ある産婦人科医のひとりごと

産婦人科医療のあれこれ。日記など。

助産師外来の拡充

2008年10月04日 | 飯田下伊那地域の産科問題

全国的に分娩を取り扱う産婦人科施設数が激減しつつあり、地域の分娩が基幹病院に集中する傾向が顕著となりつつあります。

当医療圏でも、2年前に分娩を取り扱う施設が6施設から3施設に半減し、当科の分娩件数は従来の年500件からいきなり年1000件に倍増しました。数年以内に当地域の分娩取り扱い施設がさらに減少するのは確実な情勢と考えています。

当科の診療状況の変化を分析してみますと、帝王切開の実施件数は従来と比べてほとんど増加してませんし、早産児やNICUの重症患児数も従来と比べて増加してません。要するに、当科の分娩件数が倍増したことは事実ですが、増加分のほとんどが低リスクの経腟分娩であり、高リスク妊娠の管理や異常分娩の件数は従来と比べてそれほど増加してないことが判明しました。

ハイリスク妊娠・異常分娩への対応を中心とした(従来からの)業務内容が、ここにきて大きく変化しているわけですから、新たな局面に対応するために病院内部でもさまざまな工夫が必要となります。病院スタッフの業務分担の見直し(助産師の増員と業務拡大、専属の超音波検査技師の配置など)も必要と考えています。

****** 信濃毎日新聞、2008年9月30日

飯田市立病院: 「月70件」の出産受け入れ予定

「断った人はいない」 4月以降・助産師外来も軌道

 飯田市立病院は29日、地元在住者を優先した上で1カ月の全出産予約件数が70件を超えない範囲で里帰り出産を受け入れる-としてきた4月以降の対応について状況を発表した。全出産取扱数は「今のところ対応可能な範囲で、断った人はいない」と説明。4月から拡充した助産師外来での妊婦健診についても、全体の3割を超えるほどに増え「おおむね好評」との認識を示した。

 昨年度まで常勤医が5人だった同病院の産婦人科は現在、常勤医4人、非常勤医(週3回)1人。里帰り出産については、出産予定月の5か月前の1~7日に予約を受け付けている。

 この日会見した同病院の山崎輝行・産婦人科部長によると、4~8月の全出産取扱数は月平均約75件だった。医師の負担を減らす助産師外来が軌道に乗り、4月に着任した医師も慣れてきたため、「ここにきて月80~90件ほどに増えている」といい、「今後も可能な範囲で受け入れる」と述べた。

 助産師外来による妊婦検診については、超音波診断装置や専門の検査技師を配置した上で、4月以降は助産師、検査技師のみによる健診と、医師による健診を交互に組み合わせる方向で増やしてきた。8月には全体の33.9%(230件)を占めるまでになった。

(以下略)

(信濃毎日新聞、2008年9月30日)


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6 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
医師の負担が減ることは喜ばしいのですが、1人あ... (産婦人科医)
2008-10-05 16:13:17
とても医師の負担減につながるとは思えません。
せめて一日25人程度は診て貰わないと。
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>>産婦人科医様 (大森)
2008-10-05 17:48:15
毎日新聞お得意の医師バッシングですね。

医師が10分程度なのに対し、助産師は40分ほどかけてじっくり話を聞いていること 「も」 あり好評という。

40分かけた人を探し出してきて、いかにも医師の診察だけが短すぎる、というネガティブイメージをつけようとしている文章に過ぎません。

・・・すっかりマスゴミの文章を疑う目を持つようになってしまいました。
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産婦人科医さま、大森さま、コメントありがとうご... (管理人)
2008-10-05 20:56:34
40分というのは、助産師が担当する時間と超音波検査技師が担当する時間との合計の予約枠です。助産師の時間はせいぜい20分程度だと思います。

助産師3人と専属の超音波検査技師2人が1日がかりでやっているので、最近は助産師健診で1日計30人ほど診てます。

医師と助産師と超音波検査技師とが、それぞれの専門性を発揮し、緊密に連携することが非常に大切だと考えます。助産師健診で何か異常が見つかった場合は、できるだけその日のうちに医師が診察するようにしてます。院内助産院を設置する予定はありません。

助産師外来で産後の母乳相談なども受けてます。
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助産師3人ですか!すごいですね。うらやましい。 (産婦人科医)
2008-10-05 23:33:34
それなら30人は診れますし、負担軽減につながりますね。
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施設単位としての「分業」への取り組みは必然的な... (産科開業医)
2008-10-08 16:56:13
超音波なんて内科ではかなり前から技師がしている臓器もありますし、産科はむしろ遅れていたのかもしれません。勤務医時代、超音波を技師に移せないか上層部に掛け合って却下された事を思い出します。
助産師もいきなり分娩で会うより事前に外来で話しているほうがスムーズにいけるので、分娩施設としてのメリットは大きいです。
ただし助産師が外来に出れる程人員が充実している施設は決して多くない事も事実です。

「分業」や最近やたら出ている「業務拡大」は理念としては問題ありませんが、やり方に大きな疑問を感じざる終えません。

産科医が不足しているから助産師の業務を拡大し産科医の負担を減らすのは分かります。しかし、助産師もかなりの施設で不足しているのです。助産師が足らないから今度は看護師がという話は出てきません。実際外来(健診)なら法律に抵触しないはずですので、産科を良く勉強し実践している看護師でも十分のはずですがそういう話はでません。うちではとても外来にまわせる程助産師はいませんので、子育て母乳外来などですが看護師も鍛えて実行してます。

さらに、看護協会などは法律まで変えてまで「看護師・助産師の業務拡大」をもくろんでいます。「規制緩和」の方向ですね。それならなぜ看護師の内診は違法のまま(規制強化)で規制緩和の声が出ないのでしょうか?
普通に推察すると極めて意図的な流れに感じてしまいます。

ここの施設では止むを得ないのでしょうが、助産師外来に代表される偏った「分業」や「業務拡大」は出来る施設が限られてきます。出来ない施設は産科を閉じるなんてことになれば、長期的に見れば産科医にとって必ずしもプラスにならない可能性があるのではないかと危惧します。

長々とすみません


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産科開業医さま、コメントありがとうございます。 (管理人)
2008-10-08 22:53:28
当医療圏の分娩施設が半減した時、分娩取扱いを止めた施設の助産師の多くが移って来て、当科の助産師数がかなり増えました。また、地元の短大助産学専攻科で毎年8人づつ助産師を養成し、毎年2~3人が当院に就職しています。

現在、当院の助産師数は常勤32人(非常勤4人)です。助産師は交替で毎日7人ほど産科外来(医師健診:1診+助産師健診:3診)に出てます。陣痛発来時に初めて助産師と出会うよりは、妊娠の初期から助産師と顔馴染みになっていた方がずっといいと思います。

フリースタイル分娩、カンガルーケア、バースプラン、助産師健診、母乳管理など、なるべく助産師の力を最大限に発揮してもらいたいと思ってます。

また、2人のベテラン女性超音波検査技師を産科専属にしてくれたので、非常に助かってます。もともと超音波検査のプロですし、一人一人にしっかり時間をかけて丁寧に見てくれるので、産科領域に慣れさえすれば全く問題がないです。半年間、産科超音波検査に専念していたので、産科領域の診断レベルはかなり上がってきてます。現在は2人体制ですが、できれば、将来的には新人臨床検査技師を加えて3人体制にしたいと考えてます。
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