いまデンマーク映画の
厚みはすごいすよ。
「未来を生きる君たちへ」80点★★★★




ドグマ95出身、スサンネ・ビア監督の
アカデミー外国語&ゴールデン・グローブ賞
ダブル受賞作。
デンマーク国内で
良作「光のほうへ」とアカデミー出品を競ったそうで
こちらもたがわず素晴らしかったです。


現代のデンマーク。
母親の死で
転校することになった少年クリスチャンは

登校初日にいじめられっ子の少年エリアスに出合う。

いじめの巻き添えをくって殴られたクリスチャンは、
翌日、いじめっ子を殴り返す。



しかし、それが学校で事件となってしまう。

クリスチャンの父親は彼に
「殴られたら殴り返す、で戦争が始まるんだよ」と諭すが
彼は聞こうとしない。

そのころ、医者であるエリアスの父は
アフリカに赴任し、
地元民たちに信頼されていた。

だが、現地では妊婦の腹を引き裂く
悪党集団が横行しており……。

デンマークとアフリカを舞台に
ある二つの家族のありかたに、
「こんな時代、我々は次の世代に、どう道を示すべきか?」を
重ねた作品です。


アフリカで献身的に働く医師、
母を亡くした悲しみを、
利発に振る舞うことで消化しようとする少年……
さまざまなパーツからなり、
やがてパズルのピースが
すんなりはまっていく気持ちよさ。

テーマ性や絡まる構成が
ちょっと「バベル」を思い出させます。


子ども同士のケンカや、
大人同士のいさかいに
この世界を照らし合わせ、再考させるのは
シンプルで、うまいと感じました。
「この狂った世界を生んだものはなんなのか」

「どうしてこうなってしまったんだろう」
「どうすれば、元通りになるんだろう」

切実な問いかけが、カーンと響きます。
「光のほうへ」と似ているのは
悲壮な状況を描いても、
重苦しい雲に覆われてても、
未来への希望に
かすかに触れられる一瞬がある。


そんなところが
世界の映画好きの心を
さらってるのかもしれません。


★8/13からTOHOシネマズシャンテ、新宿武蔵野館、シネマライズで公開。ほか全国順次公開。
「未来を生きる君たちへ」公式サイト