ある産婦人科医のひとりごと

産婦人科医療のあれこれ。日記など。

無月経の分類

2020年06月23日 | 生殖内分泌

月経が発来しない状態を無月経(amenorrhea)という。

正常な月経の発来には、
①間脳-下垂体-卵巣系による制御、
②卵巣における性ホルモン産生、
③子宮・腟
のすべてが正しく機能する必要がある。

①初経前、②妊娠・産褥・授乳中、③閉経後の無月経を生理的無月経という。生理的無月経以外の無月経を病的無月経という。

満18歳になっても初経がみられないものを原発性無月経という。原発性無月経の原因としては、Müller管の分化異常(子宮欠損、アンドロゲン不応症など)や染色体異常(Turner症候群など)が多い。それに対して、順調にあった月経が3カ月以上停止したものを続発性無月経という。

黄体ホルモン製剤(ゲスターゲン)投与により消退出血が生じるものを第1度無月経という。それに対して、ゲスターゲン投与のみでは出血が起こらず、エストロゲン投与に引き続きエストロゲンおよびゲスターゲンを投与して消退出血が出現するものを第2度無月経という。エストロゲンとゲスターゲンとを投与しても消退性出血が起こらない場合は子宮性無月経と診断される。子宮性無月経の原因としては、子宮欠損や子宮腔癒着症(アッシャーマン症候群)がある。


無月経の診断法

第1度無月経:
第1度無月経は、卵巣には発育途中の卵胞を認め、血中エストロゲン値を一定量認めるため、子宮内膜は増殖しているが、排卵せずプロゲステロンの分泌がない。
①多嚢胞性卵巣症候群(LH>FSH)
②視床下部性無月経(FSH、LH、E2:ともに正常値)

第2度無月経:
第2度無月経は、中枢性のゴナドトロピン(性腺刺激ホルモン)分泌低下、もしくは卵巣機能低下が主な原因である。
①下垂体性無月経、重症の視床下部性無月経(FSH、LH、E2:ともに低値)  
②早発卵巣不全、更年期(FSH、LH:ともに高値、E2:低値)

参考文献:
1) データから考える不妊症・不育症治療、竹田省ら編、メディカルビュー社、2017
2) 生殖医療ポケットマニュアル、吉村泰典監修、医学書院、2014
3) インフォームドコンセントのための図説シリーズ 不妊症・不育症(改訂3版)、苛原稔編、2016

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ソノヒステログラフィー

2020年06月23日 | 生殖内分泌

sonohysterography (SHG)

ソノヒステログラフィー(SHG)は、生理食塩水を経腟的に子宮内に注入して子宮内腔を広げて経腟超音波検査で子宮内膜面の構造異常を評価する方法です。通常の経腟超音波検査で子宮内腔の厚さなどから、子宮内膜ポリープ、子宮粘膜下筋腫、子宮内膜癌などの子宮内膜面にある病変の存在を疑った場合に有用です。放射線被爆がなく、造影剤アレルギーのある患者にも実施でき、コストも安いなどの利点があります。


子宮内膜ポリープ

参考文献:
生殖医療ポケットマニュアル、吉村泰典監修、医学書院、2014

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子宮卵管造影検査

2020年06月23日 | 生殖内分泌

hysterosalpingography (HSG)

子宮卵管造影検査(HSG)は、月経終了後から排卵までの時期に、造影剤を経腟的に注入し、腹部レントゲン撮影を行います。子宮腔の形、卵管の通過性、卵管周囲に癒着があるかどうかの評価ができます。子宮奇形、粘膜下筋腫、子宮内膜ポリープ、子宮腔癒着症、卵管閉塞、卵管狭窄、卵管周囲癒着、卵管留水症などを診断することができます。HSGは不妊症スクリーニング検査として実施されますが、診断への有用性のみならず治療的効果も無視できません。HSG施行後に原因不明不妊患者が妊娠する事例をしばしば経験します。


正常所見


両側卵管閉塞

参考文献:
1) データから考える不妊症・不育症治療、竹田省ら編、メディカルビュー社、2017
2) 生殖医療ポケットマニュアル、吉村泰典監修、医学書院、2014

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タイミング法

2020年06月23日 | 生殖内分泌

タイミング法、タイミング療法、タイミング指導、timed intercourse

タイミング法は、経腟超音波による卵胞計測、尿中LH簡易測定などにより排卵日を推定し夫婦生活(intercourse)を促す指導で、両側の卵管閉塞や重度の乏精子症・精子無力症などを認めなければ適応となります。

タイミング法では、妊娠成立の確率が最も高いintercourseのタイミングは排卵日の1~2日前です。排卵の6日以前もしくは排卵後1日後には妊娠の可能性はありません。そのため、排卵1~2日前にintercourseのタイミングをとるよう指導します。


Wilcox AJ et al, Hum Reprod, 1998

また、精液所見が正常の場合、妊娠の可能性のある排卵5日前から排卵当日までの間のintercourseの頻度(日数)が3回以上あると妊娠率が高くなります。 (Wilcox AJ et al, N Engl J Med, 1995)

参考文献:
データから考える不妊症・不育症治療、竹田省ら編、メディカルビュー社、2017

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