ある産婦人科医のひとりごと

産婦人科医療のあれこれ。日記など。

奈良県が判決不服で控訴 産科医の時間外手当訴訟

2009年05月02日 | 地域周産期医療

コメント(私見):

奈良県の産婦人科医療提供体制を立て直していくためには、まずは奈良県内の産婦人科医の頭数を地道に増やしていく必要があります。

時間外勤務手当を法で定められた通りに支払うくらいのことは、最低限の必須事項です。産婦人科医不足の今、現在の職場を辞めたとしても、働く場所など探せばどこにでもみつかります。県が正当な報酬の支払いをかたくなに拒否し、県側と医師側とが法廷で激しく争っているようでは、産婦人科医の頭数を現状のまま維持していくことすらだんだん難しくなっていくと思います。

日赤医療センター(常勤産婦人科医:24人)や愛育病院(常勤産婦人科医:15人)などのマンパワーの充実した病院でも、労働基準法違反を理由に軒並み立ち入り調査や是正勧告を受けている現状を、奈良県知事はよく理解する必要があると思います。

【以下コメントの追記、2009年5月3日】

法定労働時間とは、労働基準法において労働者を働かせることができる限度の時間です。法定労働時間は、1日8時間、1週間については40時間となります。それを超える労働は時間外労働となり、割増賃金を支払う必要があります。労働時間は業務に従事していた時間だけではなく、使用者の指揮監督下にあるかどうかでみます。 例えば、準備・整理の時間、仕事待機の時間、出席することが義務づけられた研修の時間なども労働時間に含めます。また、労働基準法では、当直などの時間外勤務は労使が協定を結んだ上で、原則月45時間以内と定めています。 労働基準監督署の基準では、医師の当直(宿直、日直の総称)は、病室の定時巡回など軽度で短時間の業務と定義されています。

従来は、医師の当直に対して、時間外、休日労働の割増賃金ではなく、割安な手当が支給されることが常態化していました。今回、奈良地方裁判所は、産科医の夜間や土曜休日の宿日直勤務について、労働基準法上の時間外労働に当たるとの判断を示し、奈良県に割増賃金の支払いを命じましたが、奈良県は、その奈良地裁の判決を不服として控訴する方針を発表しました。

奈良県は産婦人科医が不足し、産科救急事例の多くが県内で受け入れできない状況が恒常化していると聞いています。(2006年、奈良県の某病院で分娩中に急変した妊婦さんが、約20の病院から受け入れを断られ、約6時間後に大阪府内の病院に搬送され、その1週間後に死亡した事例は、当時大きく報道されました。)このような危機的状況を打開するためには、奈良県内の産婦人科医の頭数を大幅に増やす必要があり、今回は県の周産期医療提供体制を立て直す大きなチャンスであったと思われます。県の上層部の方々は、産科医療が一度完全に崩壊しないことには、事態の重大性が全く理解できないのかもしれません。

医師の当直勤務は「時間外労働」、割増賃金支払い命じる判決

産科業務と労働基準法

愛育病院、日赤医療センター: 労働基準法違反で是正勧告

**** NHKニュース、奈良、2009年5月3日

時間外手当の判決で県が控訴

 県立奈良病院の産婦人科医の時間外手当をめぐる裁判で、奈良県は、1500万円あまりを医師らに支払うよう県に命じた、奈良地方裁判所の判決を不服として、1日、大阪高等裁判所に控訴しました。

 この裁判は、県立奈良病院の産婦人科に勤務する医師2人が、夜間や休日の当直勤務で、出産や救急患者の対応に追われているのに、待ち時間の多い仕事という扱いで、割り増し分の時間外手当が支払われないのは違法だとして、奈良県に未払いの賃金を支払うよう求めているものです。

 この裁判で、奈良地方裁判所は、4月22日、「産婦人科医の夜間・休日の当直は、待ち時間の多い勤務とは言えない」として、労働時間にあたると認め、奈良県に対し、あわせて1500万円あまりを支払うよう命じる判決を言い渡しました。

 奈良県は、この判決を不服として、1日、大阪高等裁判所に控訴しました。

 控訴の理由について、奈良県の荒井知事は会見で、「診察などの業務が当直勤務時間中の4分の1しかなかったのに、勤務時間すべてを時間外手当の対象とした判断は適切でない」と述べました。

(NHKニュース、奈良、2009年5月3日)

****** 朝日新聞、2009年5月1日

奈良県が判決不服で控訴 産科医の時間外手当訴訟

 奈良県立奈良病院(奈良市)の産婦人科医2人が当直勤務中の時間外手当(割増賃金)の支払いを県に求めた訴訟で、県は1日、医師の訴えを認めて計約1540万円の支払いを命じた4月22日の奈良地裁判決を不服として、大阪高裁に控訴すると発表した。

 記者会見した荒井正吾知事は「当直勤務時間すべてを割増賃金の対象とする判決は適切ではない。診療をしていない待機時間は労働時間から外すべきだ」と話した。

(朝日新聞、2009年5月1日)

****** 読売新聞、2009年5月1日

産科医割増賃金訴訟 奈良県が控訴

 奈良県立奈良病院(奈良市)の産婦人科医2人が当直勤務などに時間外割増賃金の支払いを求めた訴訟で、県は1日、当直は時間外労働にあたり、計1540万円の支払いを命じた奈良地裁の判決を不服として、控訴すると発表した。

 県は「当直勤務すべてを時間外労働の対象にするべきではない」などとしている。荒井正吾知事は「勤務医の当直勤務が、労働基準法に抵触するかどうかという、全国の病院に共通の課題を突きつけられた判決。さらに上級審の判断を求めたい」と話した。

(読売新聞、2009年5月1日)

****** 産経新聞、2009年5月1日

産婦人科医訴訟で奈良県が控訴

 奈良県立奈良病院(奈良市)の産婦人科の医師2人が、夜間宿直や休日勤務などに対する割増賃金の支払いを県に求めた訴訟で、県は1日、医師らの訴えを認めて計約1540万円の支払いを命じた奈良地裁の判決を不服として控訴する方針を固めた。

 県は、判決が宿直や休日の勤務時間すべてを割増賃金の支払い対象としたことについて、「診療を行っていない待機時間は労働時間にあたらず、実態に即していない」などとしている。

(産経新聞、2009年5月1日)

****** 共同通信、2009年5月1日

産科医当直労働時間外で控訴へ 奈良県

 県立奈良病院(奈良市)の産科医2人が当直勤務の時間外割増賃金などの支払いを県に求めた訴訟で奈良県は1日、当直を時間外労働と認め、計約1500万円の支払いを県に命じた奈良地裁判決を不服として、大阪高裁に同日控訴すると発表した。

 控訴理由について県は「当直時間のすべてを割増賃金の対象にするとした判決は適切ではない。診療していない待機時間は労働時間から外すべきだ」などとしている。

割増賃金 労働基準法は、使用者に対し原則1日8時間、1週間に40時間を超えて働かせてはならないと残業を禁止している。事前に労使が協定を結んだ場合には残業をさせることができるが、使用者は25%以上の割増賃金を上乗せして支払うことが義務付けられている。

(共同通信、2009年5月1日)


産科業務と労働基準法

2009年04月25日 | 地域周産期医療

コメント(私見):

法定労働時間とは、労働基準法において労働者を働かせることができる限度の時間です。法定労働時間は、1日8時間、1週間については40時間となります。それを超える労働は時間外労働となり、割増賃金を支払う必要があります。労働時間は業務に従事していた時間だけではなく、使用者の指揮監督下にあるかどうかでみます。 例えば、準備・整理の時間、仕事待機の時間、出席することが義務づけられた研修の時間なども労働時間に含めます。また、労働基準法では、当直などの時間外勤務は労使が協定を結んだ上で、原則月45時間以内と定めています。

労働基準監督署の基準では、医師の当直(宿直、日直の総称)は、病室の定時巡回など軽度で短時間の業務と定義されています。従来は、医師の当直に対して、時間外、休日労働の割増賃金ではなく、割安な手当が支給されることが常態化していました。今回、奈良地方裁判所は、産科医の夜間や土曜休日の宿日直勤務について、労働基準法上の時間外労働に当たるとの判断を示し、奈良県に割増賃金の支払いを命じました。

周産期医療や救急医療などの医療現場では、通常の業務が24時間365日切れ目なく続いているので、少ないスタッフで業務を遂行していこうとすれば、どうしても長時間・過重労働となってしまいます。

現在稼働している産科施設のほとんどで、労働基準法違反が常態化しています。今後、すべての産科施設で労働基準法を厳格に遵守しなければならないということになれば、(産科施設をセンター化することによって施設あたりの産科医数を増やし、交代勤務制を導入して各勤務帯に複数の産科医を配置するなど)現行の医療システムの大転換が必要になると思われます。

医師の当直勤務は「時間外労働」、割増賃金支払い命じる判決

愛育病院、日赤医療センター: 労働基準法違反で是正勧告

****** 毎日新聞・社説、2009年4月25日

産科医訴訟判決 医療崩壊への警鐘だ

 医療が崩壊するか、医療従事者がつぶれるか。これが今、多くの医療現場で起きている厳しい現実だ。公立病院など多くの医療機関が赤字経営になっている一方、勤務医の過重労働と医師不足が深刻化している。

 そうした中、奈良地裁が産科医の夜間や土曜休日の宿日直勤務について労働基準法上の時間外労働に当たるとの判断を示し、奈良県に割増賃金の支払いを命じた。この判決は勤務医の処遇のあり方に警鐘を鳴らしただけにとどまらず、医療費削減の流れの中で起きている医療崩壊への対応について、国民に問題を提起したものと受け止めるべきだ。

 厚生労働省が07年に病院や診療所1852件の立ち入り調査を行ったところ、8割に労基法違反があり、改善指導した。違反事例では労働時間関係が5割弱、割増賃金が3割強だった。厚労省は割増賃金の支払いに加え、「宿直は週1回、日直は月1回が限度」と指導しているが、多くの医療機関では労務管理が不十分な所が多く、徹底がなされていない。判決は労基法違反の改善を医療機関に迫ったものだ。

 とはいえ、全体の4分の3の公立病院が赤字となっており、これを支える自治体の財政も逼迫(ひっぱく)している。医師に対して労基法に基づいた超過勤務手当を支払った途端に、経営が成りたたなくなって病院閉鎖という事態になることも避けなければならない。労基法違反がない病院運営を目指すべきだが、これは段階的に改善するのが現実的な道だろう。

 当面の改善策と中長期の課題に分けて考えてみたい。当面の課題は違法状態をどう解消するかだ。現在、当直中に医療行為を行った場合には、宿直手当に加え割増賃金を支払うことになっている。まずは、これを医師の宿日直勤務に確実に適用させる指導を徹底することだ。

 今年度予算で、救急勤務医支援事業として過酷な夜間、休日の救急を担う勤務医への手当に対して財政支援(20億円)を行う仕組みが新設された。こうした財政支援の枠をさらに広げることも重要だ。

 中長期の課題は、医療崩壊の背景にある医師不足の解消だ。医師を増やして夜間の交代勤務制を導入することで医師の負担軽減を図るべきだ。特に産科医の不足は社会問題となっている。結婚や育児などで仕事をしていない女性の産科医が働きやすい環境を整備し、短時間勤務などによって職場に復帰できる制度を急いで整備してもらいたい。

 診療報酬の見直しも大きな課題だ。病院勤務医の報酬を手厚くして過酷な勤務に見合う賃金にし、労働環境を改善することが医療崩壊を防ぐことにもつながる。

(毎日新聞・社説、2009年4月25日)

****** 毎日新聞、奈良、2009年4月24日

産科医割増賃金訴訟:判決「問題突き付けられた」 知事、司法判断に疑問も

 県立奈良病院(奈良市)の産婦人科医2人が宿日直勤務に割増賃金などを求めた民事訴訟で、原告の主張が一部認められたことについて、荒井正吾知事は23日の定例会見で「今まで時間外労働は慣行が先行して法的にはっきりしていなかった。労働基準法の通達と現実が合わず、どう合わせるのかという問題を突きつけられた」と評価した。

 ただ、時間外割増賃金の支払いを命じられたことには「条例で給与や地域手当と計算基礎が決められている。算定基礎は国も同じで、条例で決められたことをいかんと司法が判断できるのか」と疑問を呈した。控訴するかどうかは検討中としている。 【阿部亮介】

(毎日新聞、奈良、2009年4月24日)

****** 読売新聞、長野、2009年4月25日

「当直は時間外労働」判決 県立病院、分娩は「通常勤務」扱い

 産科医の夜間や休日の当直勤務は時間外労働にあたると認めた奈良地裁の判決は、産科医の労働実態の厳しさを改めて浮かび上がらせた。激務に少しでも報いるため、県内の県立病院では、当直勤務時に分娩(ぶんべん)などが入った場合は、通常勤務と見なして超過勤務手当を払うなどの対応をとっている。

 奈良県立奈良病院(奈良市)の産科医2人が当直勤務に割増賃金を支払わないのは労働基準法に違反するとして、県に未払い賃金の支払いを求めた訴訟で、22日の奈良地裁判決は「(当直勤務でも)分娩や新生児の治療など通常業務を行っている」と認定。県に割増賃金の支払いを命じた。

 総合周産期母子医療センターに指定され、県内の産科、小児科医療の拠点となっている県立こども病院(安曇野市)の場合、常勤産科医6人で年間約200件の分娩を扱っている。夜間や休日は、1人が当直勤務につき、もう1人が緊急時に駆けつけられるように自宅で待機する。当直明けも、そのまま通常勤務をこなすケースがほとんどという。

 年間150~160件の分娩を扱う県立木曽病院(木曽町)の常勤産科医は2人だけ。月1、2回の当直をこなすほか、当直時間帯の緊急事態に備えるため、交互に「拘束態勢」をとっている。拘束時は、病院に15分以内に駆けつけられる場所にいなければならず、飲酒もできないが、手当は特にない。小林和人事務部次長は「医師の負担は大きいがどうしようもない」と話す。

 県は、県立病院での夜間(午後5時15分~翌朝8時30分)と休日の当直勤務については、県立奈良病院と同様、労働基準法上の「断続的な労働」にあたるとして、割安な手当(1回2万円)を支給している。だが、当直時間帯に、分娩や帝王切開などの手術を行った場合は、その時点から時間外の通常勤務に入ったと認定。時間帯などによって、2割5分~6割増しの超過勤務手当を支給している。

 今年3月からは、産科医不足に対応するため、時間帯に関係なく出産に立ち会った主治医に2万5000円、補助をした医師にも6000円の分娩手当を支給している。県病院事業局の北原政彦次長は「赤ちゃんは時間を選んで生まれてこない。勤務の厳しさを考えれば待遇面で手当てすることは産科医確保にとっても重要なこと」と話している。

(読売新聞、長野、2009年4月25日)

****** 読売新聞、2009年4月23日

当直医に割増賃金命令、初の司法判断
…奈良地裁

通常業務と認定

 奈良県立奈良病院(奈良市)の産婦人科医2人が、夜間や休日の当直は時間外の過重労働に当たり、割増賃金を払わないのは労働基準法に違反するとして、県に2004、05年分の未払い賃金計約9200万円を請求した訴訟の判決が22日、奈良地裁であった。

 坂倉充信裁判長(一谷好文裁判長代読)は「当直で分娩など通常業務を行っている」と認定し、県に割増賃金計1540万円の支払いを命じた。医師の勤務実態について違法性を指摘した初の司法判断で、産科医らの勤務体系の見直しに影響を与えそうだ。

 同病院産婦人科には当時、医師5人が所属していた。平日の通常勤務以外に夜間(午後5時15分~翌朝8時30分)、休日(午前8時30分~午後5時15分)の当直があり、いずれも1人で担当。労基法上では、待ち時間などが中心の当直は、通常勤務と区別され、割増賃金の対象外とされる。そのため、県は1回2万円の手当だけ支給していた。

 判決で、坂倉裁判長は、勤務実態について「原告らの当直は、約4分の1の時間が、外来救急患者の処置や緊急手術などの通常業務」と認定。待ち時間が中心とは認められないとして、労基法の請求権の時効(2年)にかからない04年10月以降の計248回分を割増賃金の対象とした。

 原告らは、緊急時に備えて自宅待機する「宅直制度」も割増賃金の対象になると主張したが、坂倉裁判長は、宅直については、医師らの自主的な取り決めとして、割増賃金の対象と認めず、請求を退けた。

 奈良県の武末文男健康安全局長は「判決文を詳細に見たうえで、対応を検討したい。厳しい労働環境で頑張っているのは認識している。これまで医師の志に甘えていた」と話している。

医師の当直 夜間や休日の勤務のこと。宿直(夜勤)、日直(休日勤)の総称で、労働基準監督署の基準では、医師の場合、病室の定時巡回など軽度で短時間の業務と定義される。時間外、休日労働の割増賃金ではなく、割安な手当が支給されることが常態化している。

(読売新聞、2009年4月23日)

****** NHKニュース、2009年4月23日

産科医の時間外手当 認める

 奈良県立奈良病院の産婦人科の医師2人が、夜間や休日の当直勤務について、割り増し分の時間外手当が支払われないのは違法だと訴えていた裁判で、奈良地方裁判所は、医師の当直は労働時間に当たるとして、奈良県に対し1500万円余りを支払うよう命じました。医師の当直に時間外の手当を認める判決は初めてだということです。

 この裁判は、奈良県立奈良病院の産婦人科の医師2人が、夜間や休日の当直勤務で出産や緊急の患者の対応に追われているのに、待ち時間の多い仕事という扱いで割り増し分の時間外手当が支払われないのは違法だとして、奈良県に未払いの賃金を支払うよう求めていたものです。奈良地方裁判所の坂倉充信裁判長は、22日の判決で「産婦人科医の夜間・休日の当直では、通常の出産のほか、帝王切開手術など緊急に対応しなければならず、待ち時間の多い勤務とは言えない」として、医師の当直は労働時間に当たると認めました。そのうえで、奈良県に対し、あわせて1500万円余りを支払うよう命じました。判決後の会見で、原告側の藤本卓司弁護士は「産婦人科の過酷な労働が医師不足の背景にあるとされているなかで、深夜・休日の当直勤務を、昼間と同じ労働時間と認めた過去に例のない判決だ」と述べました。奈良県は、おととしの6月から、県立病院の医師が夜間・休日の当直勤務で手術などを行った場合、割り増し分の時間外手当を支給しています。

(NHKニュース、2009年4月23日)

****** 東京新聞、2009年4月24日

周産期指定継続へ 愛育病院 OB雇用 24時間態勢確保

 東京都の総合周産期母子医療センターに指定されている愛育病院(東京都港区)が先月、労働基準監督署から医師の勤務体制の是正勧告を受け、都に指定返上を打診していた問題は、センターを継続することで決着する見通しとなった。愛育病院では、非常勤のOB医師を増やすことにより、緊急治療が必要な妊産婦や新生児の二十四時間態勢での受け入れを可能にした。 

 愛育病院の夜間当直は常勤医と非常勤医が2人一組で担当。当直が可能な常勤医は6人しかおらず、当直は1人平均月6回、時間外勤務は月間約60時間に上っていた。

 労働基準法では、当直などの時間外勤務は労使が協定を結んだ上で、原則月45時間以内と定めているが、同病院は医師側と協定を結んでいなかったため、東京・三田労基署から先月中旬、是正勧告を受けた。

 常勤医の当直勤務を減らすと、2人とも非常勤医による当直が月10日以上になるため、病院は「当直は総合周産期センターの機能に慣れた常勤医が必要」として都にセンターの指定返上を相談。都は「当直は医師が複数いれば問題ない」として継続を要望していた。

 このため病院は、今月17日付で医師側と協定を締結。常勤医の当直は45時間以内になるように月3回程度にする一方、新たに4人のOB医師を非常勤で雇い入れ、常勤医が当直に入れない日にカバーしてもらう。都は近く、都周産期医療協議会に新しい取り組みを報告した上で、指定を継続する。

(東京新聞、2009年4月24日)

****** 東京新聞、2009年4月24日

『現場で経験積みたい』 医師の思い労基署とズレ

 東京都に総合周産期母子医療センターの指定返上を打診し、医療関係者の注目を集めた愛育病院が、都と協議の末、妊産婦と赤ちゃんの“最後の砦(とりで)”を継続する見通しとなった。きっかけは労働基準監督署から医師の“働き過ぎ”を指摘されたことだが、現場の医師からは「医療を実地に学ぶ機会が減り、収入も少なくなる」と不満の声が上がる事態も起きた。【神田要一】

 「産科医は現場で経験を積むことが大事で当直もその一つ。当直が減れば勉強の機会が少なくなる」

 中林正雄病院長は現場の医師の気持ちを代弁した。労基署の是正勧告を受け、今月から常勤医の当直を月三回程度に減らしたところ「大変不評だった」。病院は当直一回につき3万-6万円の手当を支払っており、収入減も不評の一因だった。

 当直明けは午後から休みにするなど、過重な負担にならないように配慮していたため、勤務体制にそれほど不満がなかったという。中林院長は「労基署の勧告通りにやろうとすると、当直は月3回程度しかできず、困るというのが本音」と言う。

 病院は今回、医師側と時間外勤務の協定を結んだ際、規定の月45時間を超えても勤務できるよう特別条項も設けた。ただ、緊急時などに限られ「特別条項があっても従来の体制に戻すわけにもいかない」(大西三善事務部長)と話している。

(東京新聞、2009年4月24日)


静岡県立こども病院の前科長が提訴へ

2009年04月24日 | 地域周産期医療

静岡県立こども病院NICU 新規患者は静岡市内のみ受け入れを継続

静岡県立こども病院NICU、新規患者の受け入れを休止

****** 毎日新聞、静岡、2009年4月24日

損賠訴訟:こども病院の前科長が提訴へ 院長らに慰謝料求め

 県立こども病院(静岡市葵区)の新生児未熟児科の前科長が、不当に退職を迫られたなどとして、院長と、同病院を運営する地方独立行政法人県立病院機構を相手取り、慰謝料などを求める損害賠償請求を静岡地裁に起こすことが23日わかった。県など関係者の説明では、こども病院では、前科長らと病院側が対立。担当医が相次いで辞め、新生児集中治療室(NICU)の新規受け入れを一時、中止する事態に発展した。 【山田毅】

(毎日新聞、静岡、2009年4月24日)

****** 静岡新聞、2009年4月22日

こども病院NICU新患制限 院長が経緯説明

 静岡市内の主要11病院の院長、事務長が集まる公的病院協議会が21日、同市葵区の県立総合病院で開かれた。県立こども病院(同区)の吉田隆実院長が、新生児集中治療室(NICU)が新規患者の制限に至った経緯を説明した。

 吉田院長は「心配、ご迷惑を掛け、おわび申し上げる」と述べ、NICUを担当する新生児未熟児科の常勤医が2人に減員する事態に陥ったことを報告した。院内から医師3人を新たにNICUに配置して5人体制としたものの、当面の受け入れは静岡市内の患者にとどめる方針を説明。「何とか1000グラム以上の子供は他の病院で診るようお願いしたい」などと他病院の理解と協力を求めた。

 今回の対応については「あくまで暫定的」とし、NICUの完全再開に向けて「2カ月の間に医師を確保したい」と述べた。

(静岡新聞、2009年4月22日)

****** 静岡新聞、2009年4月21日

こども病院NICUが5人体制に 院内で3医師確保

 県立こども病院が新生児集中治療室(NICU)の新規患者を制限している問題で、同病院がNICUを担当する新生児未熟児科の医師をこれまでの常勤医2人体制から5人体制に拡充したことが20日分かった。院内で3人の医師を確保して配置した。

 ただ、新患の受け入れ範囲は引き続き静岡市内の患者にとどめる。同病院は6月をめどとしたNICUの再構築に向け、医師確保の努力を継続する。

 新たに配置した3人はほかの診療科の男性医師と男性研修医2人。いずれもNICUの経験があるといい、研修医2人については正規採用した。常勤医2人の負担を軽減し、当直体制を充実できる。

 新生児未熟児科は3月末時点で常勤医4人、研修医3人だったが、人事異動をめぐる混乱で退職意向を示す医師が相次ぎ、現在は常勤医2人体制となっている。このため同病院は当面、院内で支援する方針を示していた。

(静岡新聞、2009年4月21日)


医師の当直勤務は「時間外労働」、割増賃金支払い命じる判決

2009年04月23日 | 地域周産期医療

コメント(私見):

産科当直に対して、時間外労働としての正当な報酬を支払えという判決がありました。

分娩は昼夜を問わないですし、母体や胎児の異常はいつ発症するのか予測困難です。産科病棟は、いつでも30分以内に緊急帝王切開を実施できるように十分な人員を配置しておく必要があります。いざ帝王切開を実施するということになれば、夜中であっても、産婦人科医、小児科医、麻酔科医、助産師、手術室看護師など大勢のスタッフが必要となります。

産科業務は、忙しい日と暇な日の業務量の差が激しく、業務量を一定にコントロールするのが難しいのが特徴です。暇な日は人員が少なくても済みますが、忙しい日は猫の手も借りたいような状況となり、小人数のスタッフではとても回せません。

病院の産科業務を継続してくためには、いくら暇な日が続いても、いざという時に備えて大勢のスタッフを常に確保しておく必要があり、その人達に正当な報酬を支払っていく必要があります。大勢の人を雇ったのはいいけれど、暇な日ばかりが続いたんでは、人件費ばかりがかさんで病院の経営が成り立ちません。莫大な人件費に見合うだけの適正な患者数が必要となります。労働基準法を遵守し、かつ、病院の経営も健全に維持していくためには、スタッフの数を増やし、それに見合うだけの十分な症例数を確保していく必要があります。

病院の数が多ければ、それだけ病院あたりのスタッフの数も患者数も少なくなってしまい、どの病院の経営も行き詰まり、地域全体の産科医療が崩壊してしまいます。地域の産科医療を守っていくためには、病院あたりの産婦人科医数を増やし、交代勤務制を導入して時間外の勤務をなるべく少なくし、労働環境を改善する必要があります。産婦人科医の総数は急には増えないので、当面は、病院の集約化、拠点化をさらに進める必要があると思います。

20年ほど前に私が現病院に着任した当時、産婦人科は一人医長態勢で、少ないスタッフで連日病院に泊まり込み、昼夜かまわず、がむしゃらに働き通しの毎日でした。労働基準法など全く無視もいいところで、かなり劣悪な労働環境でしたが、当時は、地方の病院はみんな似たりよったりの労働環境で、それほど疑問にも感じませんでした。昔の常識も、今、振り返ってみれば、全く通用しません。今、みんなが当たり前と思っている医療の在り方の常識でも、後から振り返ってみれば、とんでもなく常識はずれの部分がいっぱいあると思います。おかしいところはおかしいと早くみんなで気が付いて、軌道修正していく必要があると思います。

****** 読売新聞、2009年4月23日

割増賃金支払い命令判決「当直は時間外労働」…産科医激務に一石 調査の病院8割、法違反

 「当直は時間外労働にあたる」--。22日、奈良地裁が言い渡した判決は、待機や軽微な勤務を前提に認められている医師の当直について、一部の時間帯は通常業務と変わりない実態があるとして、割増賃金の支払いを命じた。

 医師不足が深刻化する中での初の司法判断は、医療の現場に勤務体系の見直しを迫るものになりそうだ。

 奈良県立奈良病院の産婦人科医の待遇は決して特殊なケースではない。全国周産期医療連絡協議会が2008年、重症の妊婦を24時間態勢で受け入れる全国75か所の「総合周産期母子医療センター」に実施した調査では、97%にあたる73施設が夜間勤務を正規の労働時間にあたらない「宿直」と見なしていた。

1回の手当の平均は約2万3000円。8000円しか支払われない施設もあった。また77%の施設では、当直医が翌日も夕方まで勤務していた。

 労働基準監督署の基準では、そもそも当直は「ほとんど労働する必要がなく、病室の巡回など、軽度で短時間の勤務」とされている。これを前提に、労基署は宿直は週1回、日直は月1回を限度に病院などに許可を出すが、実態は軽度で済まない。医師が当直日に忙しく働いたかどうか、勤務実態を調べて割増賃金を支払うことは多くの病院がしていない。

 緊急手術や急患に対応するために、宿直の医師は仮眠すら取れないケースが多い。前日朝から宿直を経て、翌日の夕方まで連続30時間以上という激務もある。

 日本産科婦人科学会のまとめでは、大学病院に勤務する産婦人科医が病院に滞在する時間は月平均341時間、最長は505時間。過酷な労働環境を反映し、産婦人科医はここ10年で約1割も減少している。

 厚生労働省では、労基署への申告が相次いだことを受け、2002年に当直勤務の適正化を図るため、全国の医療機関に対し、当直勤務の実態を自主点検するよう、各労働局に通達を出した。07年には、立ち入り調査した病院や診療所など1852施設のうち、約8割にあたる1468施設で法違反が見つかった。

 今年3月には東京・三田労基署が、都から総合周産期母子医療センターに指定されている愛育病院に対し、「当直の実態は時間外労働だ」として、残業代を支払うよう是正勧告。同病院は「勧告に従うと、センターが求める産婦人科医の勤務態勢を維持できない」として、同センターの指定返上を打診する事態になった。

改善策「すぐは厳しい」奈良県

 「あまりに過酷な環境をどうにかしてほしいということ。金が目当てではない」。原告代理人の藤本卓司弁護士は判決後の記者会見で、訴えた理由を強調した。

 藤本弁護士は、原告2人が提訴に関して「批判や中傷を浴びた」と、医師が労働条件に声を上げることの難しさを示した。そのうえで、宅直が認められなかったことに「やむを得ずやっていることなのに」と不満を漏らし、「労務管理体制を根本から変えないといけない。その対策が国や自治体に求められる」と話した。

 奈良県では2006、07年、妊婦の救急搬送の受け入れが拒否される問題が起きている。医師不足など、医師を取り巻く劣悪な環境が理由に挙げられる。

 奈良県健康安全局の武末文男局長は判決後、「根底に医師が足りないという問題がある」と述べた。交代勤務制の導入や他病院からの応援医師の配置などの対策を列挙したが、「今すぐにというのは厳しい」と、問題の根深さをのぞかせた。

(読売新聞、2009年4月23日)

****** 毎日新聞、奈良、2009年4月23日

産科医割増賃金訴訟:県、不備認め待遇改善へ

 ◇原告側「労働時間明示、画期的」

 県立奈良病院(奈良市平松)の産婦人科医2人が、夜間や土曜休日の宿日直勤務に対し、割増賃金などの支払いを求めた民事訴訟。奈良地裁の判決は、原告の主張を一部認め、県に厳しい内容となった。判決を受けて、記者会見した武末文男・健康安全局長は「日本の医療のあり方に一石を投じた。判決を重く受け止めます」と述べ、今後、待遇改善に取り組む意向を示した。

 武末局長は「控訴については今後検討したい」と述べたが、「労務管理や勤務状況を把握しなければなかったという点では問題があった」と、不備があったことを認めた。

 一方、これまでの県の取り組みに触れ、宿直勤務や分べん、時間外呼び出しなどへの特殊勤務手当の支給▽同病院産科の産科医や後期臨床研修医3人の増員▽医師の業務負担を軽減する事務員「メディカルクラーク」の導入--などを進めてきたことを強調した。

 原告側は、異常分べんなどに備えて自宅で待機する「宅直」も労働時間に含めるよう主張したが、判決は「病院の指揮命令下にあったとは認められない」として請求を退けた。

 宅直について、武末局長は「根本的には2人当直にできない医師不足がある。また、自分が主治医をしている患者の具合が悪くなったら、どんな場所に居ても呼び出される慣習があった」と指摘。「今後は当直勤務の翌日は休みが取れるような勤務態勢の導入を検討したい」と述べた。

 原告側の藤本卓司弁護士は「宿日直勤務の始めから終わりまでが労働時間だと明示した画期的な判決だ。全国の多くの病院も同じような実態で、国や行政が産科医不足の対策を取ることが求められる」と述べた。【阿部亮介、高瀬浩平】

(毎日新聞、奈良、2009年4月23日)

****** 読売新聞、2009年4月23日

背景に医師不足 産科の悲鳴届いた…奈良地裁判決 2人で2年間に当直313回 50時間勤務も

 産科医の悲鳴が司法に届いた――。奈良地裁が22日、奈良県立奈良病院の当直勤務を時間外労働と認めた判決で、産科勤務医の労働実態の過酷さが改めて浮き彫りになった。こうした問題の背景には、医師を計画的に配置せず、医師の偏在を放置してきた日本の医療体制がある。勝訴した産科医の1人は「産婦人科の医療現場では緊急事態に対応するためスタッフが必要」と訴え、医師不足の抜本的な解決策を求めている。

 今回の訴訟では、産科医が休憩もままならず、ぎりぎりの状況で母と子の命に向き合わなければならない実態が陳述などで明らかになった。原告の1人が2005年12月に経験した土、日、月曜の3日間の連続勤務を振り返ると――。

 土曜夜、1人の妊婦が出血し、その約1時間後に別の妊婦が陣痛を訴えた。日曜の午前4時半頃には、さらに別の妊婦の異常分娩に立ち会った。医師は原告だけ。1人の処置をしている間に、別の妊婦が分娩室にやってくる。

 日曜日は午前9時半前、午後4時前、同7時半前、同10時前にそれぞれ赤ちゃんが生まれ、月曜未明にも赤ちゃんが誕生した。ほかにも原告は、切迫早産や出血などの手当てに追われ、連続する宿直勤務の間に診た妊婦は計13人。立ち会った出産は6件にのぼった。この後、月曜日は夕方まで通常の勤務に就いたという。

 法廷で、原告は宿直明けの体調について「朝のうちは興奮状態で元気かなと思うが、昼ぐらいから、ガクッと疲れる感じ」と陳述。宿直明けの手術の際、エックス線撮影の指示を誤ったこともあったと述べた。

 原告2人が2年間で務めた夜間・休日の当直は計313回、担当したお産は計300件。妊婦からの呼び出しコールが頻繁にあるため、仮眠を取るのも難しく、50時間以上の連続勤務もあった。

 原告の上司も「外科の当直なら、整形外科などを含めた複数の診療科から1人出せばいいが、産婦人科は、産婦人科だけで回さなければならない」と厳しい実態を証言した。

過酷勤務、訴訟リスク・・・「なり手なくなる」

 「お産は24時間ある。産科は診療科の中で最も当直が多く、負担が特に大きい。なり手がなくなるのではないかと危惧している」。岡井崇・昭和大教授(周産期医療)はこう指摘する。

 産科医の減少は、分娩施設の数にも表れている。日本産科婦人科学会の調査(2006年)では、全国の分娩施設は1993年に約4200施設あったが、調査のたびに減少、05年は約3000施設となった。

 約2700病院が加盟する日本病院会は「勤務医、中でも産科、小児科は『訴訟リスク』が大きく、研修医らから敬遠されやすい。結果的に医師が不足し、労働条件も悪化する悪循環が起きている」とする。

 労働基準監督署から、指導を受ける病院も後を絶たない。原告の産科医が勤める県立奈良病院でも、04年に労働時間の是正を求められたが、改善されず、今回の訴訟に発展した。

 現場の産婦人科勤務医の評価はさまざまだ。

 京都市内の病院に勤務する50歳代の男性医師は「現場は医師のボランティア精神と犠牲の上に成り立っている。待遇が改善されれば、医師も増え、医療の充実につながるだろう」と話す。

 一方、石川県内の大学病院の男性医師は「抜本的な解決には、看護師のように3交代制を敷くしかない。それには、お産の拠点施設を配置するなど、医療システムを根本的に変える必要がある」と指摘する。

 厚生労働省監督課は「長時間労働は抑制し、労働基準法を順守するよう監督したい」としている。

(読売新聞、2009年4月23日)

****** 朝日新聞、2009年4月23日

当直医へ時間外手当、1500万円支払い命令 

奈良地裁

 当直勤務時の賃金が一律支給で済まされ、過酷な労働に見合う時間外手当(割増賃金)が支給されていないとして、奈良県立奈良病院(奈良市)の産婦人科医2人が、04、05年の未払い分として計約9200万円の支払いを県に求めた訴訟の判決が22日、奈良地裁であった。坂倉充信裁判長(一谷好文裁判長代読)は「分娩(ぶんべん)や救急外来など、通常と変わらない業務をしていた」として、産科医としての2人の当直は時間外の支給対象となると認定。県に計約1540万円の支払いを命じた。

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 県は当時、当直1回につき2万円を支給するだけだった。原告の代理人弁護士によると、医師の当直に時間外の支給を命じた判決は全国初。当直勤務に一律支給を導入する例は全国的にあり、各地の病院に影響を与えそうだ。

 訴えていたのは、産婦人科の40代の男性医師2人。夜間や休日の当直業務が、割増賃金として労働基準法で規定された時間外手当の支給対象になるかが争点となった。

 県側は時間外の適用が除外される労基法上の「断続的労働」にあたると主張していたが、判決は断続的労働について「常態としてほとんど労働する必要がない勤務」と指摘。原告の勤務は「1人で異常分娩に立ち会うなど、睡眠時間を十分に取ることは難しい」などとし、医師の当直を断続的労働とした県人事委員会の規則は適用除外の範囲を超えていると判断した。

 そのうえで、賃金など労働債権の時効(2年)となる期間を除いた当直計約250回を対象とし、給与をもとに算出した時給約4200~4400円に割り増し分を加えた手当の支払いを命じた。

 交代で自宅で待機する「宅直」については、「医師間の自主的な取り決め」として時間外と認めなかった。

 県は提訴を受けた後の07年6月から、一律支給を維持しつつも、県立病院の医師が当直中に救急患者の診察や手術をした場合、その実働時間に限り時間外の対象とするように変更している。

 奈良県が今月、医師の当直勤務の手当について全都道府県の状況を調べたところ、37団体から回答があった。定額の当直手当のみは6団体、07年に奈良県が改めたような定額手当と時間外手当のセットが29団体、今回の判決の考え方と同様に当直中の全労働時間を時間外手当としているのは2団体だった。

(朝日新聞、2009年4月23日)

****** 読売聞、2009年4月22日

医師の当直勤務は「時間外労働」、割増賃金支払い命じる判決

 奈良県立奈良病院(奈良市)の産婦人科医2人が、夜間や休日の当直は時間外の過重労働に当たり、割増賃金を払わないのは労働基準法に違反するとして、県に2004、05年分の未払い賃金計約9200万円を請求した訴訟の判決が22日、奈良地裁であった。

 坂倉充信裁判長(一谷好文裁判長代読)は「当直で分娩など通常業務を行っている」と認定し、県に割増賃金計1540万円の支払いを命じた。医師の勤務実態について違法性を指摘した初の司法判断で、産科医らの勤務体系の見直しに影響を与えそうだ。

 同病院産婦人科には当時、医師5人が所属していた。平日の通常勤務以外に夜間(午後5時15分~翌朝8時30分)、休日(午前8時30分~午後5時15分)の当直があり、いずれも1人で担当。労基法上では、待ち時間などが中心の当直は、通常勤務と区別され、割増賃金の対象外とされる。そのため、県は1回2万円の手当だけ支給していた。

 判決で、坂倉裁判長は、勤務実態について「原告らの当直は、約4分の1の時間が、外来救急患者の処置や緊急手術などの通常業務」と認定。待ち時間が中心とは認められないとして、労基法の請求権の時効(2年)にかからない04年10月以降の計248回分を割増賃金の対象とした。

 原告らは、緊急時に備えて自宅待機する「宅直制度」も割増賃金の対象になると主張したが、坂倉裁判長は、宅直については、医師らの自主的な取り決めとして、割増賃金の対象と認めず、請求を退けた。

 奈良県の武末文男健康安全局長は「判決文を詳細に見たうえで、対応を検討したい。厳しい労働環境で頑張っているのは認識している。これまで医師の志に甘えていた」と話している。

(読売新聞、2009年4月22日

****** 産経新聞、2009年4月22日

当直医に残業代支払え 「断続的勤務」に該当せず 奈良地裁

 奈良県立奈良病院(奈良市)の男性産婦人科医2人が、夜間宿直や休日などの勤務に対し、正当な労働対価が支払われていないとして、県に平成16~17年の割増賃金未払い分計約9230万円の支払いを求めた訴訟の判決が22日、奈良地裁であり、坂倉充信裁判長は県に計約1500万円の支払いを命じた。

 原告側弁護士や県によると、公立病院では、医師の宿直や休日勤務に一定額の手当の支払いで済ませているケースが大半。こうした勤務にも割増賃金を支払うべきと認定した判決は、産婦人科などで目立つ医師不足や偏在の要因となってきた労働環境をめぐる議論に影響を与えそうだ。

 弁論では、医師らの宿直や休日(宿日直)勤務が、労働基準法や人事院規則にのっとって県が定めた条例で割増賃金を支払う必要がないと定められた「断続的勤務」かどうかが大きな争点となった。

 坂倉裁判長は判決理由で、断続的勤務に該当する宿日直勤務について、「構内巡視や文書・電話の収受など常態としてほとんど労働する必要のない勤務」と判示。同病院の産婦人科医師らの勤務実態は「宿日直の24%の時間、救急患者の措置や緊急手術などの通常業務に従事していた」と認定し、断続的勤務には該当しないと判断した。

 その上で、宿日直中は「奈良病院の指揮命令下にあり、割増賃金を支払うべき対象の労働時間にあたる」と指摘。訴えのうち、時効が未成立の平成16年10月末以降の割増賃金の支払いを命じた。

(産経新聞、2009年4月22日)

****** 読売新聞・社説、2009年4月23日

産科医賃金訴訟 過重労働の改善を急がねば

 産科医の過酷な勤務実態の違法性を指摘した初の司法判断である。

 奈良県立奈良病院の産科医2人が過重労働に対する割増賃金を求めた訴訟で、奈良地裁は夜間と休日の当直は労働基準法上の時間外労働にあたるとして、県に1540万円の支払いを命じた。

 安全な出産のためにも産科医を増やし、労働条件の改善を急がなければならない。医療行政全体に向けた判決とも言えるだろう。

 判決は、「当直」とは「非常事態への待機など、ほとんど労働の必要がない業務」と指摘した。

 その上で、2人の医師は2年間の当直で計300件の分娩や1000件を超える救急患者に対応しており、こうした勤務実態は「労働基準法の規定を超える時間外労働として、割増賃金の支払い義務がある」と結論づけた。

 医療機関は一般に、当直は労働時間に当たらないとし、一定の手当で済ませているのが実情だ。

 県立奈良病院は、1人で当直をし、1回の手当は2万円だ。医師2人はそれぞれ当直が2年間で200日を超えていた。

 また、呼び出しに備える自宅待機(宅直)もあり、2年間でそれぞれ120日を超え、完全な休日は3~4日しかなかった。

 判決は、宅直については「医師間の自主的な取り決めで病院の内規にもなかった」として割増賃金を認めなかった。

 県立奈良病院では宅直に対する手当も支給していない。手当を支給する病院は増えており、宅直も適切に評価すべきだろう。

 全国の産科勤務医も同様の厳しい労働環境を強いられている。日本産婦人科医会の調査では、1か月の当直の平均は5・9回と、他の診療科を大きく上回る。

 産科医不足も深刻だ。10年間で全体の医師数は15%増えたが、産科は11%も減った。医師不足が過重労働に拍車をかけている。

 総合周産期母子医療センターの愛育病院(東京都)は労働基準監督署から医師の勤務実態を改善するよう勧告を受けたため、センター指定の返上を都に打診する事態に発展した。改善に必要な医師確保が困難だからだ。

 奈良では2006年、19病院で受け入れを断られた妊婦が亡くなっている。各地で同様の問題が起きている。お産の現場は危機的な状況にある。

 労働条件が改善されなければ産科医はさらに減少する。開業医が当直に加わるなど、地域医療全体での体制づくりが欠かせない。

(読売新聞・社説、2009年4月23日))

****** 毎日新聞、2009年4月23日

訴訟:産科宿直に割増賃金 「待機時間も労働」--奈良地裁判決

 奈良県立奈良病院(奈良市平松)の産婦人科医2人が、夜間や土曜休日の宿日直勤務に対し低額の手当ですませるのは違法として、04、05年の割増賃金など計約9230万円を支払うよう求めた訴訟の判決が22日、奈良地裁であった。坂倉充信裁判長は、県に時効分などを除く計約1540万円の支払いを命じた。宿日直勤務を時間外労働と認めた初の判断とみられる。

 判決などによると、同病院は県内外からハイリスクの妊婦らを24時間受け入れている。原告は04、05年に1カ月当たり6~12回の宿日直勤務をした。勤務時間は宿直が午後5時15分から翌日午前8時半、日直が土曜休日の午前8時半から午後5時15分だが、その前後も恒常的に勤務が続いていた。

 判決は原告らの宿日直勤務が「分娩(ぶんべん)の回数も少なくなく帝王切開も含まれる。救急医療もまれではない」として労働基準法上、割増賃金を払わなくてよい「断続的労働」とは認めなかった。割増賃金の根拠となる労働時間について「待機時間も労働から離れることが保障されているとはいえない」と宿日直開始から終了までが労働時間に当たると認めた。

 原告側は、自宅で待機する「宅直」も労働時間に含めるよう主張したが、判決は「病院の指揮命令下にあったとは認められない」として請求を退けた。【高瀬浩平、阿部亮介】

(毎日新聞、2009年4月23日)

****** 共同通信、2009年4月23日

産科医当直は「労働時間」 奈良、県に割増賃金支払い命令

 県立奈良病院(奈良市)の産科医2人が、2004年、05年の当直勤務の時間外割増賃金など計約9200万円の支払いを県に求めた訴訟の判決で、奈良地裁(坂倉充信裁判長、異動のため一谷好文裁判長代読)は22日、当直を時間外労働と認め、計約1500万円の支払いを命じた。

 奈良県は当直1回につき2万円の手当を払うのみだった。弁護士によると、医師の当直が労働時間に当たるかどうか争われた訴訟は初めて。当直に定額手当しか支払わない例は全国にあり、ほかの病院にも影響を与えそうだ。

 判決は「産科医は待機時間も労働から離れていたとは言えず、当直開始から終了まで病院の指揮下にあった」と指摘。当直は労働基準法上の時間外労働に当たり、割増賃金支払いの対象になるとして「現実に診療をした時間だけが労働時間」とする県側主張を退けた。

 判決によると、産科医2人は04-05年にかけてそれぞれ約200回、夜間、休日に当直勤務をした。その際、分娩に立ち会うことも多く、異常分娩の時に診療行為をすることもあった。さらに病院での宿直時は睡眠時間を10分取ることは難しく、当直中はポケベルを携帯し、呼び出しに速やかに応じることを義務付けられていた。

 判決は時効となった04年10月以前を除いた分について、手当を支払うよう命じた。

(共同通信、2009年4月23日)

****** 時事通信、2009年4月22日

奈良県に1500万円支払い命令=産科医の時間外手当認める-地裁

 奈良県立奈良病院(奈良市)の男性産婦人科医2人が、県を相手に2004年から2年分の時間外手当約9200万円の支払いを求めた訴訟の判決が22日、奈良地裁であり、坂倉充信裁判長(一谷好文裁判長代読)は約1539万円の支払いを県に命じた。

 判決によると、2人は2004年から2005年にかけ、それぞれ約200回の宿日直勤務に当たったが、県は1回の宿日直勤務に対し、2万円の手当を支払うのみで、労働基準法で決められた時間外手当を支払っていなかった。

 坂倉裁判長は、宿日直勤務中は睡眠などは取れず、勤務が続いていたと判断。「時間外手当を支払う必要がないとはいえない」とし、既に時効の04年1月1日から10月25日までの分を差し引いた手当約1539万を支払うよう命じた。

 産科医らが自主的に行っていた、休日も自宅で待機する宅直勤務については、「病院が命じていたことを示す証拠がなく、待機場所が定められているわけでもない」として時間外手当の請求を認めなかった。

 武末文男奈良県健康安全局長の話 県民が安心して医療が受けられる体制づくりのために、判決を詳細に検討したい。

(時事通信、2009年4月22日)


妊婦水戸へ集中 周辺の産科医負担増 (読売新聞)

2009年04月20日 | 地域周産期医療

コメント(私見):

茨城県北部・日立地域(人口28万人:日立市・高萩市・北茨城市)の06年の分娩件数は計2257件で、日立製作所日立総合病院がこのうちの半数超の1215件の分娩を取り扱いました。同病院は、07年度まで県内最多の分娩を取り扱っていました。

しかし、08年度初めまで6人いた同病院の産婦人科常勤医が今月より1人だけとなり、分娩取り扱いを休止しました。現在、この地域の分娩取り扱い施設は、北茨城市立病院(常勤医2人、北茨城市)、高萩協同病院(常勤医1人、高萩市)、瀬尾産婦人科医院(日立市)、加茂助産院(日立市)の4施設となりました。

この地域と隣接する福島県や栃木県なども、周産期医療提供体制は非常に厳しい状況にあるようですから、他地域の妊婦さんを受け入れる余地はあまりないと考えられ、同地域の妊婦さんの多くが水戸市内の病院に通院せざるを得ない地理的状況にあるようです。

読売新聞の記事で、水戸済生会総合病院(総合周産期母子医療センター)の産科医負担が今月から急増し始めたと報道されています。産科施設のドミノ倒しにならないように、負担が増えている病院の診療態勢を最大限強化する必要があると考えられます。

日立製作所日立総合病院(日製病院)、地域周産期母子医療センターを休止

日立製作所日立総合病院:産科医1人が残留 分娩を継続へ (毎日新聞)

医師確保険しく 来春産科医0の日製病院

日立総合病院 分娩予約一時中止

****** 読売新聞、茨城、2009年4月19日

妊婦水戸へ集中

周辺の産科医負担増

 「このままでは水戸より北にお住まいの重症のお母さんや赤ちゃんの命は助けられなくなります。誰かの責任だと騒ぐのは簡単ですが、県民一人ひとりが真剣にお産について考えるべきだと思います」。医療関係者から読売新聞水戸支局に先月、窮状を訴える手紙が届いた。ニュースの現状や背景に迫る「現場から」。1回目は産科医不足にあえぐ医療現場を取り上げる。

「近い方が…」

 「赤ちゃんの頭は下がってきてるから様子を見ましょう」。日立市から約30キロ離れた水戸済生会総合病院の産婦人科外来を訪れてきた臨月の女性(29)に、漆川邦医師(36)がエコーの映像を見ながら声をかける。出産間近の女性は診察後、「何かあったらと思うと、病院は近い方がいいんですけどね」とおなかに手をやった。

 日立製作所日立総合病院(日製病院)の産婦人科で、医師の確保が難航、4月以降の分娩(ぶんべん)予約は中止され、出産時に母体や胎児に危険が生じる可能性があるハイリスク分娩を受け入れていた地域周産期母子医療センターが休止した。この影響で、昨年秋頃から総合周産期母子医療センターの水戸済生会総合病院には県北から来院する妊婦が増え始めた。

 4月初旬の午前9時50分頃、水戸市内の開業医から「妊娠30週だが、いつ産まれてもおかしくない。周産期センターで見てほしい」と電話が入った。同院産婦人科には常勤医6人と初期研修医1人がいる。この日の午前中は、3人が外来、3人が手術、産婦人科主任部長の山田直樹医師(42)は病棟を受け持った。電話の直前には、婦人科の入院患者の様子が急変しており、山田医師は受け入れ時間を確認するとすぐに病棟に走った。

 午前11時過ぎ、入院中の妊婦が産気づく。前回の出産で大量出血し、今回もリスクがあると入院していた。赤ちゃんは無事産まれたが、女性は出産後に大出血し、処置に追われた。午後も妊娠高血圧症候群の妊婦が運び込まれたり、早産があったりと、休む間もなく動き続ける。午後9時過ぎ、センターの24床が満床になった。「今は目が離せない人がいる。次に何かあったら全員呼び出しをかけるから」。山田医師は当直の若手医師に声をかけた。

ハイリスク分娩

 同院によると、妊娠22週以降のハイリスクの妊婦で受診、入院している154人のうち県北地域からの妊婦は30人。日製病院が機能していた時は「ほぼゼロ」だったという。漆川医師は「県北の方には早めの入院を勧めている」と話した。高萩市から車で40分かけて来院した妊娠9か月の女性は、ハイリスク分娩の可能性があると診断され、紹介状を持って来院した。「病院に行く途中に高速道路で出産した人をテレビで見たけど、人ごとじゃない」と不安を口にする。

 女性の母親(53)は「一人で運転させて通院させるのは心配。少子化で子供を産みなさいって言われているのに、こんな状況じゃ話にならない」と憤る。

(読売新聞、茨城、2009年4月19日)

****** 毎日新聞、茨城、2009年3月19日

日立製作所日立総合病院:

水戸赤十字病院が産科医派遣 今秋、非常勤で

関係者、分娩再開に期待

 常勤産科医不足を理由に4月以降の分娩(ぶんべん)予約を取りやめている日立市の日立製作所日立総合病院(日製病院)に今秋、水戸赤十字病院(水戸市)から産科医が非常勤で派遣される見通しになった。関係者は分娩再開につながる好材料と期待を寄せている。【八田浩輔】

 日製病院は07年に県内最多のお産を手がけたが、今年度初めに6人いた常勤産科医は派遣元の大学病院の意向で4月から若手1人になる。このため、4月からは分娩だけでなく、リスクの高い妊婦の救急搬送を24時間受け入れる「地域周産期母子医療センター」の機能休止を余儀なくされた。県は問題が表面化した昨年夏から、県央地域で産科医療態勢が比較的整っている水戸赤十字病院に支援を要請していた。

 水戸赤十字病院は今月中旬、秋以降に産科医を派遣する意向を日製病院に伝えた。7人いる常勤産科医を交代で派遣することを想定しており、人選などの詳細は今後調整する。満川元一・副院長兼産婦人科部長は「あれだけの規模の病院が出産をやめる影響は大きい。県内の病院、診療所、産婦人科医会が小さな支援を積み重ねるしかない。我々が端緒となり(分娩再開の)めどをたてたい」と説明する。

 県医療対策課は「地元住民への安心感につながり、これから先の医師確保の呼び水にもなる。早期の分娩再開に向けて支援を続けたい」としている。

(毎日新聞、茨城、2009年3月19日)

****** 東京新聞、茨城、2009年3月19日

『正常分娩再開に前進』 水戸赤十字病院 

秋以降に産科医派遣

 日立市の日立製作所日立総合病院が常勤産科医の引き揚げに伴い、四月以降、出産から新生児医療までを担う周産期センターを休止する問題で、県の要請を受けた水戸赤十字病院(水戸市)が秋以降、日立総合病院に産科医一人を派遣する方針を固めた。県医療対策課は「正常分娩(ぶんべん)の再開に向けては大きな前進」と受け止めている。

 日立総合病院周産期センターは正常分娩から危険な分娩まで1212件(2007年)を扱ってきた実績があるが、派遣元の東京大医学部が常勤産科医4人のうち3人を3月末で引き揚げるため、4月から当面、正常分娩を含む一切の分娩休止を決めている。

 このため、県北地域の産科拠点が一時的に失われるが、秋以降は水戸赤十字病院から常勤医か、非常勤医が毎日派遣される方向で、常時、産科医2人体制が整う見通しとなった。

 周産期センターの再開は難しいが、他にも協力の意思を示している非常勤医4、5人の参加や、院内助産所の開設などにより、秋以降の正常分娩再開を目指す。

(東京新聞、茨城、2009年3月19日)

****** 常陽新聞、2009年3月19日

日立総合病院に秋以降、産科医派遣

水戸赤十字病院から1人

 4月から産科を休止する日立総合病院に、秋以降、水戸赤十字病院から産科医1人が派遣されることが分かった。17日の県議会予算特別委員会で、長谷川修平委員(民主)の質問に答え、橋本昌知事が明らかにした。

 現在、日立総合病院には産科医4人が勤務しているが、3月末で3人が派遣元である東京大の医局に戻る。継続が難しいことから、同院は既に産科の休止を発表していた。このため県は派遣元の大学をはじめ、さまざまなルートでの産科医確保を模索。県内の医療機関に対し、同院への協力、支援を求めてきた経緯がある。

 県医療対策課によると今月12日、以前から調整を続けてきた水戸赤十字病院から、産科医1人を派遣する意向が示されたという。

 具体的な派遣の時期、受け入れる日立総合病院側の体制は未定。派遣に当たっては、水戸赤十字病院の診療体制の見直しや派遣方法など、詰めなければならない問題が多数あることから、秋以降になる見通しとなった。

 橋本知事は委員会で「日立総合病院では、当面、分娩(ぶんべん)取り扱いを停止することに変わりはないが、これを契機に、院内助産所の開設も視野に入れながら、県北地域の分娩を担える体制づくりを進めてほしい」と答弁。「県としては、さらなる医師確保、地域の産科医との協力体制構築など、早期の分娩再開に向けて引き続き強力に支援していきたい」と述べた。

 同課は「産科医が2人になることで、ほかの医師を呼び込みやすくなる」とし、秋以降の産科医確保に期待を寄せている。

(常陽新聞、2009年3月19日)

****** 読売新聞、茨城、2009年3月18日

日製病院へ産科医派遣

今秋以降水戸赤十字から1人

 産科医の確保が難航し、分娩(ぶんべん)予約の受け付けを一時中止している日立製作所日立総合病院(日製病院)に今年秋以降、水戸赤十字病院から産科医1人が派遣される。

 橋本知事が17日の県議会予算特別委員会で、長谷川修平委員の質問に答えた。 日製病院は4人いる産科医のうち3人が派遣元の東京大学に引きあげられる。4月以降に残る産科医1人は、婦人科で外来診療にあたることになっており、秋以降は産科医2人体制となる。

 橋本知事は「これをきっかけに(正常分娩を扱う)院内助産所の開設も視野に入れながら、県北地域の分娩の体制作りを進めていっていただきたい」と述べた。

(読売新聞、茨城、2009年3月18日)

****** 茨城新聞、2009年3月18日

日立総合に産科医派遣 水戸赤十字病院

分娩再開に光 今秋以降1人

 日立製作所日立総合病院(日立市)が4月から産科を休止する問題で、県は17日、水戸赤十字病院(水戸市)が今秋以降、産科医1人を日立総合病院に派遣する意向を示したことを明らかにした。医師派遣が実現すれば、日立総合病院の産科医は2人体制となる。県は「半年後の産科再開に希望が出てきた。院内助産所開設も視野に、県北地域の分娩(ぶんべん)を担える体制づくりを進めてもらいたい」としている。

(茨城新聞、2009年3月18日)

****** 茨城新聞、2008年11月25日

安心お産体制危機

日立病院の分娩「休止」 救急、水戸に負担

 胎児異常や重い妊娠中毒症など危険度の高い出産を引き受ける医療機関として設置されている県北・県央地域の周産期母子医療センターの体制が揺らいでいる。日立製作所日立総合病院(日立市)が医師派遣元の大学から産科医全員の派遣を打ち切られるためだ。その機能が停止すれば、水戸市内のセンターに相当の負担が掛かる。妊婦の受け入れ先がない事態は避けなければならないことから、県内全体の周産期医療体制の見直しを含めた対応が求められそうだ。【水戸支社・小林太一、日立支社・鈴木貴子】

医師引き揚げ

 「誠に恐縮ながら当面の間は新規の分娩(ぶんべん)予約をお断りさせていただきます」。今年八月、日立総合病院のホームページに来年4月以降の出産予約の受け付けを一時休止する知らせが掲載された。医師を派遣していた大学病院から「派遣が難しくなった」と伝えられたためだ。病院側は継続を要請したが、大学側は「全体的に産科医が不足している」として、派遣打ち切りの意向を変えていない。

 同病院は、県北・県央地域のセンターである水戸済生会総合病院と県立こども病院(ともに水戸市)に次いで、主に県北地域を支えるセンターに位置付けられる。新生児集中治療室(NICU)を備え、24時間態勢で危険度の高い出産の受け皿になっている。

県北から妊婦

 水戸済生会総合病院に今夏ごろから、県北地域の妊婦が訪れ始めた。来年4月以降に出産予定の妊婦が目立つという。産婦人科の山田直樹主任部長は「間違いなく日立総合病院の影響が出ている」と指摘する。

 同産婦人科は研修医を含む6人でセンターの機能を維持。隣接の県立こども病院とともに対応する。県立こども病院のNICU稼働率は95%前後で推移。山田部長は「来年4月以降、県北地域のNICUを必要とする患者をすべて受け入れるのは物理的に不可能」という。

80キロ搬送  

 県産婦人科医会の青木雅弘会長は「日立総合病院が産科医を確保できなければ、救急体制は崩れてしまう」と危機感を募らせる。

 同会によると、日立総合病院への昨年度の救急母体搬送件数は53件。このうち、約半数の25件が県北地域内からの搬送だった。危険な状態の妊婦を同地域から水戸市内に運ぶとなれば、移動距離は最大80キロにもなる。青木会長は「統計の数字以上に、地域内で日立総合病院の役割は大きい」と話す。

 日立総合病院は9月に産科医が2人減り、現在は4人体制でセンター機能を維持している。来年4月には、4人全員が大学病院の医局に引き揚げる予定。

 今後の体制について同病院は「産婦人科とNICUを維持してセンターの枠組みを残すことが大前提。最低でも2、3人の常勤医を確保したい」と話す。派遣元の大学病院以外のルートで医師を探すとともに、助産師が正常出産を扱う「院内助産院」の開設も模索する。12月には来春以降の方針を明確にする考えだ。

(茨城新聞、2008年11月25日)

****** 北茨城民報、2008年11月2日

少子化対策を言うなら

北茨城市議会議員 鈴木やす子

 東京都での妊婦死亡のいたましいニュースが報じられました。救急の受け入れを断ったとして、首都の名だたる病院がずらっと並んでいたことも衝撃的でした。

 昨年1月、本紙でも紹介しましたが、日立市で県医師会が主催して「お産をする場所がない!」というフォーラムが開かれました。現役の医師や助産師、行政担当者から、お産をめぐる現状や見通しについての報告がありました。

 日立総合病院(日製病院)の産婦人科主任医長は「大病院に分娩集約が起こり、医師の〝燃え尽き症候群〟」があると警告されました。また、東京在住の医師からは「同じ関東圏でありながら、これほど医療過疎が進んでいる茨城県北の現状にショック」との言葉もありました。

 そして日製病院は、今年の9月からのお産の予約を取りやめました。これが地域に与える影響はどれほどのものか。北茨城市立病院での分娩受入れ数の増加、高萩協同病院での産科再開のいっぽうで、強い危機感がひろがっています。

 久しく少子化対策が叫ばれています。母親にとって出産は、場合によっていのちと引き替えの一大事でもあります。安心して産むことができる場所が確保されていないのでは、二の足を踏んでしまいます。

 今回の事態をまねいた責任について、厚労相と都知事がなすりつけあいをしていることも報じられています。根本原因は、自民・公明の政府が続けてきた医療政策そのものです。

 先に「医療費削減」ありきでは、医師確保もままなりません。政治が、あれこれの弁解をしてるばあいではないはずです。産科医や助産師の増加をはかり、病院の経営上も報われる仕組みをつくることが急がれます。

 「生命を社会に迎える最初の場面が過酷な労働と緊張とストレスにあふれている」とは、医師でもある日本共産党の小池晃参議院議員の言葉です。こんな悲しい現状を一刻も早く変えなければ。

(北茨城民報、2008年11月2日)

*** ほっとメール@ひたち、2007年12月28日
茨城県議会議員・井手よしひろ・活動記録・Blog版

高萩協同病院で来春6月より産婦人科再開

 茨城県県北臨海地域の3市(日立・高萩・北茨城)では、出産のできる産婦人科医療機関が不足し、深刻な問題となってます。この地域で、出産を取り扱っているのは、日立製作所日立総合病院(日立市)、北茨城市立病院、診療所の瀬尾医院(日立市)、助産所の加茂助産院(同)の4施設しかありませんでした。

 このような状況の中、12月27日、高萩市の草間吉夫市長と県北医療センター高萩協同病院の大和田康夫院長が記者会見を行い、来年5月から出産を含む産婦人科の診療を再開することを発表しました。市の働きかけなどで、高萩市出身の渡辺之夫医師(40)が常勤医を引き受けました。大和田院長によると、助産師5人程度を確保し、来年6月から分娩(ぶんべん)の受け付けを再開します。当面は月10件程度の出産を目指すとしていいます。高萩協同病院は、産科医がいた当時は市内で唯一の分娩できる医療機関で、年間200件の出産に携わってきました。しかし、04年10月から医師不在となり、産科は休診。新築された病院は一度も産婦人科の施設が使われずに現在に至りました。

 2005年には出産を取り扱う病院が日立総合病院と瀬尾産婦人科、加茂助産院だけとなってしまった時期もありましたが、北茨城市立病院、高萩協同病院と相次いで産婦人科が再開できることになりました。

 一方、産婦人科医師の退職が懸念されていた日立総合病院は、来年の4月以降も担当医の確保ができる模様で、県北地域の産婦人科の体制は維持できることになりました。

(ほっとメール@ひたち、2007年12月28日)

****** 産経新聞、茨城、2007年12月28日

産科 3年半ぶり再開へ 高萩協同病院

 茨城県高萩市の県北医療センター高萩協同病院(大和田康夫院長)は27日、平成20年5月から産婦人科を再開すると発表した。同市内には現在、産婦人科を持った医療機関がなく、同市の草間吉夫市長は「市内での産婦人科がまたできるのは大きな前進」と歓迎している。

(産経新聞、茨城、2007年12月28日)

****** 時事通信、2009年4月20日

産科医不足、共通の悩み=11カ国・地域、確保策さまざま-日医

 産科医の不足や地域偏在問題を抱えているのは、欧米やアジアなど15の国・地域のうち11に上ることが、日本医師会の調査で20日までに分かった。日本と同様に訴訟の増加など、産科医を取り巻く環境が厳しくなっている実態が浮き彫りとなった。平均勤務時間は日本が最長だった。

 調査は各国の状況を把握し、国内対策に役立てようと昨年17カ国・地域に依頼した。米国、カナダ、韓国、台湾、シンガポール、タイ、フランス、ドイツ、英国、フィンランド、デンマーク、アイスランド、イスラエル、ニュージーランドの医師会から回答があり、日本を含む15カ国・地域で分析した。

 産科医が不足、もしくは地域的に偏在しているとしたのは11カ国・地域。このうち、日本とカナダ、イスラエル、ニュージーランドの4カ国は不足と偏在問題両方に直面していた。将来、両方の問題が生じると予測しているのは、10カ国・地域に上った。

 何らかの対策を取っているのは12カ国・地域。内容は、研修医の数の管理(7カ国)、地方での人員確保のための財政支援(6カ国)、産科医総数のコントロール(5カ国)、外国人医師の採用(4カ国)など。

(時事通信、2009年4月20日)

****** 読売新聞、2009年4月14日

[解説]「周産期」指定返上問題

過重労働医療の危機 診療科別に計画配置必要

 総合周産期母子医療センターの愛育病院(東京都港区)が、労働基準監督署の是正勧告により夜間の常勤医確保が困難として、指定返上を都に打診した。(医療情報部 館林牧子)

 【要約】

 ◇愛育病院は医師の夜間勤務が「時間外労働」と見なされ、是正勧告を受けた。

 ◇産科・救急医不足が背景にあり、抜本的解決には、医師の計画配置が必要だ。

 愛育病院によると、労基署から3月、産科医、新生児担当医の夜間勤務が、労働基準法で定める労働時間を超えているなどとして、指導・是正勧告を受けた。

 医療機関では慣習的に、夜間勤務は労働時間に当たらない「宿直」扱いにしていることが多い。定時の見回り程度の仕事で睡眠も取れるのが建前だ。

 しかし、急患を常時受け入れている同病院の夜間勤務は、睡眠などは取れないのが実態であり、労基法上の「時間外労働」にあたると見なされた。労働時間に含めなければならず、日勤の25%増の割増賃金を支払う必要がある。

 総合周産期母子医療センターは産科医が24時間いることが条件だが、同病院では労基署の指導に従った場合、夜間帯も常勤医が常に勤務することは困難と判断。都に指定の返上を打診した。都からは「夜間は非常勤医でも問題ない」として、総合センター継続の要請を受けており、今月下旬には結論が出される見通し。

 しかし、今回の問題は愛育病院だけの問題にとどまらない。全国周産期医療連絡協議会が昨年、全国75か所の総合センターに行った調査では、97%の施設が、同病院と同様に、夜間勤務を「宿直」扱いとしていた。皇室関係のご出産でも知られる同病院は、比較的医師数も待遇も恵まれた病院であるにもかかわらず、労基署から是正勧告を受けたことが、医療現場には余計にショックを与えた。

 背景には、分娩に携わる産婦人科医の絶対的な不足がある。厚生労働省によると、2006年までの10年間で、全体の医師数は15%増えているのに対し、産科・産婦人科医の数は約1万1300人から約1万人へと11%も減少している。

 さらに、働き盛りの20歳代の産婦人科医の7割、30歳代の5割が女性だが、女性医師の約半数は、自分の出産を機に分娩を扱わなくなることも、産科救急医の不足に拍車をかけている。

 過重労働は現場の疲弊を招き、医師の健康のみならず医療の安全も損なうことにもつながる。杏林大の岡本博照講師(公衆衛生学)が4年前、東京都と大阪府の6か所の救命救急センターの勤務医を調査したところ、平均当直回数は月10回、休日は月に2日だけ。月に1日も休みを取らず、22回も当直勤務をこなしていた医師もおり、労基法とはかけ離れた実態が明らかになった。休日が3日以下の医師は、免疫機能が低下し眠気も強いなど健康上の問題もわかり、岡本講師は「診療内容にも大きな影響を及ぼしかねない」と指摘する。

 愛育病院では、夜間専門の非常勤医師を雇い、現在の当直体制は維持する方針。だが、夜間の非常勤医師は、昼間は別の病院で働いており、病院を昼夜で移るだけで、医師の過重労働の抜本的な解決策にはならない。

 杏林大高度救命救急センターの島崎修次教授は「労基法を守るなら、救命救急センターには今の1・5倍以上の医師が必要だ。医師確保が難しい中で、労基法の順守だけを求められても現場では解決のしようがない」と話す。

 読売新聞が昨年10月公表した医療改革提言では、医師を増やすとともに、地域や診療科ごとに定員を設け、計画的に専門医を養成することを提案している。過酷な勤務実態を改善するには、産科や救急など激務の診療科に適正に医師を配置する仕組みが必要だ。

(読売新聞、2009年4月14日)

****** 毎日新聞、栃木、2009年3月31日

佐野厚生総合病院:12月から産科休止 

周産期医療機関、栃木病院も返上

 リスクの高い妊娠に対応する地域周産期医療機関に認定されている佐野厚生総合病院(佐野市)が、12月から産科を休止することが分かった。また、国立病院機構栃木病院(宇都宮市)も2月に地域周産期医療機関の認定を県に返上していたことが分かった。07年の分娩(ぶんべん)数は、佐野厚生総合病院は540件、国立栃木病院は135件に上る。いずれも産科医の不足による対応で、地域の産科医療に深刻な影響を及ぼしそうだ。

 佐野厚生総合病院は現在3人いる産科医が4月から2人に減る。11月まで予約が入っている分娩には対応するが、それ以降の新規出産は受け入れない。国立栃木病院も医師が減少し、産科は継続するもののハイリスク分娩には対応しない。

 県医事厚生課によると、07年の県内医療機関での分娩は1万8335件。最も多いのは済生会宇都宮病院(宇都宮市)で1248件に上る。

 比較的高度な医療設備とスタッフを抱え、異常妊娠に対応する地域周産期医療機関に認定されているのは、08年度で県内8病院。両病院の産科休止や認定返上により、認定病院は6病院に減り、宇都宮市内では済生会宇都宮病院、両毛地域では足利赤十字病院(足利市)のみになる。【葛西大博】

(毎日新聞、栃木、2009年3月31日)

****** 読売新聞、栃木、2009年3月28日

周産期医療センター 国立栃木認定返上

佐野厚生総合、出産休止へ

 母体や胎児へのリスクが高い出産に対応する「地域周産期母子医療センター」が、現在の8病院から2減となる見通しであることが27日、わかった。国立病院機構栃木病院(宇都宮市中戸祭)が認定の返上を県に申し出たほか、佐野厚生総合病院(佐野市堀米町)が11月末で出産の扱いを休止する方針。いずれも医師不足を理由に挙げている。今後、緊急時や県南部の出産受け入れ体制に大きな影響が出る可能性がある。

 県によると、国立栃木病院は現在2人いる産科常勤医が4月から1人となる見込みで、「医師不足のためハイリスク分娩に対応できない」と2月に返上の申し入れがあった。

 認定返上は2007年11月の佐野市民病院、宇都宮社会保険病院に続いて3件目。

 佐野厚生総合病院は、現在入っている11月までの予約には対応するが、新規の出産受け入れは休止する。同病院によると、2007年度に5人いた産科常勤医が08年度に3人に減少。3月末にはさらに1人が退職することになり、休止を決断したという。今後、新たな医師を確保できない場合は「センター認定を返上するしかない」と話している。

 それぞれの病院の認定返上、出産休止は、27日に開かれた県周産期医療協議会で報告された。

 国立栃木病院は、07年度から出産受け入れを縮小している。

 一方、佐野厚生総合病院は年間約400件の出産を扱っており、佐野市内で出産を扱う医療機関3か所のうち救急搬送に対応できるのは同病院だけ。周辺の病院が受け入れを大幅に拡大しなければ、地元で出産施設が見つからない「お産難民」が発生する可能性もある。

 協議会では、「小児救急や高度な周産期医療を担う足利赤十字病院の負担増は避けられないのではないか」と懸念する声が上がった。

(読売新聞、栃木、2009年3月28日)

****** 下野新聞、2009年3月28日

佐野厚生病院、12月から産科休止 周産期機関返上へ

 合併症などリスクの高い妊婦を受け入れる地域周産期医療機関に認定された佐野厚生総合病院(佐野市)が十二月から産科を休止する方針であることが二十七日、分かった。現在三人の産科常勤医が四月から二人に減るためで、十一月までのお産と産科救急も当面対応する予定という。出産前後の周産期医療体制を支える地域拠点病院がこのまま離脱すれば、弱体化は必至だ。

 同日の県周産期医療協議会で病院関係者が報告した。

 下野新聞社の取材に対し、現在診療している妊婦は責任を持ってお産まで担当するが、四月以降に常勤医が三人に戻らなければ、十一月いっぱいでお産を休止せざるを得ないという。

 佐野厚生のお産件数は、年間四百件近くに上る。産科救急は四月から対応できる範囲が縮小する見通し。また地域周産期医療機関の認定も産科が休止すれば、返上するという。

 県保健福祉部によると、県内でお産に対応する医療機関は減少する一方。三年前には五十カ所だったが、昨年四月には下都賀総合病院(栃木市)のお産休止などで四十四カ所に減った。

 地域拠点病院も今年二月に国立病院機構栃木病院(宇都宮市)が地域周産期医療機関の認定返上を申し出たばかりだった。

 県保健福祉部の担当者は「きょう初めて聞き、えっと思った。救急の対応など今後の状況を、きちんと確認したい」と、驚きを隠さなかった。

(下野新聞、2009年3月28日)


静岡県立こども病院NICU 新規患者は静岡市内のみ受け入れを継続

2009年04月14日 | 地域周産期医療

コメント(私見):

静岡県立こども病院NICUは、新規患者の受け入れを全面休止する方針を示していましたが、静岡市内の医療機関と院内の他の診療科の支援で受け入れ態勢を整えることができたので、静岡市内の新規患者に関しては受け入れを継続することを表明しました。

なるべく早い段階で医師を確保し、6~7月をめどに、新規患者の受け入れ制限を解除したいとのことです。今後の動向に注目していきたいと思います。

****** 毎日新聞、静岡、2009年4月15日

県立こども病院:静岡市の患者は新規受け入れ継続--新生児集中治療室

 静岡市葵区漆山の県立こども病院(吉田隆実院長、279床)は13日、静岡市の患者については新生児集中治療室(NICU)への新規の受け入れを続けると発表した。こども病院は先に、担当医の減員に伴い患者の新規受け入れを全面休止すると明らかにしていた。NICUの当直勤務に他の診療科の医師を充てたり、静岡市内の別の病院の支援を受ける。【浜中慎哉】

(毎日新聞、静岡、2009年4月15日)

****** 静岡新聞、2009年4月14日

県立こども病院新患問題 

静岡市内のみ受け入れ

 県立こども病院(静岡市葵区漆山)は13日、一時停止するとしていた新生児集中治療室(NICU)の新規患者の受け入れを、静岡市内の新生児患者については継続して行うことを明らかにした。ほかの地域の患者は、同病院と同様に県から総合周産期母子医療センターの指定を受ける順天堂大静岡病院(伊豆の国市)と聖隷浜松病院(浜松市中区)に受け入れの協力を求める方針を示した。今後は6月を目標に医師を確保し、NICUの態勢を再構築するという。

 人事異動をめぐる混乱などで新生児未熟児科の医師が退職することを受け、13日から新患の受け入れを休止する方針を示していたが、静岡市内の医療機関と院内の支援で受け入れ態勢を整えた。1500グラム以上の外科系や循環器系の疾患患者らは地域に関係なく従来通り受け入れる。

 石川嘉延知事は同日の定例会見で、新患の受け入れ制限という事態を招いたことについて「残念なこと。できるだけ早期に医師が補充されることを期待している」と述べた。一方で、同病院が4月から地方独立行政法人に移行したことを踏まえ、「大きな試練と思うが、新しい体制の下で適切に処理していかなければいけない」とし、当面は見守る考えを示した。

(静岡新聞、2009年4月14日)

****** 中日新聞、静岡、2009年4月14日

新規受け入れ一時停止 県立こども病院の新生児集中治療室

『6月めど医師確保、再開』

 県立こども病院(静岡市葵区)の新生児未熟児科で医師7人のうち5人が異動したり、退職する意向を示している問題を受け、同病院の新生児集中治療室(NICU)は13日、静岡市外からの入院患者の新規受け入れの一時停止を始めた。 【藤川大樹】

 こども病院によると、西部は「聖隷浜松病院」(浜松市)、東部は「順天堂大学医学部付属静岡病院」(伊豆の国市)で診療してもらう。静岡市内の患者については、内科系(小児科)を中心とした他診療科のサポートなどにより、受け入れが可能という。

 病院側は「6月をめどに代わりの医師を確保し、診療を全面再開したい」としており、重症の新生児などを受け入れる「総合周産期母子医療センター」指定についても、県は当面は取り消さない方針。

 一方、外来診療は継続し、1500グラム超の外科系疾患、循環器系疾患の患者も受け入れる。既に入院している患者の診療も続ける。

 石川嘉延知事は13日の定例会見で「早期に医師の補充ができると期待している」と述べた。

(中日新聞、静岡、2009年4月14日)

****** 読売新聞、静岡、2009年4月14日

こども病院 新生児ICU問題 

「静岡市内のみ受け入れ」

 県立こども病院(静岡市葵区漆山)がNICU(新生児集中治療室)の患者受け入れを当面休止すると発表した問題で、同病院は13日、「院内、院外での協力体制が得られた」として、静岡市内の患者に限り受け入れを継続する方針を明らかにした。

 同病院の北村国七郎事務局長の説明によると、病院内で他診療科の医師に当直に入ってもらうことや、市内でNICUを持つ他病院の協力が得られたため、受け入れ休止範囲を狭めることにしたという。こども病院NICUの年間受け入れ数は140~150人で、その半数程度が静岡市の患者という。

 静岡市以外の周辺市町の患者については、同病院と同様、母体や新生児に対する高度な治療を行う「総合周産期母子医療センター」の指定を受けている順天堂大静岡病院(伊豆の国市)、聖隷浜松病院(浜松市中区)に協力を求めるという。

 この問題について、石川知事は13日の記者会見で「できるだけ早期の医師確保を期待したい」と述べたが、人事異動を巡る問題が休止のきっかけになったとの声が院内から出ていることについては、「県立病院機構で適切に対処していくものと確信している」と述べるにとどまった。

(読売新聞、静岡、2009年4月14日)

****** 産経新聞、静岡、2009年4月14日

静岡県立こども病院 患者受け入れ制限発表

 静岡県立こども病院(静岡市葵区漆山)は13日、新生児集中治療室(NICU)への新規患者の受け入れを制限すると発表した。現在は必要な患者は制限を設けず受け入れているが、今後は、静岡市内の患者のうち「こども病院でなければ適切な医療を受けられないような患者」(病院側)のみとし、それ以外の患者は市内の他の医療機関を受診してもらう方針だ。

 県立こども病院は、高度な周産期医療を提供する「総合周産期母子医療センター」に指定された、県中部唯一の医療機関。静岡市外の患者は、同じ指定を受けている順天堂大付属静岡病院(伊豆の国市)と聖隷浜松病院(浜松市)での対処を要請するという。

 同病院は、1000グラム未満で産まれた低体重児や重度疾患を持つ新生児に最先端の医療を提供できる、高度周産期医療の“最後の砦(とりで)”となっているだけに、受け入れ制限は周辺市町の医療機関にも大きな影響を与えそうだ。

 今回の措置の理由は、昨年度は7人いた新生児未熟児科の医師が、今月中にも退職などで2人に減ると見込まれているため。3月に出された同科長の異動内示に反発した周囲の医師らが辞意を示したことが、主な原因という。

 病院側は一時、NICUへの新規受け入れを全面休止すると発表していた。しかし、小児科など別の科の医師で減員分をカバーする態勢を整えたことから「病院として最低限の責務を果たすため、必要な患者の受け入れは何とか行うことにした」と方針を転換した。

 同病院経営室は「新患の制限はあくまでも暫定的な措置。現在、医師の確保に努めており、6~7月をめどにこれまで通りの態勢に戻したい」と話している。

(産経新聞、静岡、2009年4月14日)

****** 静岡第一テレビ、2009年4月13日

NICU受け入れ縮小で再調整(静岡県)

 NICU・新生児集中治療室への新規患者受け入れを13日から休止すると発表していた県立こども病院が受け入れを縮小する方向で再調整していることがわかった。県立こども病院は今月10日の会見で13日からNICUへの新規患者の受け入れを休止すると発表していた。小林副院長によるとその後、病院内で検討した結果、全面休止とするのではなくできる限り患者を受け入れるべきではないか、という意見が強まったことなどから受け入れを縮小する方向で再調整しているという。受け入れの判断については患者の症状や容態などを病院が判断し決めるという。また、入院中の患者からの問い合わせについては個別に説明を行っていると話している。

(静岡第一テレビ、2009年4月13日)


新・地域周産期医療について(自ブログ内リンク集)

2009年04月14日 | 地域周産期医療

11/17 1052機関中 市立堺病院2度目全国一、医師臨床研修先の第1希望率
11/10 榛原総合病院: 医師大量退職 争奪戦に?

10/30 平成21年度 研修医マッチングの結果
10/27 たらい回し問題から1年 妊婦搬送、工夫進むが… 医師不足は変わらず (読売新聞)
10/24 2次保健医療圏広域化へ 10から5に再編 群馬
10/20 地域の病院に医師を派遣する拠点病院「マグネット・ホスピタル」を整備する県の構想
10/15 上田市産院に副院長着任 常勤医2人体制に
10/09 出産時に世界全体で年間200万人の母子が死亡 米研究グループが報告書

09/27 臨床研修の都道府県別来年度定員
09/25 「地域医療をともに考えるシンポジウム」(長野県、上田市、上田地域広域連合)
09/21 上田小県地域の医療体制をどうするのか?
09/16 産婦人科医の状況、「悪化」が半減 (CBニュース)
09/12 上小医療圏: 『産科2次医療提供体制の再構築』という課題
09/10 10年度臨床研修の募集定員  地方大学病院の割合が初めて増加 マッチングで研修医の動き注視
09/04 上田市産院 年内に常勤産科医1人が着任

08/23 急性期病院の勤務医が相次いで離職し、全国各地で医療崩壊が進行中!
08/16 周産期医療、整備指針の改正案 厚労省、都道府県に示す
08/14 産婦人科医療の崩壊をくい止めるために、国が早急に実施すべきことは何か?
08/11 医師不足対策

07/09 妊婦健診と分娩の取り扱いを地域内で分担
07/03 医師の研修制度はいま

06/22 臨床研修6年目 競争激化、質も向上
06/08 東信地域の中核的病院 分娩休止相次ぐ
06/07  「過酷な」勤務実態で産科女医の就労継続困難に (CBニュース)
09/06/02 カンガルーケアで安全指針

05/31 駒ケ根でお産ができる 産婦人科医院来年5月開業 (長野日報)
05/30 レジナビフェア2009 for RESIDENT in 東京
05/28 医師配置、新機関で…厚労省研究班が提言
05/25 長野県・上伊那地域の産科医療

04/18 今年度の研修医は計20人 諏訪中央病院 新規採用は8人
04/16 名古屋市立病院再編、医師不足の特効薬か? (中日新聞)
04/08 助産師と臨床検査技師(超音波検査士)とが協同して担当する妊婦健診の導入効果(第61回日本産科婦人科学会学術講演会・演題)

03/31 後期研修医の新規採用状況
03/23 小諸厚生総合病院、4月以降の分娩の取扱いを休止
03/18 地方における医師不足対策
03/15 臨床研修制度の見直しについて
03/08 帝王切開:周産期センター「30分で手術可能」3割 (毎日新聞)
03/06 飯田市立病院 分娩受け入れ制限を一部解除
03/04 日立製作所日立総合病院(日製病院)、地域周産期母子医療センターを休止
09/03/03 上田市産院の移転改築推進へ準備室

02/24 医師の計画配置と公共の福祉
02/19 新卒医師研修、実質1年に 厚労・文科両省が短縮案
02/16 佐久市立浅間総合病院:産科医6人に増強 分娩予約も月60件超--4月から
02/15 地域に産婦人科の機能を残すために
02/07 周産期医療提供体制立て直しの方策は?
02/04 臨床研修制度の見直し最終案骨子
09/02/01 産科復興に向けた長野県各地域の取り組み

01/31 NICU維持が焦点に/日製病院産科問題 (朝日新聞)
01/23 日立製作所日立総合病院:産科医1人が残留 分娩を継続へ (毎日新聞)
01/18 妊産婦の死亡率3百倍 先進国に比べ、後発途上国
01/15 長野病院の周産期医療回復へ支援制度
01/08 産科医、母親の負担軽減へ 飯田市立病院が助産師外来拡充 (南信州新聞)
01/06 周産期医療の現場
09/01/01 産科医療補償制度、本日より開始

05/12/25~08/12/30
地域周産期医療について


静岡県立こども病院NICU、新規患者の受け入れを休止

2009年04月11日 | 地域周産期医療

コメント(私見):

静岡県立こども病院に7人いた新生児科医が(いきなり5人減って)2人となってしまい、同院NICUの新規患者受け入れが休止に追い込まれる事態に陥ったとのことです。新生児未熟児科の科長が4月1日付で県立総合病院に移った人事異動が、この事態の直接のきっかけとなったようです。病院当局側の記者会見の後に、同科に残った医師も記者会見をして、人事をめぐる内紛が根底にあることを暴露しました。

詳しい状況はわかりませんが、現場スタッフのモチベーションが下がって、離職者が続出するようになってしまったら、どんな職場でも長続きしません。スタッフのみんながやりがいを感じ、楽しく働けるような職場の雰囲気を創り上げることが大切だと思います。

****** 毎日新聞、静岡、2009年4月11日

県立こども病院:新生児集中治療室、新患受け入れ休止--13日から

 ◇内紛か、担当医激減

 静岡市葵区漆山の県立こども病院(吉田隆実院長、279床)は10日、新生児集中治療室(NICU)の新たな患者の受け入れを13日から休止すると発表した。最高度の医療を提供し、県から「総合周産期母子医療センター」指定を受けているが、担当医が7人から2人に激減したことが理由で「すぐに人材を確保して、6月中にも再開したい」と話している。ただ背景には人事をめぐる内紛があるとされ、県民不在との批判を浴びそうだ。

 こども病院は、最高レベルの医療が必要な出産前後の母親や新生児の入院を受け入れてきた。NICUはベッド数12床。1000グラム未満の低体重児や、重い疾患のある新生児に対処している。

 こども病院の説明にでは、NICUを担当してきた新生児未熟児科長の異動が3月に内示されたことで病院側と同科医師の間で対立が生じた。退職の意思を示す医師が相次ぎ、最終的に5人減員の見通しになった。

 こども病院が新患受け入れの休止を発表したことで、県が「総合周産期母子医療センター」に指定した医療機関は聖隷浜松病院(浜松市)▽順天堂大医学部付属静岡病院(伊豆の国市)--の2院になる。県中部では当面、県指定の機関がなくなる事態となった。

 こども病院の北村国七郎事務部長は10日、取材に「新患への対応は、ほかの指定病院や近隣の病院に協力を願っている。今は、現在いる患者11人の医療体制の維持が最優先だ」と話した。

 医科長の代理人弁護士は「院長が医科長の退職を強要した。辞める医師も病院への不信がある」と訴えた。こども病院側は「院長からは『異動には理由がある』と聞いている」と説明した。 【竹地広憲】

(毎日新聞、静岡、2009年4月11日)

****** 朝日新聞、静岡、2009年4月11日

県立こども病院NICU、新患受け入れ休止

 県立こども病院(静岡市葵区漆山、吉田隆実院長)は10日、新生児集中治療室(NICU)について13日から新たな患者の受け入れを一時休止すると発表した。人事を巡るトラブルなどで、担当の新生児科医7人が2人に減る見通しとなり、診療体制を維持できなくなったためだ。

 同病院によると、NICUは早産や重い疾病などリスクが高い新生児を治療する。担当の新生児未熟児科には3月末まで常勤医5人と研修医2人の計7人がいた。うち5人が4月中ごろまでに人事異動や退職を理由にいなくなるため、12床あるNICUや21床ある後方病床(GCU)で現在の診療を続けられなくなったという。科長の異動を命じた病院側と、それに反対した他の医師との対立が主な原因とみられる。

 休止するのは、これまで他の医療機関などから受け入れてきた分。現在NICUにいる新生児や、院内で出産した新生児の治療については継続する。また、体重1500グラム以上の新生児の治療はNICU以外でも可能なため、受け入れる。同病院は「7月までには医師を確保して、診療体制を回復させる」としている。

 県は昨年12月、同病院を危険の大きい出産に24時間体制で対応する県内三つ目の総合周産期母子医療センターとして指定したばかり。地域の周産期医療の「最後のとりで」として周辺の医療機関から重症の新生児を受け入れてきたが、今回の休止により中部地域への影響が心配される。県厚生部は「一時的に機能が落ちても回復する見込み」として、指定はそのままにする。

 吉田院長は同日、「本来果たすべき役割を果たせず、ご心配をおかけして申し訳ない」と話し、「早期回復に全力を挙げる」とした。また、同病院は担当医の減少について「必要があって異動したが、他の医師とコミュニケーション不足があった」としている。

(朝日新聞、静岡、2009年4月11日)

****** 読売新聞、静岡、2009年4月11日

新生児ICU 新患休止

こども病院 医師5人減で

 県立こども病院(静岡市葵区漆山、243床)は10日、新生児未熟児科の医師が退職などで3月末時点の7人から2人に減る見通しとなったため、NICU(新生児集中治療室)の患者受け入れを13日から当面休止すると発表した。同病院は昨年12月、妊産婦や新生児に対する高度な治療を行う「総合周産期母子医療センター」に指定されたばかりの県中部の拠点病院。県内の周産期医療体制に大きな影響が出るのは確実だ。

 記者会見した吉田隆実院長らによると、新生児未熟児科には3月末時点で常勤5人、後期研修医2人の計7人の医師がいたが、科長が他病院に異動し、常勤医1人は派遣元大学へ戻った。別の常勤医1人も今月中に退職の意向。さらに研修医2人も別の病院に勤務するため退職する見通しという。

 同病院のNICUは12床。体重1500グラム未満の未熟児を年150人前後受け入れ、特に管理の難しい1000グラム未満が年20人程度いる。医師2人では入院中の患者への対応で手いっぱいになるとして、新規患者受け入れの休止を決めた。

 記者会見で吉田院長は「休止は一時的なもの。6月末までに医師を確保し、7月からNICUの受け入れを再開したい」と述べたが、確保の具体的な見通しは立っていないという。一方、これとは別に同科の山口解冬(ときと)副医長(33)も10日に記者会見し、「吉田院長が前科長を異動させたため、十分な体制での診療ができなくなり退職が相次いだ。残りの医師で十分な診療が続けられるかわからない」と訴えた。

 総合周産期母子医療センターはこども病院のほかに、県内では順天堂大静岡病院(伊豆の国市)と聖隷浜松病院(浜松市中区)にある。体重1000グラム未満の新生児が静岡市など県中部で生まれた場合、今後は救急車でも1時間以上かかる両病院に搬送することになる。NICUを持つ静岡市内の病院の新生児科医(36)は、「こども病院に入院させるべき患者を静岡市内の病院にどんどん回すと、地域の周産期医療体制はいずれ崩壊する。患者を振り分けるルールを作るべきだ」と話している。

(読売新聞、静岡、2009年4月11日)

****** 静岡新聞、2009年4月11日

新生児ICU制限に院内のあつれき 

県立こども病院

 県立こども病院(静岡市葵区漆山)の新生児集中治療室(NICU)が新規患者の受け入れを一時的に制限する問題は10日、吉田隆実院長らの会見後に、NICUを担当する新生児未熟児科の医師が突然、会見して病院側を批判する事態となり、病院内のあつれきが表面化した。前同科科長の人事問題をめぐる混乱のしわ寄せが、結果的に県民の医療に及んだ形だ。

 会見した同科医師は、前科長が病院側から「院内外からクレームが多い」として退職を迫られたとし、「クレームを直接聞いたことはない。科長の異動は納得できない」と強調。3月に異動が内示された後、病院側や県に対し、不当人事で実際に異動すれば、同科の診療体制が維持できなくなるとして撤回を求めてきたと説明した。

 吉田院長らは、同科の医師の勤務環境を改善するため、新年度は常勤医の枠を6人から10人に増員する計画だったと説明。前科長の異動について「新体制を考えていたが、調整、コミュニケーションがうまくいかなった」とした。ただ、異動の理由など詳細については、「個人的な問題」として明らかにしなかった。

 同病院は7月の新患受け入れ再開を目指し、全国公募や大学に働き掛けて医師を確保する方針。ただ、医師確保のめどは立っていないという。

(静岡新聞、2009年4月11日)

****** 静岡新聞、2009年4月10日

新生児ICU新患休止、7月再開目指す 

県立こども病院

 県立こども病院(静岡市葵区漆山)のNICU(新生児集中治療室)が新規患者受け入れを当面休止する問題で、吉田隆実院長ら同病院幹部が10日午前、同病院で会見した。吉田院長は「本来、地域の医療機関を支える立場の当院がこのような事態になり大変申し訳ない」と陳謝し、医師確保に努めて6月いっぱい態勢を整え、7月から受け入れを再開したいとの考えを示した。

 新規患者受け入れは13日から休止する。同病院によると、NICUを担当する新生児未熟児科は常勤医6人の枠があるが、3月時点で常勤医5人と研修医2人が勤務。このうち、3月末に常勤医1人と研修医2人が退職。科長が4月1日付で異動となり、常勤医1人が4月半ばの退職の意思を示しているという。

 病院側は医師の退職が相次いだ原因について、勤務環境の厳しさが根底にあると指摘。科長の人事異動をめぐり、「新体制を取るための調整がうまくいかなったことも一因」との見方を示した。

 今後の診療体制については、県内に同病院を含み3施設ある総合周産期母子医療センターのうち、残る2施設に協力を要請し、了解を得たとした。また、すべての新生児の受け入れができなくなるわけではなく、1500グラム以上で、外科系や循環器系の患者は継続して受け入れるとした。

 一方、病院側の会見後、新生児未熟児科の現職医師が会見し、今回の事態は4月1日付で県立総合病院に移った同科長の人事異動が原因と指摘。病院側に責任があるとし、現状の体制では「診療は続けられない」と訴えた。

(静岡新聞、2009年4月10日)

****** 静岡第一テレビ、2009年4月10日

県立子ども病院NICU休止へ(静岡県)

 静岡市葵区にある県立こども病院がNICU・新生児集中治療室の新規患者の受け入れを当面休止することが分かった。静岡市葵区にある県立こども病院の「NICU」はほかの病院で診ることが難しい重い病気を持った新生児の治療などにあたる県中部で唯一の治療室。ここでの治療に当たる新生児未熟児科医が先月まで7人いたが今月半ば以降、退職や人事異動などで2人に減る見込みで、病院は今月13日から新生児未熟児科を休止し、新規患者を当面受け入れない方針を決めた。現在NICUに入院している患者とこの病院で産まれ、リスクの高い新生児は診療を継続する方針。病院は7月以降受け入れを再開できるよう努力したいと話している。

(静岡第一テレビ、2009年4月10日)

**** 静岡県立こども病院ホームページより
http://www.shizuoka-pho.jp/byouin/by-730/bosyu/shinnseiji.htm

新生児未熟児科 医師募集のお知らせ

 静岡県立こども病院では、新生児未熟児科医師を(常勤医師10人まで)増員するため、募集します。
 新生児未熟児医療に興味のある先生方の応募をお待ちしております。

 <特徴>
①静岡県中部において、地域に貢献する新生児医療を提供
②平成20年12月末に県内3番目の「総合周産期母子医療センター」に指定
③増員により各人の負担を軽減した勤務体制を目指す
④新生児・未熟児の領域を超えて、周産期センター、小児集中治療センター、循環器センターや外科系を始めとした全病院的な人的交流が可能

            静岡県立こども病院
            院 長 吉田 隆實

(静岡県立こども病院ホームページより)

****** 産経新聞、静岡、2008年12月28日

「県立こども病院」総合周産期母子センターに指定

 県医療健康局は県立こども病院(静岡市葵区漆山、243床)を総合周産期母子医療センターに指定した。指定は県内3カ所目で、県中部では初。これで県東部、中部、西部の各地域に同センターの整備が完了した。

 総合周産期母子医療センターは、高度な医療を必要とする重篤な患者に対応する3次医療機関で、地域の産科救急医などから搬送されるリスクの高い妊婦や新生児の受け入れ先となる。

(産経新聞、静岡、2008年12月28日)

****** 静岡新聞、2008年12月27日

県立こども病院、総合周産期母子医療センターに

 県は26日、妊娠・出産時の危険性が高い母親や胎児、新生児を常時受け入れる体制を整えた「総合周産期母子医療センター」に、県立こども病院(静岡市葵区、吉田隆実院長)を指定したと発表した。

 指定は25日付。県内の同センター指定は、伊豆の国市の順天堂大静岡病院、浜松市中区の聖隷浜松病院に次いで3カ所目。これで県東、中、西部それぞれへの同センター整備が実現した。

 同センターはハイリスクの母親らの受け入れのほか、地域周産期医療機関からの搬送受け入れ、周産期医療従事者への研修実施などの機能を果たす。指定を受けるには、母体・胎児集中治療管理室6床以上、新生児集中治療管理室9床以上の病床数基準や、産科医師と新生児科医師の常時勤務などの人員基準を満たす必要がある。

 指定により県内の周産期医療システムは一次医療機関である地域の診療所や助産所、二次機関の地域周産期母子医療センターか産科救急受入医療機関に指定されている18カ所の病院、三次機関の同センター3カ所の体制となる

(静岡新聞、2008年12月27日)

****** 静岡県ホームページより
http://www.pref.shizuoka.jp/governor/kensei/2008_09t/01_16.html

平成20年9月 県議会定例会
知事提案説明要旨

【1.当面する県政の諸課題】

(16)周産期医療体制の整備

次に、周産期医療体制の整備についてであります。

切迫早産や胎児異常などによるハイリスクの妊婦や新生児に対し、24時間体制で一貫した高度な医療を提供する総合周産期母子医療センターとして、母子・胎児集中治療管理室などの施設整備が完成した、東部地域の順天堂大学医学部附属静岡病院を、8月に新たに指定いたしました。

また、中部地域においては、施設改修が完了する県立こども病院を、本年中に指定する予定であり、既に指定している西部地域の聖隷浜松病院とあわせ県内3地域すべてに総合周産期母子医療センターが整備されることになります。

県といたしましては、これらのセンターを核に、地域の医療機関との連携により、県民の皆様がいつでも安心して出産していただけるよう、周産期医療体制の一層の充実を図ってまいります。

(静岡県ホームページより)


常勤の産婦人科医が着任 国立長野 (医療タイムス)

2009年04月06日 | 地域周産期医療

コメント(私見):

「上小医療圏」(人口:約22万人)では、年間の分娩件数が約1800件あり、その中には一定頻度のハイリスク妊娠や異常分娩が含まれます。現時点では、それらの異常症例の多くが、篠ノ井総合病院や佐久総合病院など近隣医療圏の2次病院に搬送されています。

上小医療圏で必要とされる周産期2次医療提供体制を構築するためには、長野病院の産婦人科、小児科、麻酔科の常勤医を、それぞれ最低でも4~5人づつ配置する必要があると考えられますが、今の御時世でいきなりそれだけの専門医を集めるのは至難の業です。

また、年間約450件の分娩を取り扱っていた小諸厚生病院が突然、今月より分娩の取り扱いを休止したことも重なり、篠ノ井総合病院や佐久総合病院などの負担はますます増大する一方の状況にあるようです。

このまま放置すれば、早晩、周辺の医療圏も巻き込んで、東北信地域の周産期2次医療提供体制が総崩れとなってしまうことも危惧されます。

従って、現時点においては、篠ノ井総合病院や佐久総合病院などの周辺医療圏の2次病院の人員を強化することが緊急の最重要課題と考えられます。

****** 医療タイムス、長野、2009年4月3日

常勤の産婦人科医が着任 国立長野

 国立病院機構長野病院産婦人科の常勤医として斉藤要氏が1日付で着任した。斉藤氏は当面、上田市産院を手伝いながら週3日、婦人科外来を担当する。同院は同日、助産師外来も開設した。

 同院では、4人の産婦人科医を派遣していた昭和大が段階的に医師を引き揚げたため分娩を休止。昨年8月以降は医師1人が残り、3月末まで婦人科の外来診療のみを行っていた。

 斉藤氏は月・水・木曜日を担当。金曜日は、前市産院長で諏訪中央病院産婦人科の甲藤一男氏が外来診療に当たる。

 常勤医が確保できたことで、現在、上小地域から県厚生連篠ノ井総合・佐久総合の両病院などに通っている妊婦についても、分娩先が確保され、主治医の了解がえられれば、同院で検診を受けられるようにしていくという。

 また、斉藤氏は市産院では非常勤として、月曜日の当直、火曜日の外来、木曜日の当直、金曜日の外来を手伝う。これで市産院は常勤医1人、非常勤医3人の体制となり、昨年度の分娩件数479件程度は、維持できるとしている。

 同院は、引き続き産婦人科医の確保に努め、分娩の再開を目指す。

(医療タイムス、長野、2009年4月3日)


後期研修医の新規採用状況

2009年03月31日 | 地域周産期医療

どうやら今春は、産婦人科の後期研修医が増加傾向にあるような気配です。産科医療に対する逆風が吹き荒れて、産婦人科医が減少し続けて、全国的にお産難民が大量発生しそうな状況となってきて、『何とかして産婦人科医を増やさないことには、もはやどうにもならないぞ!』という国民的なコンセンサスが形成されつつあるように感じます。今春は当科も新人後期研修医を迎えることができました。新人の若い先生たちが、途中でドロップアウトしないで、数年後には県内各地の産科の医療現場で目を輝かせて大活躍しているように、我々ロートルも彼らと共に頑張って成長していきたいと思います。

長野県内の後期研修医新規採用状況:

信州大病院:54人(産婦人科:8人、循環器内科:8人、整形外科:8人、内科第2:6人、内科第3:3人、小児科:3人、放射線科:3人、脳神経外科:3人、内科第1:2人、外科:3人、耳鼻咽喉科:2人、臨床検査部:1人、麻酔科蘇生科:1人、形成外科:1人、泌尿器科:1人、皮膚科:0人、高度救命救急センター:0人など)

県厚生連佐久総合病院:13人(内科:3人、地域医療部3人など)

長野赤十字病院:8人(循環器内科など8診療科)

相澤病院:7人(外科:2人、消化器内科2人など)

諏訪中央病院:5人

飯田市立病院:3人(産婦人科:1人、内科:1人、麻酔科:1人)

県厚生連篠ノ井総合病院:3人(産婦人科:1人など)

県厚生連安曇総合病院:3人(精神科:1人、整形外科:1人、内科:1人)

諏訪赤十字病院:2人(循環器科:1人、消化器科:1人)


栃木県の産科医療(佐野厚生総合病院、国立病院機構栃木病院)

2009年03月29日 | 地域周産期医療

****** 毎日新聞、栃木、2009年3月31日

佐野厚生総合病院:12月から産科休止 

周産期医療機関、栃木病院も返上

 リスクの高い妊娠に対応する地域周産期医療機関に認定されている佐野厚生総合病院(佐野市)が、12月から産科を休止することが分かった。また、国立病院機構栃木病院(宇都宮市)も2月に地域周産期医療機関の認定を県に返上していたことが分かった。07年の分娩(ぶんべん)数は、佐野厚生総合病院は540件、国立栃木病院は135件に上る。いずれも産科医の不足による対応で、地域の産科医療に深刻な影響を及ぼしそうだ。

 佐野厚生総合病院は現在3人いる産科医が4月から2人に減る。11月まで予約が入っている分娩には対応するが、それ以降の新規出産は受け入れない。国立栃木病院も医師が減少し、産科は継続するもののハイリスク分娩には対応しない。

 県医事厚生課によると、07年の県内医療機関での分娩は1万8335件。最も多いのは済生会宇都宮病院(宇都宮市)で1248件に上る。

 比較的高度な医療設備とスタッフを抱え、異常妊娠に対応する地域周産期医療機関に認定されているのは、08年度で県内8病院。両病院の産科休止や認定返上により、認定病院は6病院に減り、宇都宮市内では済生会宇都宮病院、両毛地域では足利赤十字病院(足利市)のみになる。【葛西大博】

(毎日新聞、栃木、2009年3月31日)

****** 読売新聞、栃木、2009年3月28日

周産期医療センター 国立栃木認定返上

佐野厚生総合、出産休止へ

 母体や胎児へのリスクが高い出産に対応する「地域周産期母子医療センター」が、現在の8病院から2減となる見通しであることが27日、わかった。国立病院機構栃木病院(宇都宮市中戸祭)が認定の返上を県に申し出たほか、佐野厚生総合病院(佐野市堀米町)が11月末で出産の扱いを休止する方針。いずれも医師不足を理由に挙げている。今後、緊急時や県南部の出産受け入れ体制に大きな影響が出る可能性がある。

 県によると、国立栃木病院は現在2人いる産科常勤医が4月から1人となる見込みで、「医師不足のためハイリスク分娩に対応できない」と2月に返上の申し入れがあった。

 認定返上は2007年11月の佐野市民病院、宇都宮社会保険病院に続いて3件目。

 佐野厚生総合病院は、現在入っている11月までの予約には対応するが、新規の出産受け入れは休止する。同病院によると、2007年度に5人いた産科常勤医が08年度に3人に減少。3月末にはさらに1人が退職することになり、休止を決断したという。今後、新たな医師を確保できない場合は「センター認定を返上するしかない」と話している。

 それぞれの病院の認定返上、出産休止は、27日に開かれた県周産期医療協議会で報告された。

 国立栃木病院は、07年度から出産受け入れを縮小している。

 一方、佐野厚生総合病院は年間約400件の出産を扱っており、佐野市内で出産を扱う医療機関3か所のうち救急搬送に対応できるのは同病院だけ。周辺の病院が受け入れを大幅に拡大しなければ、地元で出産施設が見つからない「お産難民」が発生する可能性もある。

 協議会では、「小児救急や高度な周産期医療を担う足利赤十字病院の負担増は避けられないのではないか」と懸念する声が上がった。

(読売新聞、栃木、2009年3月28日)

****** 下野新聞、2009年3月28日

佐野厚生病院、12月から産科休止 周産期機関返上へ

 合併症などリスクの高い妊婦を受け入れる地域周産期医療機関に認定された佐野厚生総合病院(佐野市)が十二月から産科を休止する方針であることが二十七日、分かった。現在三人の産科常勤医が四月から二人に減るためで、十一月までのお産と産科救急も当面対応する予定という。出産前後の周産期医療体制を支える地域拠点病院がこのまま離脱すれば、弱体化は必至だ。

 同日の県周産期医療協議会で病院関係者が報告した。

 下野新聞社の取材に対し、現在診療している妊婦は責任を持ってお産まで担当するが、四月以降に常勤医が三人に戻らなければ、十一月いっぱいでお産を休止せざるを得ないという。

 佐野厚生のお産件数は、年間四百件近くに上る。産科救急は四月から対応できる範囲が縮小する見通し。また地域周産期医療機関の認定も産科が休止すれば、返上するという。

 県保健福祉部によると、県内でお産に対応する医療機関は減少する一方。三年前には五十カ所だったが、昨年四月には下都賀総合病院(栃木市)のお産休止などで四十四カ所に減った。

 地域拠点病院も今年二月に国立病院機構栃木病院(宇都宮市)が地域周産期医療機関の認定返上を申し出たばかりだった。

 県保健福祉部の担当者は「きょう初めて聞き、えっと思った。救急の対応など今後の状況を、きちんと確認したい」と、驚きを隠さなかった。

(下野新聞、2009年3月28日)

****** 下野新聞、2009年4月6日

周産期搬送受け入れ改善 「3回以上拒否」減少 県内08年

 出産前後の周産期救急搬送で、県内医療機関に三回以上受け入れを断られた事例は2008年1年間に9件あったが、前年(12件)より改善したことが5日までの、県消防防災課の調査で分かった。受け入れ円滑化を目指した周産期医療連携センター事業が一定の効果を挙げた、と同課はみている。しかし医療機関が断った最多回数は前年(5回)を上回る7回。かかりつけ医のいない「飛び込み出産」が、救急搬送を難しくしている実態が県内でも顕在化した。

 周産期の救急搬送は08年一年間で236件。うち3回断られたのが計6件で4、5、7回は各1件だった。

 最多の7回断られた事例は、小山市消防本部管内で起きた。女性は腹痛を訴えたが、救急隊は明らかな陣痛と判断。かかりつけ医はなく、近くの産科医療機関に照会したが、受け入れ先は見つからない。結局、最後のとりでの総合周産期母子医療センターを置く大学病院に搬送した。駆け付けた救急車が現場から動けず、最長の一時間待機した事例も、かかりつけ医がいなかった。

 鹿沼市の30代女性が昨年4月、自宅で出産。搬送先が見つからない上、へその緒の処置などでも時間がかかった。最終的に赤ちゃんと共に別の大学病院に搬送された。こうした飛び込み出産は「妊娠週数が分からず、感染症や母体の合併症、未熟児などの問題もあり、地域の病院で受け入れにくい」と、大学病院関係者は指摘する。

 奈良県で07年夏、妊婦の受け入れ先が見つからず、救急車内で死産したのも同様の事例だ。

 県内市町は無料で妊婦健診が受けられるよう公費負担の回数を引き上げ、国も08年度第2次補正予算で出産までに必要な計14回分を財政措置した。

 だが別の大学病院関係者は「お産なんて陣痛が来たら、どこかで産める、と考える人に妊婦健診の公費負担が何回でも関係ない」と悲観的だ。

(下野新聞、2009年4月6日)


愛育病院、日赤医療センター: 労働基準法違反で是正勧告

2009年03月26日 | 地域周産期医療

コメント(私見):

日赤医療センターの産科常勤医は24人、愛育病院の産科常勤医は15人とのことですが、それでも労働基準法を遵守するような勤務体制を維持するのは難しく、労働基準法違反で是正勧告を受けたとの報道です。

地方の病院で、産科の常勤医数が2桁というのは、大学病院以外ではあまり聞いたことがありません。少ない常勤医を何とか綱渡り的にやりくりして、周産期医療提供体制をギリギリで維持している病院がほとんどです。労働環境は、一人医長が多かった時代と比べると徐々に改善されつつありますが、多くの病院が労働基準法遵守には未だに程遠いと思われます。

****** 産経新聞、2009年3月28日

愛育病院の「指定返上」波紋広がる 

医師不足と労基法の溝深く

 リスクの高い妊婦を24時間体制で受け入れる「総合周産期母子医療センター」の指定を受けている愛育病院(東京都港区)が、指定返上を都に打診した問題について、波紋が広がっている。返上の理由は労働基準監督署から医師らを長時間働かせた労働基準法違反で是正勧告を受けたため。周産期医療の維持が、過酷な医師の勤務実態の上に成り立っていることを改めて浮き彫りにした格好で、病院側は「国が医師の労働環境を改善しないのに、労基法を守れというのには無理がある」と訴えている。

 24日夕、愛育病院から都に一本の電話が入った。「総合周産期母子医療センターから地域周産期母子医療センターの指定に変更したい」。「総合」の指定返上をこう切り出した。

 都の基準では「総合」は新生児集中治療室(NICU)などを備え、24時間体制で複数の産科医が勤務することが必要。一方、「地域」では夜間、休日での複数医師勤務は求められていない。

 同病院によると、15人の産科医のうち4人が子育てなどのため夜間勤務ができないという。三田労基署は17日、労働基準法に基づく労使協定を結ばず、医師に長時間労働をさせていたとして、是正を勧告。病院側は「各医師に法定の労働時間を守らせると、常勤医師1人を含む医師2人による当直は難しい」と判断したのだ。

 「搬送調整など他病院が代わりを務めることは難しい」。都は26日、愛育病院に対して「総合」の指定継続を求めた。

 愛育病院は、周産期医療のあり方などを検討する「都周産期医療協議会」のメンバーだ。都内の周産期医療体制について熟知しているだけに「指定返上」の打診は医療関係者の間でさまざまな憶測を呼んだ。

 愛育病院の中林正雄院長は記者会見で、「産科医不足の中では国からの資金支援などがなければ、病院側も産科医の過酷な労働環境を改善することはできない。悪条件が改善されないのに労基法だけを守れというのは現実的ではない」と反発した。

 愛育病院側は現在、都の意向を受け、条件付きで指定継続を検討しているが、「社会全体で周産期医療のあり方について考えてほしい」(中林院長)と訴えている。

 労働基準法に詳しい伊藤博義・宮城教育大名誉教授は「労働基準法を守れないほど長時間労働をしなければならない医療現場の実情に対し、行政側も自らの責任について考え、対応していく必要がある」と話した。

(産経新聞、2009年3月28日)

****** 読売新聞、2009年3月27日

当直医非常勤だけの日も

5月から、愛育病院 

 重症妊産婦や新生児の緊急治療にあたる「総合周産期母子医療センター」に指定されている愛育病院(港区)は26日、これまで常勤医が必ず勤務していた夜間の当直業務について、5月からは非常勤の医師だけの日が生じると発表した。都は「要件を満たしている」としており、同病院は今後も、総合周産期センターとして継続する見通し。

 発表によると、同病院は今月17日、三田労働基準監督署から、医師の当直について、「宿直」ではなく、「残業」として扱うよう、是正勧告を受けた。勧告に従うと、残業時間に上限があるため、常勤医が当直できない日が出るという。

 同病院は、秋篠宮妃紀子さまが、悠仁さまを出産されるなど、設備の整った専門病院として知られる。

(読売新聞、2009年3月27日)

****** 毎日新聞、2009年3月27日

東京・愛育病院:「周産期」指定返上打診 継続含め検討--会見

 東京都の総合周産期母子医療センターの指定を受けている愛育病院(東京都港区)が指定返上を都に打診した問題で、同病院は26日、都や都周産期医療協議会の回答を待って、継続も含め今後の対応を決めると発表した。

 愛育病院は夜間、常勤医と非常勤医の2人体制で対応している。勤務実態の改善を求めた三田労働基準監督署の是正勧告に基づく対応を取ると、常勤医が足らないケースが生じる。救命救急センターもなく、総合周産期母子医療センターの継続は難しいと判断した。

 会見した中林正雄病院長は「悪条件が改善されないのに、労働基準法だけを守れと言うのは現実的でない。人を増やして過重労働をなくすような対策のロードマップ(道筋)を行政が作ってほしい」と訴えた。【河内敏康】

(毎日新聞、2009年3月27日)

****** ロハス・メディカル、2009年3月26日

(速報)日赤医療センターにも是正勧告

 東京都渋谷区の日赤医療センター(幕内雅敏院長)が、渋谷労働基準監督署から、36協定を締結していないことなどを理由に、労働基準法違反で是正勧告を受けていたことが分かった。同センターは、心臓病など緊急の救命処置が必要な妊婦を必ず受け入れることを目的に、東京都から指定を受けた3つの「スーパー総合周産期センター」の1つで、今月25日から稼働が始まったところだ。愛育病院が是正勧告を受けたことに続き、全国的にも注目を集めている「スーパーセンター」にも同様の指摘が入ったことで、都の周産期医療体制の維持を危ぶむ声も上がっている。【熊田梨恵】

 同センターは今月13日、36協定を締結していなかったことや職員の休憩時間が短かったこと、昨年10月に研修医の宿直業務について時間外労働時間に対する割増賃金を払っていなかったことの3点について労基署から指摘を受けており、改善を求められていた。同センターはこの指摘について、36協定については職員代表と既に合意できているとして4月中に締結し、休憩時間についても就業規則を改定して対応するとしている。また、研修医の時間外労働時間の割増賃金については4月の給料日に振込みを予定しているという。労基署への改善報告の期日は特に指定されていないが、病院側の対応が整い次第順次報告し、4月半ばには対応を終えるとしている。

 今回の是正勧告については、「『スーパー総合』が始まるのに、労基法を遵守できるような体制が取れるのか」と危惧を示す病院関係者もいるものの、同センターの竹下修管理局長は、「今回の勧告についてはすべて対応できる。(同センターに)医師が多過ぎるということはないが、潤沢に働いていただいていると思うので、『スーパー総合周産期センター』としてやっていくことに、今回の件が影響するとは思わない」と話している。同院の産科医は研修医を含めて24人。

 「スーパー総合周産期センター」は、国内で相次いだ妊婦の救急受け入れ不能問題の解消を図るために東京都が今月25日から始めたシステム。脳や心臓に重篤な疾患があるなど緊急の救命処置が必要な妊婦に限定して、指定を受けた3つの総合周産期母子医療センターが輪番を敷き、24時間体制で受け入れる。地域の周産期医療ネットワークでの受け入れが難しい場合、かかりつけ医などが東京消防庁を通じて受け入れを要請する仕組みだ。同センターのほか、昭和大病院(品川区)、日大医学部附属板橋病院(板橋区)が指定を受けており、全国の医療関係者から注目を集めている。

 稼動初日となった25日は、日赤医療センターが午前9時から翌朝9時までを受け持った。「スーパー総合周産期センター」の受け入れに該当する搬送ケースはなかったという。

 日赤医療センターは、総合周産期母子医療センターの指定を受けており、年間分娩件数は約2500件。総病床数は733床で、このうち新生児集中治療管理室(NICU)は12床、母体・胎児集中治療室(MFICU)は6床。

(ロハス・メディカル、2009年3月26日)

**** m3.com医療維新、2009年3月26日

「法令違反」と言われては現場のモチベーションは維持できず 愛育病院院長と事務部長が労基署による是正勧告で取材に応じる

 3月26日、愛育病院(東京都港区)院長の中林正雄氏と、事務部長の大西三善氏は、今回の労働基準監督署による是正勧告の件でm3.comの取材に応じた。また、16時か ら報道各社へ向けた合同説明会が開かれた。ポイントは以下の通り。

労働基準監督署勧告の経緯と問題点

 大西氏によると、労基署による最初の調査があったのは今年1月20日。労基署は、医師の勤務体制(特に当直とその翌日の勤務)、看護職員の勤務体制について、一部の医師 の勤務予定表と実施表、給与台帳、時間外・休日労働に関する協定(36協定)などの資料を持ち帰った。2月19日に再調査が行われ、全医師の2008年12月分給与と11 月分の勤務実態、手当ての支払い状況などを確認し、それらの内容を踏まえて3月17日に愛育病院への是正勧告・指導がなされた。
労基署より指摘があったのは、主に以下の点。

◎医師の時間外労働について、36協定が締結されていなかった
 愛育病院でも、36協定そのものは締結されていた。しかし、時間外労働の規定があったのは医師を除く他の職種のみだった。この理由について、大西氏は「事務手続きのミス」と説明している。

◎時間外労働、休日労働が法定基準を超えていた
 総合周産期母子医療センターは、常時複数の医師がいることが要件となっている。愛育病院では、常勤医1人、非常勤医1人、オンコール1人という夜間体制を取っている。
 現在愛育病院の産科常勤医は15人。しかし、このうち女性医師5人は、現在、妊娠・出産・育児のため、時間外勤務を免除されている。さらに1人は厚生労働省の要請を受けて福島県の病院に出向しており、もう1人は専門医取得のため現在他院で研修中だった。院長、部長、医長、後期研修医などを除くと、事実上5人の常勤医が当直を担っており、それらの医師の時間外勤務が法定の時間を超過していた。ただし、中林氏は、「一時的にオーバーワークが出てしまったものであり、常態的なものではない」と説明している。
 また、検査技師1人についても、36協定で合意された時間外勤務時間を超過した月が1カ月あった。

◎時間外勤務についての割増賃金が支払われていなかった
 労基署の見解では、当直とは夜間の見回り程度の宿直業務であり、原則として睡眠時間が確保される状態のもの。しかし、周産期医療現場では夜を徹して分娩などの医療行為に当たることが常態であると言える。この点について労基署は、当該業務は事実上、宿直ではなく夜間勤務であるとし、それに伴う時間外勤務への賃金を支払うよう求めた。
 なお、愛育病院では、「当直手当」は支払っていた。金額は、対応した母体搬送数、分娩数などにより3万-6万円。一方、法定の時間外割増賃金(基準賃金の25%増)では、中堅-上級クラスの医師では8万-9万円になる見込みだという。

“看板”が外れても、病院には特段の問題なし

 労基署の是正勧告を受け、3月25日、愛育病院は東京都に総合周産期母子医療センター(以下「総合周産期センター」)の指定返上を打診した。理由は2つ。(1)総合周産 期センターの要件では、常時複数の医師を置くことが必要である。しかし、労基署の是正勧告に従うと、常勤医がすべての当直に加わることはできず、非常勤医2人での当直体制 (その場合オンコールを2人とすることを検討)となる日も生じる、 (2)東京都には総合周産期センターは9施設あるが、愛育病院以外はすべて大学病院などの総合病院で、救命救急センターなども併設されている。そのような機能のない愛育病 院は、総合周産期センターとして適切か否か、という点。

 中林氏は「地域の周産期医療を担う病院のduty(義務)として一生懸命やっている状況を『法令に反している』と言われては、現場のモチベーションが維持できない」と語 る。「法定基準は将来的には適正に守れるようにすべき。しかし、現在のように赤字の病院が多い、産科医療に携わる医師も不足している、という状況で、すべてを一度に解決す るのは不可能。実態に合うよう法の弾力的解釈を行いつつ、中長期的な解決が図られるよう全国的な問題として行政にきちんと取り組んでもらいたい」と要望した。

 総合周産期センターという“看板”については「どちらでも良いと考えている」という。「総合周産期センターを返上し、地域周産期センターとなった場合も、現在行っている医療の質を落とすわけではなく、実質的な変化はない。しかし、規制が外れる分、より柔軟な対応が可能になるとは思う。当院から『こうしたい』と言うことはできない。このような状況でも“総合”としてやっていった方が良いと東京都が判断するのであれば、続けないわけにはいかない」と述べた。なお、地域周産期センターとなった場合でも、NICUの病床数などは減らさない考えを示している。経営的な面でも、総合周産期センターには年間約2000万円の補助金が支給されているが、診療報酬による加算などを含めて試算しても全体で1000万円程度の減収であり、分娩費用が60万-70万円と他施設よりも高い愛育病院は、「分娩費用を1万円上げれば十分賄える」という。

 今日(26日)の午後、東京都からは「(総合周産期センターを)続けてもらいたい」との意向が伝えられたとのこと。中林氏は、「“担当部長の意向”だけでは、今後 人事移動などにより判断が変わる可能性もある。周産期医療協議会で検討を行った上、文書で回答をいただきたい」としている。

(m3.com医療維新、2009年3月26日)

****** 時事通信、2009年3月26日

愛育病院が返上申請=総合周産期センター指定-医師不足、労基署勧告に従えず

 リスクの高い妊婦に24時間対応する「総合周産期母子医療センター」に指定されている愛育病院(東京都港区)が、東京都に指定の返上を申し出ていたことが26日、分かった。医師の勤務状況について労働基準監督署から是正勧告を受けており、勧告に沿って医師の勤務時間を減らした場合、総合センターの要件である複数当直体制を維持できないと判断した。

 医師の過重労働に支えられている産科医療の実態が浮き彫りになった形。総合センターでなくなると、地域の救急患者受け入れなどに影響が出かねず、都と協議を続けている。

(時事通信、2009年3月26日)

****** 朝日新聞、2009年3月26日

愛育病院が総合周産期センター返上申し出 当直維持困難

 危険の大きい出産に24時間態勢で対応する総合周産期母子医療センターに東京都から指定されている愛育病院(港区)が、都に指定の返上を申し出たことがわかった。今月中旬、三田労働基準監督署から受けた医師の勤務条件についての是正勧告に応じるためには、医師の勤務時間を減らす必要があり、総合センターに求められる態勢が確保できないと判断した。

 総合センターでなくなると、救急の妊婦の受け入れが制約されたり、近隣の医療機関の負担が増したりするおそれがある。都は愛育病院に再検討を求めている。厚生労働省によると、総合センターの指定辞退を申し出るケースは初めてという。医師の過重労働で支えられている周産期医療の実情が露呈した形だ。

 病院関係者によると、三田労基署から、医師の勤務実態が労働基準法違反に当たるとする是正勧告書を受け取った。勧告書は、時間外労働に関する労使協定を結ばずに医師に時間外労働をさせ、必要な休息時間や休日、割増賃金を与えていないと指摘。4月20日までに改善するよう求めている。

 愛育病院は、同法などに沿って時間外勤務の上限を守るには、現在の人員では総合センターに求められる産科医2人と新生児科医1人の当直を維持できないため、指定を返上することにした。

 同病院は周産期医療が中心。99年4月に総合センターに指定された。常勤の産科医は昨年10月現在で研修医も含め14人、新生児科医7人。年間千数百件の出産を扱う。「自然出産」がモットーで、皇室との関係が深く、皇族や有名人の出産も多い。

 病院関係者は「勧告に沿うには医師を増やすしかないが、月末までに新たに医師を探すのは不可能。外来だけしかできなくなる恐れもある」と話す。

 都は25日、「労基署の勧告について誤解があるのではないか。当直中の睡眠時間などは時間外勤務に入れる必要はないはず。勧告の解釈を再検討すれば産科当直2人は可能」と病院に再考を求めた。

 東京都では昨年10月、脳出血の妊婦が8病院に受け入れを断られ、死亡した問題があった。都は「ぎりぎりの態勢で保っている周産期医療のネットワークが揺らぎかねない」と衝撃を受けている。

 一方、同様に総合センターに指定されている日赤医療センター(渋谷区)も渋谷労基署の是正勧告を受け、労使協定などの準備を急いでいる。【大岩ゆり、大隈崇】

(朝日新聞、2009年3月26日)

****** 毎日新聞、2009年3月26日

総合周産期母子医療センター:東京・愛育病院が「指定返上」

 東京都港区の愛育病院(中林正雄院長)が、都の総合周産期母子医療センターの指定を返上すると都に申し入れたことが25日分かった。労働基準監督署が、医師らの夜間の勤務体制について是正勧告したのを受け、「改善は難しく、センター機能を継続することは困難」と判断した。【河内敏康、江畑佳明、永山悦子】

 ◇労基署は勤務改善と言うが… 医師数足りず現状維持が限界

 申し入れの背景には、危険性の高い妊産婦に対応する医師の人手不足がある。現在、都と病院の間で指定解除を回避する協議が続いているが、実際に指定が解除されれば全国初。同様に人手不足の事情を抱える全国の他のセンターにも影響が及びそうだ。

 愛育病院によると、三田労働基準監督署が1月、同病院の勤務実態を調査。今月17日、労働基準法に基づく是正勧告を出した。勧告は、医師が労基法上の労働時間(週最大44時間)を大幅に超えて働く実態や、夜間勤務中の睡眠時間を確保していないなど適切な勤務体制を取っていないことに改善を求めた。

 99年に同センターの指定を受けた愛育病院は、センター機能を確保するため、夜間は2人体制で対応してきた。

 しかし労基署は「夜間も昼間同様の勤務実態がある」として、要員増の必要性を指摘。これに対して愛育病院は「夜間勤務が可能な常勤医師は5人しかおらず、労基署が求める体制は難しい。現在と同水準での夜間受け入れが継続できないので、センター指定の返上を決めた」と話す。

 都は「労基署は『こうしたらいい』と求めているのであって、センターの看板を下ろすほどではない。今後も協議を続けたい」と話している。

 愛育病院は恩賜財団母子愛育会が運営し、38年開業。皇室とのゆかりが深く、06年には秋篠宮妃紀子さまが長男悠仁さまを出産した。

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 ■解説

 ◇現場負担、放置のツケ

 愛育病院が、妊産婦や新生児にとって「最後のとりで」である総合周産期母子医療センター指定の返上を東京都に申し入れた問題は、安心な医療体制を維持しようとすれば労働基準法を守れない過酷な医師の勤務実態を浮き彫りにした。

 多くの産科施設では医師の夜間勤務を、労基法上は労働時間とみなさない「宿直」としている。宿直とは巡回などの軽い業務で、睡眠も取れる。だが実際の夜間勤務は、緊急の帝王切開手術をするなど日中の勤務と変わらない。厚生労働省は02年3月、こうした実態の改善を求める局長通達を出していた。

 しかし、全国周産期医療連絡協議会が08年、全国の同センターを対象に実施した調査では、97%が「宿直制」をとっていた。77%は夜間勤務明けの医師が翌日夜まで勤務し、翌日を「原則休日」としているのはわずか7%しかなかった。

 労基法を守ろうとすれば、医師を増やし、日勤-夜勤で交代する体制を実現するしかないが、産科医は減り続けている。06年末の厚労省の調査では、産婦人科医は1万1783人で、96年から約12%減っている。全国の同センターも、少ない医師でやりくりせざるをえないのが実情だ。愛育病院のような動きが広がれば、日本の周産期医療は崩壊の危機に直面する。

 産科の医療体制整備に詳しい海野信也・北里大教授は「医療現場は患者に迷惑をかけないように無理してきたが、労基署の勧告は『医療現場に過度の負担をかけるべきではない』との指摘だ。事態を放置してきた国の責任は重い」と批判する。【河内敏康、永山悦子】

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 ■ことば

 ◇総合周産期母子医療センター

 危険度の高い出産の「最後のとりで」として、未熟児や新生児、母体の救命を目的に設置された産科施設。母体・胎児集中治療室(MFICU)や、新生児集中治療室(NICU)を備え、複数の医師が24時間体制で患者を受け入れる。昨年8月現在、全国に75施設ある。

(毎日新聞、2009年3月26日)

****** 共同通信、2009年3月25日

「総合周産期」返上を打診  医師確保困難で愛育病院

 東京都から早産などハイリスクの妊産婦を24時間体制で受け入れる「総合周産期母子医療センター」に指定されている愛育病院(中林正雄院長)が、複数の医師による当直が困難なことなどから、都に指定の解除を打診したことが25日、都や病院への取材で分かった。

 愛育病院は必要な医師数が少なくて済む「地域周産期母子医療センター」への指定見直しを希望し24日、都に意向を伝えた。都は医療体制に大きな影響が出るため、病院側と協議している。

 愛育病院によると、15人の産科医のうち3人が子育てなどのため夜間勤務ができないという。

 今月中旬、三田労働基準監督署は労働基準法に基づく労使協定(三六協定)を結ばず、医師に長時間労働をさせていたとして、是正を勧告。これを受け病院側は「各医師に法定の労働時間を守らせると、医師2人による当直は難しい」(中林院長)と判断した。

(共同通信、2009年3月25日)


小諸厚生総合病院、4月以降の分娩の取扱いを休止

2009年03月23日 | 地域周産期医療

コメント(私見):

年間450件程度の分娩を取り扱っていた小諸厚生総合病院が、突然、来月以降の分娩の取り扱いを中止し、分娩予約していた妊婦さん達を周辺の医療機関に紹介し始めたそうです。

近隣の浅間総合病院において、産婦人科の常勤医数が倍増して6人体制に強化され、この4月より分娩取り扱い数を増やす予定との報道が最近ありました。また、分娩取り扱いを休止していた県立須坂病院も、産婦人科の常勤医が4人の体制になり、この4月から分娩の取扱いを再開するとの報道が最近ありました。

これらの近隣の医療機関とも協力し、地域の力を結集して、何とかこの未曾有の危機を乗り越えていっていただきたいと願っています。

佐久市立浅間総合病院:産科医6人に増強 分娩予約も月60件超--4月から

産科復興に向けた長野県各地域の取り組み

**** 医療タイムス、長野、2009年3月26日

4月以降の分娩一時休止 

小諸厚生総合病院

 県厚生連 小諸厚生総合病院(小泉陽一 院長)は、2人いる産婦人科医のうち1人が今月中旬から病気療養しているのに伴い、4月以降の分娩予約について佐久市内の病院などへの紹介を進めている。残る医師1人では、従来通りの分娩数に対応できないための緊急措置。

 こうした事態を受けて、佐久保健所は東信地方の産科関係の医療機関を集めて26日に同院で会合を開き、今後の対応の協議や情報交換などを行う予定だ。

 同院によると、4~9月の分娩予約は18日現在で168件あり、小諸市民が56人を占める。このうち、紹介によって転院が決まっているのは71人。転院先では県厚生連 佐久総合病院の41件が最も多く、浅間総合病院の20件、上田市内の医療機関など7件、県厚生連 篠ノ井総合病院3件と続く。

 同院は分娩を早期に再開したい考えだが、病気療養中の医師の復帰は、早くて数ヶ月後。医師の確保は、現時点でめどが立っていない。

 当面、産婦人科外来で新患や紹介患者の受け入れを休止するほか、第2・第4土曜日も休診とする。

(医療タイムス、2009年3月26日)

****** 信濃毎日新聞、2009年3月19日

小諸厚生総合病院、医師入院で出産扱い見合わせ

 県厚生連小諸厚生総合病院(小諸市)が、4月以降入っていた分娩(ぶんべん)予約の大半を断り、近隣医療機関への紹介を進めていることが18日、分かった。産婦人科医2人のうち1人が病気入院するなどしたため。出産受け入れ継続に向け病院は態勢づくりを急いでいるが、医師確保のめどは立っていない。

 同病院によると、医師は手術のため11日に入院。早ければ5月に復帰するが、すぐには従来のような受け入れはできない。残る1人だけでは正常分娩しか扱えず、負担を考えると時期的にも4月いっぱいが限度という。

 同病院が年間に扱う出産は450件前後。4月以降は9月までに168件の予約がある。外来に訪れた妊婦には事情を説明し、別の医療機関を紹介。18日までに、71人が佐久市立国保浅間総合病院や県厚生連佐久総合病院(佐久市)、同篠ノ井総合病院(長野市)などへ転院が決まった。ほかの妊婦にも順次連絡を入れている。

 佐久総合の産婦人科医は常勤5人、非常勤2人。基本的に予約制限は設けず、高リスクの出産も扱うため、余裕のない状態が続く。浅間総合は4月から産婦人科医が6人に倍増。分娩予約枠を月10件増やし60件にする予定で、一定の受け皿になる見通しだ。

 6月に小諸厚生総合で出産予定だったが、浅間総合へ転院する小諸市内の女性(32)は「産科はどこもいっぱいに近い。産むところがなかったらどうしようと思った」。小諸市内の産婦人科医院で出産すると決めた同市の女性(23)は「万一、リスクを伴う出産になったら怖い」と話す。

 小諸厚生総合の小泉陽一院長は「お産の数を制限する形ででも、再開に向けてできる限り努力したい」と説明。小林良清・県佐久保健所長は「東信地方の医療機関とともに、どう協力態勢がとれるか検討したい」としている。

(信濃毎日新聞、2009年3月19日)

****** 毎日新聞、長野、2009年3月20日

小諸厚生総合病院:医師不足で来月以降の分娩中止

 小諸市の小諸厚生総合病院(小泉陽一院長)が4月以降の分(ぶん)娩(べん)を中止していることが19日分かった。産婦人科医1人が病気で入院し、受け入れ態勢が整わなくなったためで、近隣病院へ分娩を紹介している。

 同病院は、産婦人科医2人で年間約450件の出産を扱っているが、今月上旬、体調不良で60歳代の産科医が休診し、医師1人では対応が難しくなった。

 このため、来月から9月分までの分娩予約168件について、佐久市立浅間総合病院など近隣病院に紹介。約70人が転院している。

 同病院は「医師の復帰後も従来の態勢がとれるか分からないが、新たな産科医確保を含め、再開に向け努力したい」と説明している。【藤澤正和】

(毎日新聞、長野、2009年3月20日)

****** 小諸市オフィシャルサイト

小諸厚生総合病院の産婦人科医療について

平成21年3月18日現在の情報をお知らせします。

 現在、JA長野厚生連小諸厚生総合病院の産婦人科については、医師の体調不良により初回受診の方、紹介状をお持ちの方の受診をお断りしております。

 平成21年5月以降の出産については、予約をされている方についても、紹介状を発行し、他の医療機関で出産予約をするようにご案内しております。

 現在、予約をされている方で、JA長野厚生連佐久総合病院、JA長野厚生連篠ノ井総合病院での出産予約を希望される場合は、小諸厚生総合病院の紹介状を持参しての受入れについてお願いすることとしています。その他の医療機関での出産予約を希望される場合は、希望される医療機関とご相談ください。

 詳細につきましては 小諸厚生総合病院 産婦人科外来 に平日の午後、お問い合わせください。

-お問い合わせ-
保健福祉部 保健課 小諸市保健センター
(保健課保健予防係)

小諸市オフィシャルサイト


帝王切開:周産期センター「30分で手術可能」3割

2009年03月08日 | 地域周産期医療

コメント(私見):

産科診療において、帝王切開の決定から30分以内に実施しなければならない「緊急帝王切開」は日常茶飯事です。しかし、産婦人科医、小児科医、麻酔科医、手術室看護師などが院内に不在で、スタッフを自宅から呼び出さねばならないような場合だと、「帝王切開の方針決定から児娩出までに30分以内」を常に達成することは不可能です。当院でも、平日の日勤帯(昼間)ならば、「必要とあらば30分以内に帝王切開を実施する」のが努力目標となってますが、平日の時間外や休日では、「方針決定から30分以内で児娩出」を常に達成するのは不可能です。

ところが現実には、「緊急帝王切開」の中でも特に緊急性の高い「超緊急帝王切開」も時にあり得ます。「超緊急帝王切開」とは、方針決定後、他の要件を一切考慮することなく、全身麻酔下で直ちに手術を開始し、一刻も早い児の娩出をはかる帝王切開術です。

当院では、産科担当医が「超緊急帝王切開」が必要と判断した場合は、方針決定と同時に、直ちに患者さんを手術室に搬送し、全館放送の緊急呼出しで、院内にいる産婦人科医、小児科医、麻酔科医および手術室勤務の経験があるスタッフを直ちに手術室に召集し、できる限り早く手術を開始する手順が一応決まっています。

当院の場合、例年だと「超緊急帝王切開」はせいぜい年に2~3例程度ですが、今年は年初の2ヶ月間だけで、「超緊急帝王切開」扱いになった症例がすでに2例も発生しました。たまたま運よく2例とも、複数の産婦人科医、小児科医、麻酔科医が院内にいる時間帯で、大勢のスタッフが直ちに手術室に結集し、方針決定から児娩出までおおむね15分以内でした。

「超緊急帝王切開」の症例(臍帯脱出、子宮破裂など)では、帝王切開の方針決定から児娩出までに30分もかかっているようでは完全に手遅れになってしまう場合もあり得ます。「超緊急帝王切開」例で、方針決定から児娩出までに要する時間の主な決定因子は、『産科病棟から手術室へ患者さんを移送するのに要する時間』です。したがって、将来的には、「分娩室で全身麻酔下の帝王切開を実施できるようにすること」、あるいは、「産科病棟と手術室とを隣接させること」などを検討する必要があるのかもしれません。

****** 毎日新聞、2009年3月5日

帝王切開:周産期センター「30分で手術可能」3割

 全国の周産期母子医療センターの約3分の2が、国の整備指針に反して「(必要と診断されてから)30分以内の帝王切開手術」に対応できない場合があることが、厚生労働省研究班(主任研究者、池田智明・国立循環器病センター周産期科部長)の調査で分かった。産科医よりも麻酔科医の不足がネックになっており、厚労省が年度内に見直すセンターの指定基準に麻酔科医の定員を明記するよう求める声が出ている。

 調査は昨年3月、全国の総合周産期センターと地域周産期センターに行い、130施設の回答を調べた。

 国の指針では、地域センターは30分以内に帝王切開ができる人員配置、総合センターにはそれ以上の対応を求めている。だが「いつでも対応可能」と回答したのは総合センターの47%、地域センターの28%にとどまり、48%は「昼間なら対応可能」、17%は「ほぼ不可能」と答えた。

 対応が遅れる最大の理由は「手術室の確保」(43%)だったが、人的要因のトップは「麻酔科医不足」(25%)で、「産科医不足」(17%)、「看護師不足」(14%)より多かった。54%の施設は当直の麻酔科医がおらず、緊急の帝王切開では執刀の産科医が麻酔もかけているセンターが16%あった。

 麻酔科は産科、外科などと並び医師不足が深刻とされるが、帝王切開で通常かける麻酔の診療報酬が全身麻酔の場合より著しく低いため、特に周産期医療の現場に集まりにくいとの指摘がある。

(以下略)

(毎日新聞、2009年3月5日)


日立製作所日立総合病院(日製病院)、地域周産期母子医療センターを休止

2009年03月04日 | 地域周産期医療

コメント(私見):

日立製作所日立総合病院(日製病院)・産婦人科の常勤医が若手1人だけとなってしまうため、来月から地域周産期母子医療センターを休止することが公表されました。これにともない、新生児科医も順次引き揚げられるとのことです。

院内助産所の開設も検討されましたが、産婦人科医の常勤医が1人だけでは対応が難しいということで、結局は院内助産所の開設を断念したようです。

さらに、この地域の産科1次施設(診療所、助産所など)での分娩取り扱いの維持が、今後だんだん厳しくなっていくことも危惧されます。

日立製作所日立総合病院:産科医1人が残留 分娩を継続へ (毎日新聞)

医師確保険しく 来春産科医0の日製病院

日立総合病院 分娩予約一時中止

****** 朝日新聞、茨城、2009年3月3日

日製病院、周産期センターを休止

 日立製作所日立総合病院は4月以降の当分の間、周産期センターを休止すると2日発表した。産婦人科医4人を派遣している東京大が今月末で3人を引き揚げ、産婦人科医が1人になるためだ。また、新生児科でも、医師3人を派遣している筑波大が5月末までに全員を別の病院に移すため、日製病院のNICU(新生児集中治療室)の機能は事実上停止する。

 医師確保のめどがたたないとして、昨年8月に踏み切った新規分娩の受け付け中止は続ける。医師が確保でき次第、開設する予定だった正常分娩対応の院内助産所は先送りされた。

 懸念される県北での産婦人科や新生児科の救急対応については、水戸済生会と県立こども病院が引き受ける。すでに両病院は「限界」に近い患者を引き受けており、負担はさらに重くなりそうだ。

 県北地域にいる産婦人科医がリスクの高い分娩に迫られた場合は、経験のある小児科医がNICUに対応するとしている。このため、同病院は小児救急について「早めに診療時間内に受診、休日の時間外診療は休日救急診療所を利用してほしい。日製病院を時間外受診する際は事前に電話で問い合わせてほしい」と異例の要望を公表した。

(朝日新聞、茨城、2009年3月3日)

****** 読売新聞、茨城、2009年3月3日

日製病院産科施設を提供

来月以降 緊急手術などに対応

 産科医の確保が難航し、「地域周産期母子医療センター」の機能を4月以降、当分の間休止する日立製作所日立総合病院は2日、県北地域のハイリスク出産に対応するため、日製病院の産科医療施設を近隣の産科病院医師などに提供することを決めた。

 容体が急変した場合は、日製病院で近隣病院の医師が緊急手術などを出来るようにするほか、手術には、日製病院の外科や内科、麻酔科の医師も携わる。日製病院は4月以降、産科医が1人残ることから、正常分娩(ぶんべん)を扱う院内助産所の設置も検討してきたが、「何かあれば1人の医師では対応できない」と見送った。病院に残る1人は、婦人科で外来診療などにあたる。

 一方、早産などのリスクの高い出産に連動する新生児集中治療室(NICU)の機能は維持される。5月末までに日製病院を離れる新生児科の医師全3人に代わり、日製病院と北茨城市立総合病院を合わせて5人の小児科医で対応する。

 4月からは、北茨城市立病院の小児科外来を継続しつつ、時間外の小児科救急と入院診療は日製病院に集約するという。北茨城市立病院の小児科医1人は日製病院に異動する。

(読売新聞、茨城、2009年3月3日)

****** 毎日新聞、茨城、2009年3月3日

日立製作所日立総合病院:周産期センター休止へ 分娩予約中止も継続

 日立市の日立製作所日立総合病院(日製病院)は2日、医師確保の見通しが立たないとして、妊婦の救急搬送を24時間受け入れる「地域周産期母子医療センター」の機能を4月から休止すると発表した。昨年夏からの分娩(ぶんべん)予約中止も継続する。これらを受け、小児科の新生児担当医3人が5月までに全員病院を離れることも決まり、県北地域の新生児医はゼロになる。県は水戸地区の周産期医療体制を強化し、県北地区からの救急搬送の受け入れ対応にあたる。

 07年の日製病院の分娩数は1212件で、県内で最も多かった。センター休止の直接の原因は、新年度の人事で常勤産科医が確保できなかったためだ。今年度初めに6人いた常勤産科医は、派遣元の大学病院の意向で4月から若手1人になる。

 病院によると、センターに付属し、リスクの高い新生児を集中的に治療する新生児集中治療室(NICU)は可能な限り活用する。正常分娩が見込まれ、県北の医療機関にかかる妊婦の容体が急変した場合などは、かかりつけ医が日製病院のスタッフと共に同病院で緊急手術などを行うという。この場合、従来は新生児医が行っていた業務は残りの小児科医が対応する。病院側は年間30件程度の妊婦搬送を想定しているというが、地域の医療機関との連携に課題が残る。

 日製病院は、県や市と共に引き続き医師確保に努める。新たな常勤産科医が確保でき次第、院内の助産師を活用して「院内助産所」を開設し、分娩を再開する予定で「速やかに周産期センターの再開を図りたい」とするが、状況は容易ではなさそうだ。

 日立市の樫村千秋市長は「4月の産科診療の再開に向け、医師確保に努力してきたが、このような結果になり残念。日製病院で安心して子どもが産めるようになることを期待して、引き続き医師確保に努力していきたい」とコメントした。【八田浩輔、臼井真】

(毎日新聞、茨城、2009年3月3日)

****** 東京新聞、茨城、2009年3月3日

周産期センター休止へ 日立総合病院 来月から危険な出産、県央へ搬送

 日立製作所日立総合病院(日立市・岡裕爾院長)は二日、常勤産科医の引き揚げに伴い、出産から新生児医療までを担う周産期センターを四月から当面、休止すると発表した。危険性の高い異常分娩(ぶんべん)だけでなく、正常分娩も原則受け入れを中止する。医師確保のめどは立っておらず、県北地域の危険なお産などは水戸市の病院などに救急搬送されることになる。【伊東浩一】

 日立病院は県保健医療計画で比較的高度な出産、新生児医療を受け持つ県北地域の「地域周産期母子医療センター」に位置付けられている。現在、常勤医が産科に四人、新生児科に三人おり、新生児集中治療室を備える。二〇〇七年には異常分娩から通常分娩まで千二百十二件を取り扱った。

 しかし、派遣元の東京大医学部が三月末で産科の常勤医三人を引き揚げることになり、残る一人では対応ができないため四月以降、一切の分娩を休止することを決めた。

 これに伴い、新生児科も不要となり、常勤医を派遣していた筑波大医学部は三月末で同科の常勤医二人、五月末で一人の引き揚げを決めた。

 このため、県は県北、県央を一つの周産期医療圏と位置付け、危険性の高いお産などを水戸済生会総合病院(水戸市)と県立子ども病院(同)などで受け持つとしている。

(東京新聞、茨城、2009年3月3日)