ぽつお番長の映画日記

映画ライター中村千晶(ぽつお)のショートコラム

母よ、

2016-03-10 23:55:29 | は行

見終わるとこの「、」が
「ああ、なんか、わかる!」となります。


「母よ、」70点★★★★


********************************


映画監督のマルゲリータ(マルゲリータ・ブイ)は
さまざまな問題を抱えていた。

新作の撮影がいまひとつうまくいっておらず、
入院中の母(ジュリア・ラッツァリーニ)を見舞っても
所在なく、どうしていいかわからない。

兄(ナンニ・モレッティ)が
手作りの料理を差し入れたりして
母をニコニコさせているのを見て「なんだかな~」という気分。

さらに医師からは
母には回復の見込みがないと告げられてしまい――?


********************************


イタリアの巨匠ナンニ・モレッティ監督作品。
本人、出演もしています。

監督自身がお母さんを亡くした
その体験から生まれた話だそうで

見終わると、この「、」の意味が
すごーくわかる。

「母よ、あなたという人は・・・!」という賛辞でもあり
もどかしさでもあり、という感じですねえ。

題材からこちらが想像する
“家族ドラマ”とはひと味違って

「泣ける!」という流れでもなく
夢か現実かわかりにくい部分があったり。

かなり変わっているけれど
テーマと余韻は伝わります。


特に母の見舞いに行っても
どう振る舞ったらいいかわからない
不器用な娘の所在無さに「う、わかる――」と自分を投影してしまう。

彼女にはもちろん母へのいたわりの気持ちがあるんだけど、
イライラして母に声を荒げたりもする。

身内ならではの苛立ち、看病する側のしんどさの描写が
とてもリアルで、他人事じゃないなあと。

一面だけでは計れない“人間”の複雑さを
役できっちり表現した女優マルゲリータ・ブイに拍手!でした。

そうか、

「ローマの教室で」(12年)

「はじまりは5つ星ホテルから」(13年)に出てる
あの女優さんか!


★3/12(土)からBunkamura ル・シネマ、新宿シネマカリテほか全国で公開。


「母よ、」公式サイト
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする