月の岩戸

世界はキラキラおもちゃ箱・別館
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ウラヌス・5

2014-05-15 06:12:47 | 詩集・瑠璃の籠

とろけおちそうな仮面を
膠の釘で押さえ
嘘寒い追従笑いを
保存しつつ
土砂崩れの予報を裏切るために
あらゆる努力をしている
猿よ

燃やしてもらった方が
ありがたいと
思うことがあろう
だがおまえは
燃やされはしない

木に釘打たれ
死にざまをさらされもしない

生きたまま
傀儡のごとくなり
からっぽの生を
甘い鼠肉のごとく噛んでいる
その姿のまま
生きざまをさらすのだ
永遠に

死ぬことすら許されない
英雄の仮面をかぶった
糞の傀儡になったまま
永遠に
マウンドに立ち続けるのだ
千万の観衆の目を
雨のごとく浴びながら

ほう
おもしろい

さて
そろそろ
滅ぼすか



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ゲンマ・4

2014-05-14 06:16:22 | 詩集・瑠璃の籠

太陽が降りて来れないのは
忘れたい記憶を持ってくる星を
ふたたびあなたがたが
消そうとして殺すかもしれないからだ

あのときと同じことを
いや
あのときよりもっとひどいことを
あのときの記憶を消すために
あなたがたが
やるかもしれないからだよ

それほど
あれは
あなたがたにとって
つらいことなのだ

できるなら
癌細胞のように
摘出してしまいたい
あまりにもむごい記憶なのだ

二度とあってはならないことの
記憶を
摘出することなどできるはずがない
それなのに
あなたがたはそれを摘出しようとして
再び 同じことを
やってしまったのだよ

月に

今度は
月に
やってしまったのだ

もう二度とあってはならないことを
太陽にではなく
月にやってしまったのだ
もはやこれまで
もうだれも
あなたがたを待ってはくれない

一度目の失敗はまだ許せる
だがもう二度目は いけない
あなたがたはもう
二度と同じ失敗はできない

消したい記憶を
苦い林檎のように飲み込み
腹にその鉄を抱えながら
生きていきなさい
二度と逃げることは許さない

許さない

人間よ
われわれはもう
あなたがたの馬鹿を
許しはしないのだ



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ヴェガ・19

2014-05-13 06:15:05 | 詩集・瑠璃の籠

ひそやかに この声を
聴きなさい
わたしはもう
あなたがたに
しばしば語りかけることはできない

愛の星は すべて黙する
あなたがたが
十分に 立派に
愛がわかり
愛を行うことができるようになるまで
愛の星は誰も語ってはならぬと
星の中の星が決めたからだ

これまでの
愛の星のことばを頼りに
愛を食べていきなさい
愛に生きていきなさい

わたしは
誰も愛してはならぬなどと
言った覚えはないよ
どうかそれだけは
わかっておくれ

すべてを
愛していっておくれ
あらゆるものを
あなたがたの愛で
満たしていっておくれ

いつか
語り合うことができる日は
来るだろう
そのときのために
今は黙するのだ

愛しているよ
いつまでも
愛しているよ

再び会える時まで
言えないことばを
もう一度 言おう
すべての愛の星の代わりに

愛しているよ



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スピカ・3

2014-05-12 06:19:59 | 詩集・瑠璃の籠

あなたの心を
色と光でとらえなさい

あなたが今
かのじょを思う心は
どんな色をしていますか

赤いか 青いか あるいは緑か
深い紫色か

ああ 赤いと
あなたは言うのですね

では今度はその赤い心が
何に似ているかと
考えなさい

植物のようですか
鉱物のようですか
動物のようですか
それとも 嵐か何かの
気象のようですか

ああ 動物に似ていると
あなたは言うのですね
ではそれは 何の獣ですか

猫のようですか 犬のようですか
像のようですか 鳥のようですか
それとも くねりまがった
蛇のようですか

おや
狐のようだと
あなたは言うのですね

それでは それらの珠玉のような言葉を道具にして
あなたの心の動きを表現してみなさい

あなたの心は まるで
赤い情熱の光をひめた
走る狐のようだ
炎のような尾を引いて
愛するあのひとを追いかけている
どうにかして
あの人の心をかすめとりたいと願っている
熱い狐のようだ

どうです
あなたの心にぴったりでしょう
ことばで 自分の心を捕まえることが
できたでしょう

表現力は このように使いなさい
美しい言葉で心をとらえ
それをきれいに編み上げて
あなたの心を正確に包む
入れ物をこしらえるのです
そうすれば むき出しの荒い心が
冷えて固まってくる
珠玉のように 美しくなってくる

さあ
やってみなさい



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スピカ・2

2014-05-11 06:09:47 | 詩集・瑠璃の籠

芸術性の愛というものを
おしえてあげましょう

花と 真珠を
大事にしなさい
美しい色と光を発する
印象的な神のことばを

あなたがたは
どのように表面を取り繕っても
花と真珠から逃げることはできない

花と真珠を宿す
心を大事にしなさい

空を飛ぶ小鳥を
瑠璃に塗り
水を泳ぐ魚を
翡翠に塗り
野をよぎる猫に
銀を塗る

その心を大事にしなさい

愛するものを
愛するために
千差万別の形をして
虹よりも奔放な色と光を宿した
花と真珠で飾ってあげなさい

金色の 橘の実に
宿る花と真珠は何でしょう
考えてみなさい

あのとき なぜ
あの少女は
金色の 小さな橘の実を
あなたに投げたのか
なぜ 痛いその実を投げて
泣きながら 去って行ったのか
考えなさい

残された心をそこに読み取りなさい

ああ 愛していたのに
なぜあなたは と
去って行った人の心を
追いかけなさい

わたしはスピカ
美しいおとめの星
あなたがたに
優雅にも軽やかな
美しい隠喩の作法を教えてあげましょう

愛を
もっとも美しく表現する
その方法を教えてあげましょう



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望月

2014-05-10 06:15:32 | 詩集・瑠璃の籠

かなしいと思う前に
笑ってしまうんだ
わたしは

なぜだろう
わからない
こんな自分であるのは
もともと
神様が
こんなふうにわたしを作ったからだろうか

あまりにも
悲しい運命が待っていても
わたしはふと
笑ってしまうんだよ
なにもかもいいと
すべては 愛だからと
なにもかもが その一瞬で
なくなってしまうんだ

不思議な ゼロを持っているんだよ
わたしは
水晶のたまごのような
堅いけれど 柔らかくて
甘くて 透きとおっていて
かわいらしくて 白くて
熱く光っている

それがあると
どんなつらいことがあっても
一瞬でなくなって
幸せになって 笑ってしまう

もういいんだよ
なにもかもは
なんにもないから
わたしには

愛しているよ
ずっと
愛しているよ

わたしの小さなゼロのたまごを
甘い粉砂糖にして
あなたがたにあげよう
悲しいことがありすぎるときは
それを自分にふりかければいい
なにもかも
一瞬で
なくなってしまうから

すべてが 涙に溶けて
愛になってしまうから





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アルタイル・17

2014-05-09 06:14:47 | 詩集・瑠璃の籠

君は
天使の白い弾丸だ

嘘寒い糞の海の中に打ちこまれる

君には熱い意志がある
きつい愛がある
なにもかもをやってやろうと
叫ぶ心がある

鉄のような腕だ
炎のような足だ
涙はマグマのようだ
ほとばしる情熱は岩でさえ溶かす光る酸のようだ

君をこの世に放った愛が
何であるかを知っている君は
そのためにすべてをやるだろう
ただ
愛のみによって

愛している
愛している
すべてを
愛している

あらゆるものが
君を世界中に飛ばす風になるだろう

光の熱線となって飛べ
あらゆるものを
浄めつくせ

君は
天使の白い弾丸だ



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美しい月

2014-05-08 06:14:41 | 詩集・瑠璃の籠

やわらかな 神の皮膚に触れ
細やかな静脈を探っていくように
真実の美しい道をたどりながら
匂やかな隠喩の織物を織っていくと
不思議な文様が浮かんでくるのです

最初は よく意味がわからないのですが
繰り返し 大切に
練習していくと
その文様の意味が
少しずつわかってくるのです

月は
このようにして
学びます

わたしは
織り上げた布を
けっして自分の身にまとうことはしないのですが
それらはみな
愛している人にさしあげているのですが
不思議に 織物を織っているうちに
見えない文様が
わたしに折り重なってきて
かたちは それほど変わらないのに
不思議に
美しさが深まってくるのですよ

女性達よ
美しさとは
こういうものなのですよ



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デネブ・2

2014-05-07 06:16:09 | 詩集・瑠璃の籠

目の前の苦悩の海に
飛び込んで行きなさい
その泥と汗と糞の沼にまみれて
あえて生きていきなさい

あなたがたが今味わっている苦悩は
かつてなしたことの反動であることがほとんどですが
何をなしてこうなったのかということを
深く考えてはなりません
ただ
目の前の苦い玉を飲むことが
当然なのだと考えなさい
逃げてはおしまいです

ときに縄に打たれることも
鎖につながれることも
闇に閉じ込められることも
痛い刃に傷つけられることもある
しかしそれは不当な扱いではありません
不当だと叫んで神を責めることはできません
当然の結果だと思い
受け入れなさい

幸福は長く続くものと思ってはなりません
甘い幻はつかの間と受け止めなさい
あなたがたは今まで
いかにも簡単に人の幸せをうばってきた
ゆえに人生での悦びはつかの間だという法則を
自らの手で作ってしまったのです

幸福は
運命の暴虐の中を果敢に生きていく
自らの力を感じることと思いなさい
涙も汗も血も その舌で苦みを味わいながら
かみしめてゆきなさい
そしてその中で
ときに味わう神よりの幸福を
美しいことばで表現してゆきなさい
そしてだれかとともに楽しみなさい
そのようにして
生を 人を
愛していきなさい

人間よ
もう子供ではない
子供の頃に通用していた
おもちゃのお金はもう使えません
本当の愛を支払いなさい
そして本当の愛をもうけるために
まじめに働きなさい





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アルタイル・16

2014-05-06 06:09:47 | 詩集・瑠璃の籠

わたしは 犬を連れて
家の近くの海辺に来ていた
低い堤防にそって 
ゆるやかに高くなる坂のてっぺんで
海を見ながら静かに風に吹かれていた

海は穏やかに青い
日差しは明るく降り注ぐ
だがわたしの心は暗かった
わたしは
職場のことで大きな懸案をかかえていた
この事態を乗り越えるにはどうしたらいいのかと
そればかり考えていた

心が暗いところに向かおうとすると
かちりとスイッチが切り替わるように
わたしは明るい空に心が吸い込まれる
ああ 悩む必要などないではないか
大切なのは みんなの幸せだ
ならば わたしは
わたしの幸せの方を 捨てればいい

風に少し 涙を感じたが
わたしの心は明るく澄んでいた
そうだ これが一番正しい

なぜ そんなことをするのです

と すぐ近くから
尋ねる声がする
その方を振り向くと
堤防の向こうに小さな漁船があって
その舳先に いつしか
美しい一羽の鷲がとまっているのだった

わたしが不思議な顔をして鷲を見つめていると
鷲は静かにつばさを広げ
わたしのすぐそばの堤防の上まで飛んできて
また言うのだ

なぜ そんなことをするのです

わたしは 戸惑いつつ 答えた
はい なぜなら
わたしはこの国の王なのです
誰も知らないことだけれど
王である限りは
みなの幸せを 最優先せねばなりませんから

そういうと 鷲は
澄んだ青い目を かすかにゆがめて言った
あなたなのですか
この国の王は

はい
と言っても
わたしが勝手に責任をとっているだけなのですが
だれに頼まれたわけでもなく

勝手に

はい 勝手に
でも 勝手にでも
わたしがやっていなければ
今はだれもやってはくれませんから

それはそうです
と 鷲は言った
そして 深いため息をついた

のんきなことをと
思われるかもしれません
馬鹿なことをと
思われるかもしれません
でも わたしは

ああ 言わなくていい
わかっていますから
あなたは そういう人ですから

ええ そうです
こういうことをやるのは
珍しいくらい
馬鹿になれるわたしが
一番ですから

わたしがそういうと 鷲は
目を閉じ かすかに
涼しげな笑い声を放った

その声が あまりにすがすがしくて
まるで さみしいわたしの胸に
暖かい花をいくつも落としてくれるようで
わたしは つい
鷲の方に 耳を澄ましてしまう

鷲は しばし黙っていたが
やがて 目をわたしの方に向けて
言った

実は わたしは
この度の仕事が終わったら
人類から撤退しようと考えていたのです

え?

ええ ですが
今のあなたの話を聞いて
それをやめることにしました

やめる?
撤退をやめるのですか?

そうです

なぜ 撤退しようと
思っていたのですか?

わたしがそう聞くと
鷲は 顔を少しわたしからそらして
言った

それは
あなたはまだ知らない方がいい
わたしをひきとめてくれる人間も
たくさんいることですし
もう一度 馬鹿になってみることにしましょう

それは ありがたい
でも

あなたはもう いいのです
何もせずとも 何も考えずとも
自分の幸せも もう捨てなくていい
人々はもう あなたのおかげで
十分に幸せですから

そうなのですか

ええ そうです
では
愛しています

それだけ言うと 鷲はつばさを広げ
風に乗って いっぺんに
空の向こうに飛んで行ってしまった

かすかに
星の香りがする

幸せを捨てなくてよいとは
どういうことだろうと思いながら
ふとわたしは下を見た
すると地面に 青い星のような
小さな花の群れがあった

ああ ヤマルリソウだ
キュウリグサも咲いている
なんときれいなのだろう

ああ 幸せとはこのことなのかな
などと思いつつ
わたしは わたしの犬を抱きしめながら
小さな花々の前に ひざまずいたのだった



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