『満願』
NHKミステリースペシャル満願 最終夜
原作:米澤穂信
演出:熊切和嘉
脚本:熊切和嘉
音楽:ジム・オルーク
主演:高良健吾、市川実日子
昨日に引き続きミステリースペシャル満願最終話『満願』を鑑賞した。
本のタイトルにもなっている『満願』は全6編の中で最終話である。
実のところ『夜警』、『万灯』、『柘榴』が非常に印象的だったためか『満願』にはあまり思い入れがなかった。
今思えば衝撃的であるかどうかに焦点を当てたばかりに物語の本質に気づけなかったのかもしれない。
ドラマ『満願』が物語の素晴らしさを再認識させてくれた。
観終わって数時間経つが未だ余韻が体にまとわりついている。
素直に言いたい、とても面白かった。
あまり軽率なことは言いたくないが、小説の実写化においてこれほど完璧な作品を観たことがない。
キャスト、言葉、映像、時系列、音楽など全ての要素に隙がなく、それぞれが濃密な『満願』をつくっている。
物語のキーパソンである市川実日子演じる女将さんは素朴だが品が良く美しい。
主人公の藤井(高良健吾)と女将さんが一緒に西瓜を食べるシーンが印象的だ。
暗闇から現れる浴衣姿の女将さんは艶っぽく美しくて女の私まで息を呑むほどだった。
ストーリーが見えやすかった『夜警』に比べて、『満願』はほとんど語らない。
小説を読んでいない人はもしかしたら観終わっても真相を理解できないかもしれない。
しかし、それがリアリティを高めており引き締まったドラマにしている。
わからなければ何度も見返せばいいのだ。
単純に怖い話として捉えていたが、ドラマを観て満願という言葉の意味をより深く理解したように思う。
最後、日傘をさし涼しげに歩く女将さんの姿が印象的だった。
願望を満たしたのだ。
あまりに強い願いが彼女の中にあったのだ。
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