈々
秀丸、チュウさん、由紀を中心に物語は展開するのだが、出来栄えを論ずる前に、精神科病院としてのリアリティが欠如しているのが気になる。「閉鎖病棟」というタイトルにも関わらず、描かれているのは開放病棟に近い。患者がエレベーターを自分で操作し、院内や院外への外出もフリーで、患者達だけで街へ出かけていく。由紀が飛び降り自殺をする時に屋上の鍵が掛かっていないのも違和感を覚えるし、作業療法(陶芸)の時もスタッフが誰もついていない。病院内でレイプや殺人が起こるというのも、精神科病院の管理体制の厳しさを考えると、現実離れしていると言わざるを得ない。
映画の舞台をなぜ精神科病院にしたのだろうか。由紀が暴行された事実を知った秀丸が犯人を殺し逮捕される。由紀は裁判の席で自分が暴行を受けたことを証言し、秀丸の刑が少しでも軽くなるように嘆願する。この作品は秀丸と由紀の友情が中心的なテーマになっているが、別に精神科病院を舞台にしなくてもよかったのではないか。もし精神科病院を描くなら、精神科に普遍的な問題をもっと掘り下げてほしかったなと思う。
チュウさんは母親を施設に入れようとしている妹夫妻に反発し、退院して自分が母親の面倒をみると宣言する。チュウさんは退院後に母と同居して仕事にもつくのだが、その過程は描かれていない。幻聴のためにパニック状態に陥るチュウさんが、地域で暮らしていくのは容易ではなく、多くの支援が必要なはずだ。由紀は病院から飛び出した後に夜の街をさまようが、橋から見た朝焼けに心動かされる。次に登場した時に看護師の見習いになっていたが、あれだけ壮絶な体験をした由紀がどうやって立ち直ったのか。朝焼けに感動したからというのでは説得力が乏しい。病気を抱えつつ、地域で暮らし、職を得るというのは大変なことで、家族の無理解や周囲の偏見・差別と闘っていかなければならない。そうでなければ、また病院に戻って来ることになる。精神科病院が社会の掃き溜めにならないためにも、再生のプロセスは重要である。(KOICHI)
監督:平山秀幸
脚本:平山秀幸
撮影:柴崎幸三
出演:笑福亭鶴瓶 綾野剛 小松奈々
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