飯田下伊那地域の最近の年間分娩件数は約1600件で、そのうち里帰り分娩は約300件程度と考えられます。医療機関別では、飯田市立病院で約1000件、椎名レディースクリニックで約400件、羽場医院で約200件の分娩を取り扱ってきました。羽場医院が来年2月末で分娩の取り扱いを中止することになり、来年3月以降の飯田市立病院の分娩取り扱い件数がその分増える見込みです。そこで、分娩件数の急増に対応するために、分娩室と外来診療室の増設工事を緊急的に実施することになりました。
飯田市立病院の第三次整備計画(建設費25億円、11年度上半期着工、13年度上半期完成予定)で、北側増築棟の2階に周産期センター、1階に産婦人科外来を設置し、将来の分娩件数増加に対応していく予定ですが、その完成を待っていたんでは来年度の分娩件数増加に間に合わないので、緊急工事を実施することになりました。せっかく工事を実施しても建物部分は2年後に取り壊すことになりますが、分娩台、分娩監視装置、超音波検査装置などの医療機器は、新しい周産期センター、産婦人科外来に引っ越す際に、すべて持っていく予定です。
飯田下伊那地域における産婦人科医療提供体制は、今まで存亡の危機に何度も何度も直面してきましたが、多くの人々の協力を得て、その時その時の急場を何とかしのぎながら、これまでかろうじて生き延びてきました。大きな危機が訪れる度に、一緒に頑張ってくれる仲間の数がだんだん増えてきました。これから先のことは全くわかりませんが、今後もみんなの力を結集して、危機を一つ一つ乗り越えていきたいと思います。
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以下、中日新聞の記事(2010年7月27日付け)より引用
出産受け入れ体制強化へ 飯田市立病院
来年分娩室を増設 羽場医院の扱い停止受け
飯田下伊那地方で出産を取り扱う3医療機関のうち、飯田市駄科の羽場医院が来年2月末で取り扱いをやめる代わり、同市八幡町の市立病院が分娩室の増設により受け入れ件数の増加を図ることになった。市立病院が25日夜、飯田下伊那地方の行政、産科医療機関などによる産科問題懇談会で提案、全会一致で了承された。(長谷部正)
飯伊地方の出産は里帰り分を含めて年間1600件前後で推移。市立病院が1000件、同市小伝馬町の椎名レディースクリニックが400件、羽場医院が200件を扱ってきた。羽場医院の取り扱い停止に伴い、市立病院は来年2月末までに分娩室を現在の3室から4室へ増設。外来診察室も拡張する。また、「90件を限度とする」としてきた1ヵ月当たりの出産予約件数の方針も「90件程度とする」と緩和する。
市立病院の山崎輝行産科部長は「最近も111件を受け入れた月があり、年間1200件の受け入れは可能という予測ができている」と報告。各医療機関からは健診、外来診療の拡充などで2医療機関に協力する旨の意見が相次いだ。
同地方で出産を取り扱う医療機関は、30年前の13ヵ所から年々減少し、4年前には3ヵ所まで激減した。市立病院は2007年11月には里帰り出産を原則として断るなど、出産予約件数を月70件程度に制限。その後は産科医の確保などに応じ、徐々に制限の解除を進めている。
(以上、引用終わり)
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以下、南信州新聞の記事(2010年11月27日付)より引用
分娩対応へ緊急工事 飯田市立病院
羽場医院の分娩取り扱い中止を受け
産科問題懇談会
飯田下伊那の行政と医療関係者でつくる「産科問題懇談会」(会長・牧野光朗南信州広域連合長)は25日夜、飯田市役所で開催された。来年2月末をもって、羽場医院が分娩の取り扱いを止めることになったのを受け、今後の対応を協議した。来年3月以降の分娩を取り扱う医療機関は、飯田市立病院と椎名レディースクリニックの2か所になるため、産婦人科の診療、出産予約について理解と協力を呼びかけることを決めた。
市立病院では、取り扱う分娩件数の増加に対応するため、分娩室や産婦人科の外来診療室の増設工事を2月中には終え、なるべく多くの分娩に対応できる体制を緊急に整える方針。増設工事は年末から約6000万円かけて実施し、分娩室を1室増やして分娩台を4台(現在3台)にする予定。第三次整備計画までのつなぎの対応となる。
妊婦健診と軽症の婦人科疾患の診療については、平岩ウイメンズクリニック、椎名レディースクリニック、西澤病院(木曜日のみ)に加え、10月から常勤の産婦人科医師が着任した下伊那赤十字病院、来年3月から外来診療に特化する羽場医院で受診する。
市立病院の産婦人科医師は、10月から1人増え6人となっていることから、できるだけ受け入れていきたい考え。千賀院長は「おおむね受け入れられるが、一定の制限をせざるを得ないこともある」とした。
飯田下伊那地域に居住している人の出産は、従来通り原則としてすべて受け入れる。さらに、里帰り出産についても受け入れるが、受付件数によっては制限することもある。市立病院で出産を希望する人は、妊娠初診を前記の連携産科医療機関で受け、紹介状を書いてもらってから出産の予約を取る。出産の予約は12週までに行い、原則として20週までには少なくとも1回以上受診できる人について、随時受け付けていく。実家が飯田下伊那にある人で市立病院での里帰り出産を希望する人は、妊娠がわかり次第、市立病院へ連絡する。
羽場医院の羽場啓子医師は「前々からもうやめようかと考えていたが、ことし3月ごろから体調を崩し、患者さんやスタッフに迷惑をかけた。お産に立ち会えない時もあり、5月ごろに予約が入っていた来年2月末をもってやめようと決めた」と説明した。羽場医院は1995年6月に開業し、年間200~220件の分娩を取り扱ってきた。
以下略
(以上、引用終わり)
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以下、南信州新聞の記事(2010年11月27日付)より引用
飯田市立病院第3次整備計画を発表
飯田市立病院(千賀脩院長)は26日開いた市議会全員協議会で、南信州圏域定住自立圏の中核病院としての機能と役割を果たすため「救急医療」「周産期医療」「がん医療」などの診療機能の充実を柱とする第3次整備計画を発表した。現建物の南側と北側に建物を増築し、現在分散している救命救急センターの各部署を集約するとともに、周産期センターをワンフロアーで配置するなど、がん医療なども含め診療機能の充実を図る。建設費約25億円をかけ、完成は2013年度上半期の予定。
建設する建物は、3階建の南側増築棟と4階建の北側増築棟の2棟で、延床面積は合計約6500平方メートル。このほか、既設の建物約3890平方メートルを改修する。南側増築棟には、現在分散している救急外来、救急病床、救急ICUなどの救命救急センターの各部署を、CT検査部門やヘリポートに近い場所に集約する。救急病床6床、救急ICU4床、一般病床2床のスペースを確保し、救急患者の受入環境を整える。
北側増築棟には、現在2カ所に分散している周産期センター(分娩部門、新生児部門、産科病棟)をワンフロアーで2階に配置。1階に産婦人科外来、助産師外来を配置することで、動線の短縮を図る。分娩室は、リスク軽減のため手術室に近い場所へ配置し、1室増やし4室とする。病床数も2床増やし34床、GCU(継続保育室)は8床増やし12床、陣痛室は2室増やし4室とする。ファミリーケア室(育児指導室)も設置する。
がん医療は外来化学療法室、緩和ケア部門、麻酔科処置室を一体的または隣接して、できるだけプライバシーが守れくつろげる場所に配置する。外来化学療法室は、20床が配置できるスペースを確保。緩和ケアのためのサロン(情報コーナー)、医療相談やセカンドオピニオンにも対応できる相談室・指導室を設置する。
患者・利用者のアメニティー向上を図るため、食堂や売店など手狭なサービス部門の改善や、待ち時間をより快適に過ごすことができる施設整備を行う。食堂の客席はゆとりある配置ができるスペースを確保し、利用しやすいように職員エリアと一般エリアを分けるとともに、車イスで移動しやすい通路を確保する。売店は、現在の倍程度の面積とし、品ぞろえを充実するとともに、車イスでも移動しやすい通路を確保する。図書、情報コーナーや休憩コーナーを設置する。
このほか、地域医療連携室と医療福祉係がより連携して業務ができるよう事務室を移動し、各種相談業務が充実するよう相談室を設置。手狭な腎センターを拡張し、ベッド数は現状(17床)程度とするが、感染者専用個室やトイレ、休憩室、面談室を設置する。内視鏡室も手狭なため拡張し、リカバリールームを設置する。
5月から進めてきた基本設計がまとまり、これから実施設計に入る。来年度上半期を目標に2棟同時に着工。南側増築棟は約1年で完成するが、全体の工事完成は13年度上半期を予定している。
建設費約25億円の財源内訳は、県の地域医療再生基金交付金2億円、市の出資金9億円(うち合併特例債4億5000万円、定住自立圏構想推進基金1億5800万円、残りは一般財源)病院事業債14億円。収支計画によると、経常損益は10年度の3億4400万円、11年度の2億900万円から、12年度に4200万円と黒字が少なくなるが、13年度は6000万円、14年度は1億8300万円と回復していく見通し。同院では「黒字を確保しながら建設を進める」と説明した。
(以上、引用終わり)