とりビーな毎日

中年おやじの映画鑑賞メインの趣味の記録です

「怒り」 (ねたばれ注意)

2016-09-23 22:06:02 | 映画
俳優の演技のクオリティが半端なく高い。
千葉、東京、沖縄で、三つのエピソードが並行で進んでいくが、それぞれ主役級の俳優がキャスティングされており、目が離せない。

凶悪事件の犯人は誰かの謎と、社会の不条理とを絡め、普通の幸福から遠いところにいる人の苦悩を描いている。
原作者の吉田修一の書かずにいられなかった衝動を感じる。

この作品を映像化した意味は、3人(森山未來、松山ケンイチ、綾野剛)の顔を合成したモンタージュ写真だろう。
写真を見るたびに、それぞれが犯人に見えてくる。
また、坂本龍一の音楽にも感情を揺さぶられた。

本来は、タイトルの「怒り」がテーマであり、借金や田舎の人間関係、LGBT、沖縄の基地問題をどう乗り越えるかを考えるべきなんだが、そういう問題を抱えて生きることを教えてくれる。

点数は、9点(10点満点)。

タイトル:怒り
製作年:2016年
製作国:日本
配給:東宝
監督:李相日
主演:-
他出演者:渡辺謙、森山未來、松山ケンイチ、綾野剛、広瀬すず、佐久本宝、ピエール瀧、三浦貴大、高畑充希、原日出子、池脇千鶴、宮崎あおい、妻夫木聡
上映時間:142分


ダリ展 (国立新美術館)

2016-09-23 17:14:23 | 美術館
国立新美術館で開催中(2016/9/14-2016/12/12)のダリ展を鑑賞。
音声ガイドのナビゲーターは、竹中直人。
多少、アドリブが入っているのか、なかなか面白かった。

ダリの作品を観て感じたのは、彼は時代の最先端を行こうとしたことだ。
モダニズムからシュルレアリスムへ絵画の技法を変化させつつ、舞台芸術や映画の創作に関わり、原子物理学をモチーフとして絵画に取り込むなど、目まぐるしく活動の方法や舞台を変化させてきた。
一見、場当たり的に見えるが、世界に向けて表現することに真摯であり続けた人だったと思う。

また、活動の拠点をパリ、アメリカ、故郷であるスペインのポルト・リガトへと移しているが、最後に故郷に帰ってきたところを見ると、日常生活では、案外普通の感覚の人だったのではないか。

独特の風貌や過激な発言の裏には、全うな人格を持っており、そのうえでのセルフ・プロデュースが「ダリ」だったのではないだろうか。


「超高速!参勤交代 リターンズ」 (ねたばれ注意)

2016-09-16 23:58:09 | 映画
前作(「超高速!参勤交代」)が面白かったので、続編も期待して、見ることに。

陣内孝則が演じる松平信祝はメイクから超悪役。
ここまで、悪に徹していたら、逆に清々しいぐらいだ。
現代劇の場合には多少、現実を引きずる部分があるので、時代劇の方が、より自由に、デフォルメした表現ができる部分もあるということか。
「そんな奴、おらんやろ」とつっこみながら笑えた。

何が残るというものではないが、現場の雰囲気のよさが伝わってきて、ハッピーになれる作品だった。

点数は、7点(10点満点)。

タイトル:超高速!参勤交代 リターンズ
製作年:2016年
製作国:日本
配給:松竹
監督:本木克英
主演:佐々木蔵之介
他出演者:深田恭子、伊原剛志、寺脇康文、上地雄輔、知念侑李、柄本時生、六角精児、古田新太、西村雅彦、石橋蓮司、陣内孝則
上映時間:119分


「ニュースの真相」 (ねたばれ注意)

2016-09-14 23:59:05 | 映画
ニュース報道の裏側を描いており、ジャーナリストのプロフェッショナリズムや矜持を描いている良作だ。
ケイト・ブランシェットは演技がいいのは当然ながら、出演作品の選び方もいい。

結果的にCBSは偽造文書に引っかかったのだが、誰にも起こりうることで、問題とすべきは報道の中立性や客観性だろう。
ブッシュの再選を阻む目的で予断を持って報道されたのだとしたら、罰せられて然るべきだ。
大統領を選ぶにあたっての判断材料として事実を伝えようとしたのであれば、報道価値がある。

判断材料というのは、仮に報道された内容が事実であったとしても、その後、反省して、大統領たるに相応しい人間になったとも考えられるし、若い頃から親の権力に頼って、厳しい現実を回避してきた人間に大統領が務まるのかとの考えもあり得る。
結局はメディアを通じて醸成されたイメージによって、選挙結果が左右されるので、わかりやすい失策がない方が勝つのかもしれない。

また、偽造文書によって、引っかけた側には、どういう意図があったのかという見方もできる。
功を焦って、調査が不十分な状況で放送した報道姿勢を糾弾することが現実に起こったが、罠に嵌った方が悪いだけでなく、罠を仕掛けた側のことが気になった。
映画ではよくわかならかったが、原作本には書かれているのだろうか。

背景にある米国のジャーナリズムの競争の厳しさやスピード感も見所だ。

点数は、8点(10点満点)。

タイトル:ニュースの真相
原題:TRUTH
製作年:2015年
製作国:オーストラリア、アメリカ
配給:キノフィルムズ
監督:James Vanderbilt
主演:Cate Blanchett
他出演者:Robert Redford、Elisabeth Moss、Topher Grace、Dennis Quaid、Stacy Keach
上映時間:125分