先週、風邪を引いたので取りやめにしたダ・ヴィンチ・コードを観た。妻と50歳以上の夫婦割引でお得だった。全席座席指定だ。上映開始の15分前だったが、ちょうど中央、後ろから4列目の良い席が空いていた。中央部の席はほぼ満席だった。風邪上がりなので、咳が出ないように注意を払う。私はMサイズのアイスコーヒー、妻はSサイズのドリンクを手摺の所定の位置にセットする。
映画が始まる。ただ、予告編が長いのはどうにかならないものか。やっと、上映開始。想像していたようにソフィーの祖父がルーブル美術館内を追っ手から逃げるシーンから始まった。映画は原作をほぼ忠実に描写していたが、何か今ひとつピンと来ない。だらだらと垂れ流しのように感じた。要するに山場が無いのだ。最後のソフィーの家系を守るために連綿と生きてきた村民の出現、思いがけない祖母との再会のシーンでは涙が溢れてきたが、その他は特に感動が伝わらない。原作を読んでいない人には良く分からないシーンが多かったと思う。私なりに感じたことは
1.問題提起が薄い。冒頭のルーブル美術館で、殺された美術館長は誰に何を云いたか ったのか、なぜ謎(クイズ)でなければならなかったのか。このところをもう少し丁寧に、 ストーリー展開の骨子が表現されていれば、物語を一生懸命に追うこともなく、もっと気 楽に観れただろう。話についてゆくのが精いっぱいで、とても楽しむところまでは行けな いんではなかろうか。
2.謎解きもこの本のテーマのひとつだが、解明へ至る考え方、ひらめきの表現が無い。どのように難しい謎なのか、単に言葉遊びにしか過ぎないんではないか、と思ってしまう。
3.悪役?ならば、悪役らしく、その動機、背景を鮮明に描いて欲しい。特に登場人物の相関関係が分かりにくく、細切れなので感情移入が出来ない。急に俺が親玉だ!といって出てきても混乱するだけだ。
4.歴史遺物、美術品などの映像が乏しく、歴史の重みが伝わってこない。テンプル騎士団の像や、歴史ある教会などの映像を楽しみにしていたのだが、それが少ないので単なる漫遊的情景にとどまっている。もう少しカメラワークに注意を払えば、もっと重厚な映画になっていただろう。
色々書いたが、要するに全体的にレベルが低いと思う。脚本・演出・カメラワークのどれをとっても不満だ。原作の知的好奇心、歴史的遺物に対する憧憬、そして誰が敵か味方か、影に潜む悪の組織は何なのか、すべてが薄味仕立てに留まっていると思う。
個人的好みで云えば、主人公の教授はおでこが広すぎるのが気になったし、リー卿はロード・オブ・ザ・リングの白魔法使いのイメージが強く残っており、その残像のために白紙に悪役像を描けなかったのが残念だ。