五感で観る

「生き甲斐の心理学」教育普及活動中。五感を通して観えてくるものを書き綴っています。

祖父の絵

2016年06月08日 | 第2章 五感と体感
祖父の絵2016年6月8日

「愛あるところに神在り」のタイトルの絵を観た時に、当時小学生か中学生の私は、思わず絵の前で立ちすくんだ記憶が鮮明に残っています。都立美術館の第一美術協会展です。

余市高校の美術教員をしていた母方祖父は、定年退職後、家族を引き連れて東京に居を移します。高円寺に住み、そこで画塾を経営しながら生涯を閉じるわけですが、ともかく人の出入りの多い家でした。
一階は居住のためのスペースで二階は四畳半の小さな洗面台付の下宿用の2部屋とアトリエがあり、無口な私は、祖父のアトリエで、膠を湯煎するのを手伝ったり、塾生の人たちに混じって絵を描くのが至福の喜びでした。
小学二年生のころから茅ヶ崎の自宅から東海道線と中央線に揺られて一人で高円寺に通っていました。独りふらりが好きな子供でした。

同じく画家の父方祖父とは、旧知の親友で、戦前に父方祖父の方が先に上京していたので、母方祖父も大いに影響を受けていたのだと思います。

何とはなしに、アインシュタインとかイサムノグチに似た様な風貌の母方祖父は、絵具だらけのズボンに同じく絵具がちらりとついた白いワイシャツ姿で高円寺を歩くものですから、その当時、高円寺北商店街では知らない人はいなかったはずです。
背が高くて、鉤鼻のどこか西洋風な顔には似合わない格好は、とても個性的で、私は好きでした。

余市高校出身の美術評論家であり、世田谷美術館の館長でもあり、現在美術界で活躍中の酒井忠康氏は、祖父の教え子です。
しかも、最近出版した本「積丹半島記」によれば、小学生の頃の酒井氏の才能を見出して、「私に絵を教えさせてください」と親に頼みに行ったというのですから、かなりの気持ちの入れようだったのだと思います。
その酒井氏が、何度か祖父の事を本に書いてくださっているのですが、今回の本では「愛あるところに神あり」の絵をカラーで載せています。
お会いするごとに、「あの絵は何処に行った?」と聞かれるのですが、どうも行方不明らしく、絵を預かっていた伯母も体調が思わしくなく、従妹に聞いても思う様な答えは返って来ないのです。

両祖父が力を注いでいた公募展「第一美術協会」での、あの絵との出合い以来、アトリエで何度か観た記憶はあるのですが、それ以来、現物の絵を観ていません。
26年前に亡くなって以来、高円寺の家に住んでいた伯父も先月亡くなり、いよいよボロボロの木造二階建ての家とも別れる事になるようです。

絵の所在がうやむやであることは、何となく察するところもあるので、これ以上突き詰めて聞けないのが残念ではあるのですが、。祖父が亡くなって26年後に、本を読んだ方々が、あの絵に心を動かしてくださる事は、なんと有り難い事よ。。。と、感謝するばかりです。
SNSで呟いてくださった或る有名なアーティストに感謝しつつ、祖父が絵に籠めた精神性を継いでゆくことが、遺伝子を継いでゆくものの努めでもあろうかと、おぼろげながら思うのでした。

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展羅会のお知らせ
6月21日(火)から26日(日)
世田谷美術館 区民ギャラリーにて 「江戸表具を愛する会」

私の表装個展:
7月5日(火)から9日(土)12時半~19時半
京橋 メゾンドネコ

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