『病院で常勤医として働き続けるためは、必ず他の医師と平等に当直をこなさなければいけない、退勤時刻になっても仕事が残っていれば職場を離れられない、受け持ち患者の状態が悪くなれば非番でも呼び出されるのが当たり前』、そういう一律の義務を課した勤務に耐えられなくなった者が職場から排除されるシステムでは、もはや病院はこの世の中に生き残っていけません。
滅私奉公の厳しい勤務に耐えられなくなった医師達が、次々に「燃え尽きて」過酷な職場を離れていき、その離職者達の穴を埋めるのが新人医師しかいないという状況が続けば、人材はすぐに枯渇してしまうでしょう。
今後は、多様な働き方を認めて、多くの人が自分なりの働き方を選択でき離職しなくても済む、働きやすい職場環境を作っていく必要があります。
****** 信濃毎日新聞、2008年10月7日
市立病院の人材確保 働きやすい環境模索
「今のところ対応可能な範囲」。飯田市役所で9月29日に開かれた開かれた記者会見で、市立病院の山崎輝行・産婦人科部長は、4月以降の同病院でのお産の受け入れ状況について、こう述べた。同病院は4月から、地元在住者を優先した上、月70件の目安を超えない範囲で他地域で暮らす地元出身者の出産(里帰り出産)を受け入れるーとしてきた。
全国で問題となっている産科医不足。飯田下伊那地方の中核を担う同病院も昨年11月、里帰り出産を今年4月から原則受け入れない方針をいったん発表した。その後、信大から新たに医師1人が着任することになり、常勤医4人、非常勤医1人による体制で現状まで制限を緩和した。
助産師のみによる妊婦健診の拡大が軌道に乗ってきたこともあり、出産は「現在は月80~90件に増えている」と山崎部長。ただ、飯伊地方でお産を扱う医療機関は計3ヵ所と3年前から半減。お産の半数以上は同病院に集中しているだけに、千賀脩院長は「あと1、2人は産科医がほしい」と話す。
同病院の医師は今年4月時点で90人(研修医含む)。4年前に比べて22人増え、「403床のベッド数に対する割合は、ほかの病院に比べても多い方」(千賀院長)。医師と並んで全国的に不足がいわれる看護師も、パートを含め297人(4月時点)と、2年前から39人増えた。来年には患者と看護師の割合を、診療報酬の上乗せがある「7対1」にまで増やす予定だ。
人材確保に向け、病院側はこれまで「働きやすい環境づくり」(市立病院事務局)を重視。特に女性の医師や看護師らのため、4月には院内保育所を設置したほか、生活と仕事が両立しやすいよう勤務体系を「可能な限り柔軟にしてきた」(同)。また医師の事務作業を補助する職員を配置するなど、医師の負担軽減にも取り組み始めた。
(以下略)
(信濃毎日新聞、2008年10月7日)