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「日本で一番悪い奴ら(2016年 日本映画)

2016年07月01日 | 映画の感想・批評
 1975年、スポーツ推薦で北海道警察に入隊した一人の柔道青年が、暴力団対策担当になり、「道警(北海道警察)の為」という名目で、自ら裏家業に手を染めていき、2002年覚醒剤所持で逮捕されるまでを描いた映画である。綾野剛が、柔道しか知らないうぶな青年から、シャブ漬けの警察官までを演じている。
 映画全体はコミカルな演出で、「それはないだろう」という場面も多々あるが、根底には、①麻薬依存性の怖さ、②本音と建前の共存、③人間の欲の見苦しさ等を描いていると思う。①は、元スポーツ選手や芸能人の事件が後を絶たない。何故、これだけ事件になっているのに、これ程まで続くのだろう。それくらい「怖い」ものであるということであろう。一人の純朴な青年が堕落の一途を辿る。「覚醒剤止めますか?それとも、人間辞めますか?」。②人間が存在している限り、起こりうることであろうが、「公的機関」の仕事社会では中々口には出来ないストレスがあるということであろうか。「警察官=善人」という一般的な図式が更に興味深くする。先述した「道警の為」というセリフが組織の中で生きる人間の辛さも表している。③金持ちになりたい、女(主人公は男なので)にもてたい、出世したい等々、それらが、人間を暴走させ、他人を傷つけ、自分も不幸になっていく。①②③纏めると、人間は強くて弱いものであるということだろうか。メッセージ力のあるパンチの効いた映画である。凹むようなことがあった人には是非お勧めではなかろうか。
 それにしても、綾野剛は七変化。私が今年観ただけでも「64ロクヨン前編&後編」「リップヴァンリンクルの花嫁」と、どの役柄も全く違和感がない。昨年より前の作品は未見の為、出遅れているが、今後の作品にも注目していきたい。
(kenya)

原案:稲葉圭昭
監督:白石和彌
脚本:池上純哉
音楽:安川午朗
撮影:今井孝博
出演:綾野剛、YOUNG DAIS、植野行雄、 矢吹春奈、瀧内公美、田中隆三、みのすけ、中村倫也、勝矢、斎藤歩、白石糸、青木崇高、木下隆行、音尾琢真、ピエール瀧、中村獅童他


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