勿忘草 ( わすれなぐさ )

「一生感動一生青春」相田みつをさんのことばを生きる証として・・・

寸借詐欺

2011-08-12 23:40:14 | Weblog
 好き嫌いにかかわらず、彼は誰の話も真剣に聞いてくれる。それを証拠に、後々まで話の内容をよく覚えている。僕より9歳年下の彼だが、その年齢よりも上に見えるのは、老けているからではなく、人への思いやりや接し方からくるものかもしれない。20年以上前のこと、ある人に彼との年齢差を告げると「どっちが上なの?」といわれ、思わず顔を見合わせて苦笑した。彼は仕事仲間である。


 その彼、ある日銀座の交差点で信号待ちをしていると、年配のご夫婦に声をかけられたという。奥様共々慇懃に頭を下げ、“財布をなくしてしまい、八王子まで帰るお金がない、ついては八百何十円かのお金を貸して欲しい”と、すがるような眼差しで言う。心優しい彼は「それで間に合うのですか」と尋ねると、“食事もできずお腹を空かしているので、できることなら2~3千あればありがたい”と言った。千円札の持ち合わせがなかった彼、両替をしに走る。3千円を受け取ると、その夫婦は彼の住所を聞き、送金するが一週間ほど待って欲しいとのこと。それから一ヶ月以上が経つが、なしのつぶて。。。

 手を変え品を変え、新しい手口での振り込め詐欺は後を絶たない。今年半年間の振り込め詐欺の被害は、件数では減っているものの、被害総額は30%も増えているという。口座に振込ませる従来の方法だけでなく、自宅に訪れて手渡しで受け取る手口が増加しているとか。何百円かの寸借詐欺を働かなければならないこの夫婦に、どんな事情があったのかは知らない。「騙すより騙されろ」というが、親切を仇にする寸借詐欺はやりきれないと、この暑さにボロボロになったあぶら蝉が鳴(泣)いていたかどうかは定かではない。