月の岩戸

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ゲンマ・23

2016-09-05 04:23:18 | 詩集・瑠璃の籠

橋が壊れた
人間を
新しい愛の世界に導くために
月が谷に渡していた
美しい橋が消えた

自分が死んでも
しばらくは橋が残っているようにと
仕掛けておいてくれた夢が
とうとう消えた

人間は
新しい愛の世界を
目指してゆくが
橋が消えたので
ずっと難しい道を行かねばならない

愛が消えても
そんなものは惜しくないのだと
見栄を張って
何もしないでいたら
とうとう橋が消えた
だが人間は
まだ何もわからない

愚か者よ
谷を迂回し
目を閉じた森の中をさまよい
肌を切る風の中に飛び込み
己の心が招いた
愛の消えた黄昏の荒野を目指せ

橋はもうない
消えた夢の名残だけが
花の色に吸い込まれている
もうここにいても何もない
草一本の愛もない荒野を
自ら目指せ

馬鹿者どもよ




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