歩くたんぽぽ

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オンカロとアキラ

2011年05月19日 | 社会
昨日BS1で「地下深く 永遠(とわ)に~核廃棄物 10万年の危険~」というドキュメンタリー作品の再放送があった。
原題:Into Eternity
制作:Magic Hour Films (デンマーク 2010年)

詳細→(BS世界のドキュメンタリーHP

最初に放送されたのは2011年2月16日である。
3月11日の大震災の前。
まさに原発の問題は震災以前から私たちの生活に隣接して存在していた。
ここでは、フィンランドで建設されている放射性廃棄物の最終処分場”オンカロ(フィンランド語で「隠し場所」)を巡る議論が展開される。
放射性廃棄物が人間や他の生物にとって無害なものになるには、10万年もの歳月を必要とする。
オンカロはその途方もない歳月の間、安全性を保つことが出来るだろうか。

ドキュメンタリー自体は、演出が詩的で芸術作品のようであった。
フィンランドの地下深くに広がる巨大洞窟オンカロの映像は非常に怪しく、立ちこめる白い塵はその恐ろしさを倍増させて見せる。
暗闇の中、マッチの儚い火をたよりに、ディレクターが何万年後かの人類に語りかける。
まるで映画だ。

しかしテーマに関しては、少しリアリティに欠けているように感じた。
というのも、今震災を受け原発問題を直に感じている日本人にとって、10万年後の人類の心配は少し話が悠長に感じるのだ。
誰かが作品の中で、原発反対云々の話ではなく、この大量に蓄積された放射性廃棄物をどうするかが問題だと言っていた。
しかし、これ以上放射性廃棄物を増やさないということも大事なはずだ。
10万年後の人類の心配を本当にするならば、この時点で原発を終わらせ少しでも放射性廃棄物を減らすべきではないのだろうか。
100年後の封鎖と言っている時点で、話は矛盾している。
まぁ個人的な話だ。
日本が震災で急に切羽詰まってしまい、今私が求める情報とは相違しないというだけの話。
こうした意味においてのみ言うのであれば、2月16日に見るべきであった。
その方がこのストーリーが素直に入ってきたと思う。
日本人と視点が違う新鮮さがあり、そういう意味においては面白いかもしれない。

はじめの方は緊迫感があって面白かった。
何万年もその有害性を保有し続ける放射能の恐ろしさを知る事は重要なことである。
原発を廃止したとしても、その問題は我々の頭を永遠に悩ませ続ける。
日本にいたっては、100年後でさえその廃棄物を管理して行く後継者がいるかどうか。

オンカロの要するは、人間の手ではどうすることもできなくなった放射性廃棄物を、地下深くに厳重に埋め立て蓋をすると言う事である。
自分たちで開けたパンドラの箱を、どうすることもできずに隠すのだ。
このドキュメンタリーは大友克洋監督の「AKIRA」を思わせるところがある。
オンカロはまさに、オリンピック会場の地下深くに封印されたアキラである。
いつか想像もできないきっかけで、その蓋がまた開いてしまうかもしれないのだ。

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