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「グランメゾン・パリ」(2024年 日本映画)

2025年01月29日 | 映画の感想・批評


 2019年秋のTVドラマで好評だった「グランメゾン・東京」。木村拓哉演じるフランス料理シェフ・尾花夏樹と、鈴木京香演じる鋭い味覚を持つシェフ・早見倫子が中心となって三つ星レストランを目指す物語。その「グランメゾン」が映画になった。今度は本場フランス・パリでアジア人初となる三つ星☆☆☆獲得を目指すという。
 中国、トルコと共に世界三大料理の一つとされるフランス料理。その本場で三つ星を獲得するというのは並大抵のことではない。ましてや外国人のシェフにとっては、基本となるよい食材を手に入れるところから、大きな壁が立ち塞がる。いくら腕があっても、肝心の材料が揃わなければ、三つ星なんて無理だ。新店舗「グランメゾン・パリ」も苦戦が続いていた。そして大切なガラディナーで失敗をしてしまうと、その場所を提供していた、かつての尾花の師であり、三つ星を29年間守り抜いているレストラン「ブランカン」の主人から、テナントの撤退を要求される。何とか次のミシュラン決定まで待ってもらうよう約束を交わした尾花だったが、果たして三つ星獲得は成るか??
 監督は映画「ラストマイル」やTVドラマ「アンナチュラル」などの話題作を続々提供している塚原あゆ子が、公開直前のTVドラマと共に引き続き担当。脇を固める俳優陣も5年越しとはいえ再会を願っていた面々だけあって、チームワークの良さが画面からひしひしと伝わってくる。コロナの影響からか絶対の味覚の持ち主だった早見の舌が万全ではなくなり、尾花と衝突して店を出ていかれたり、新しく加わったパティシェの韓国系カナダ人リック・ユアンとの、お互い自尊心が強いゆえに引き起こされる事件等もあるのだが、みんな尾花の料理に惚れ込んで集まった面々、立ち直りも早い。それは演技を通じての関係も同じで、映画デビューから30年、バラエティ番組「SMAP×SMAP」の『ビストロ スマップ』のコーナーで確かな料理の腕前を披露していたとはいえ、本作のカリスマシェフになり切った木村拓哉の姿に、周りのみんなが「絶対に三つ星を取らせたい!!」という願いをぶつけて演じているようで、観ている方も思わず一緒に応援したくなってしまう。
 さらにパリでの大規模なロケが本物感を味わわせてくれる。食材を調達に行く広い市場や、エッフェル塔等の名所旧跡に古い街並み、そして飛び交うフランス語。その撮影にはフランス人スタッフの協力も大きかったようだ。
 そして何より感動的なのは出てくる料理の素晴らしさ。その美味しさが画面から溢れ出てくるようで、目が離せない。それもそのはず、今回の料理監修には、実際に2020年にアジア人初となるフランスの三つ星を獲得した「Restaurant KEI」の小林圭シェフが担当。ラストに出てくるフルコースのメニューは小林シェフがいたからこそ提供できた逸品で、それを冨永愛演じるフードインフルエンサー、リンダ・真知子・リシャールが奏でる解説を聞きながら味わえる。もうこれで満腹感120%!!料理を観ただけで涙が出てくるなんて初めてだ。小林シェフの店は東京にもあって、そこには木村を始め出演メンバーたちも出かけ、料理の作り方や出し方の作法などを、厨房の中まで見せてもらいながら学んだそうだ。そんなところにも本作の本物志向がうかがえる。
 ジャニーズ事務所の元メンバーや某テレビ局が引き起こした問題で揺れる昨今のエンタメ界であるが、キムタク一家は揺るがない。画家としても名が通る工藤静香をはじめ、フルート奏者、モデルとして活躍中の長女Cocomi、モデル、作曲家、そして女優としても注目されている次女Koki。どんな作品を撮っても圧倒的な存在感で他を圧倒するキムタクだが、全力で真剣に役に取り組む姿勢とその中で生まれた確かな力は、しっかり家族にも伝わっているようだ。
 (HIRO)

監督:塚原あゆ子
脚本:黒岩勉
料理監修:小林圭
出演:木村拓哉、鈴木京香、オク・テギョン、沢村一樹、及川光博、正門良規、冨永愛


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