どっと屋Mの續・鼓腹撃壌

引き続き⋯フリーCG屋のショーモナイ日常(笑)

この世界の片隅に、実になんてことの無い話しなんです。

2017年01月09日 18時15分00秒 | 映画
タイトルに「片隅」とあるように、戦時中になんらかの活躍をしたとか、後年なにか偉業を成し遂げた人物とか、全くなんでも無い、市井の人々を描いている物語。

他の方のTwitterで見かけましたが、自分も含め、家族や親戚の親や祖父母が「戦争中にはこんなことがあった...」と語って聞かせてくれたような昔話に限りなく近い物語です。

それだけに身近な感じが強く、心に深く浸透していく...こうの史代さんのもう一つの広島を舞台にした作品「夕凪の街 桜の国」の帯に書かれている「まだ名前のついていない感情」がジワジワと沸き上がってくるんですね。

この一見なんてことの無いのない「まだ名前のついていない感情」をず〜〜っと昔に描き出しているのが小津安二郎だと思ってます。

「この世界の片隅に」を観れば観るほど近いなぁと思わされるのが「麦秋」(1951年)です。

ここでストーリーについて細かく書きませんが、主役とも言える老夫婦が、周作・すず夫婦の戦後の後日談に見えてくるんですよ。







同様なシーンは「東京物語」にも...。






このように小津作品は同じようなストーリー・シーン・セリフを反復させることが多いのが特徴です(^_^)

戦前から戦後にかけて、家族の間にも(喜びや悲しみ、そして不満も含めて)色々なことがあったが、欲を言えば切りがない...自分達は良い方なんだと...諦念あった上で、自分達に言い聞かせているかのような切ないシーンです。

「麦秋」では同居していた子や孫らと離れて故郷に戻って、そして「東京物語」では東京に暮らす子や孫らと会っての帰途...両作ともに夫婦最後の会話として描かれています。

世代的には周作・すず夫婦よりも上で、むしろ円太郎・サン夫婦に近い世代ですけど、今もご存命なら91歳というすずさんも周作さんとこんな風な会話をしてるんじゃないかと思えてくるんです(^_^)

麦秋」は“食事”も裏テーマになっている感があり、食べることの大切さや有り難さも描かれ、「この世界の片隅に」と対比して観てみるとより深みを感じます。



1月8日(日)のつぶやき

2017年01月09日 04時39分48秒 | 日記