forelying and prolapse of the umbilical cord
[定義]
・ 破水前に、胎児先進部より下方に臍帯が存在するものを臍帯下垂という。
・ 破水後に、臍帯が、胎児先進部を超えて、腟または陰裂に懸垂するものを臍帯脱出という。
・ 臍帯脱出は、臍帯下垂が破水した時に起こる。
[発生頻度]
・ 横位>骨盤位>頭位
・ 臍帯下垂は全分娩の0.5~1%
臍帯脱出は全分娩の0.5~0.8%
(病気がみえるVol.10、産科)
[原因]
横位、骨盤位、反屈位、児頭骨盤不均衡、多胎、羊水過多、過長臍帯など。
⇒胎児先進部と子宮下部の間隔が広くなる。
⇒臍帯下垂、臍帯脱出
[症状]
母体は全くの無症状で、診断によってのみこれを認める。
[CTG所見]
臍帯下垂・臍帯脱出では、臍帯が胎児先進部に圧迫されることで変動一過性徐脈や遷延性徐脈がみられることがある。
[診断]
① 臍帯下垂の診断:
・ 破水前に、臍帯が卵膜を通して、透見または触知できるとき、臍帯下垂と診断する。
・ 超音波カラードプラ、経腟超音波検査
② 臍帯脱出の診断:
・ 破水後に持続性徐脈が出現したら、まず 第一に臍帯脱出を考えて内診する。
・ 臍帯が子宮口から脱出し、腟または陰裂に懸垂したとき、臍帯脱出と診断する。
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臍帯下垂(超音波カラードプラ)
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臍帯脱出
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臍帯の圧迫を取る救急処置
・ 胎児先進部を内診指で挙上させる。
・ トレンデレンブルグ体位または膝胸位で骨盤高位とする。
・ 子宮収縮抑制剤(塩酸リトドリン)を投与し、子宮収縮を抑制する。
・ 臍帯脱出で胎児の生存が確認できたら緊急帝王切開を施行する。胎児死亡の場合は経腟分娩を行う。
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臍帯の圧迫を解除するため、胎児先進部を内診指で挙上させる。
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トレンデレンブルグ体位 Trendelenburg position
仰臥位・頭部低位・腰部高位の体位のことで、骨盤高位ともいう。分娩中に臍帯下垂が発見された際に、それが臍帯脱出にいたるのを防ぐ目的で、妊婦にとらせる体位である。
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膝胸位 Knee-chest position
腹臥位で頭を骨盤より低くする。
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臍帯下垂の処置
・ 臍帯下垂の診断後は、厳重な管理のもとに自然整復を期待する。(トレンデレンブルグ体位、膝胸位)
・ 臍帯下垂は、破水後に臍帯胎脱出に移行し胎児機能不全が引き起こされるリスクが高いため、自然整復ができなければ予防的に予定帝王切開を行う。
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臍帯脱出の処置
・ 臍帯脱出では児を救命するために、超緊急帝王切開を行う。緊急に児を娩出しないと、児の予後は不良である。
・ 内診指で児の先進部を挙上させ、そのまま手術室へ搬送する。先進部を挙上させたまま、全身麻酔下に超緊急帝王切開を行う。
・ 子宮内胎児死亡が確認された場合は、経腟分娩を行う。
古い記事を引っ張り出して申し訳ありません。
TBSのドラマで、エレベーターに閉じ込められた妊婦が、破水後、臍帯脱出していることが認められて、エレベーター内で緊急帝王切開するという話があり、
https://tver.jp/corner/f0079944
気になって調べていたところ、こちらの記事にたどり着きました。
ドラマ内の処置は、診断も含めて正しいのだろうと納得しました。
ただ、エレベーターの床に寝たまま、消毒もせず切開って、あと5分もすれば救出されることがわかっていて、担当医のいる病院内で、その状況での帝王切開はどうなのだろうかと疑問に思いました。