ぽつお番長の映画日記

映画ライター中村千晶(ぽつお)のショートコラム

リップヴァンウィンクルの花嫁

2016-03-21 16:51:06 | ら行

180分!と、さすがに構えたけど
これは観てよかった。


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「リップヴァンウィンクルの花嫁」73点★★★★


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七海(黒木華)は派遣教員として働く23歳。

声が小さく、おとなしいタイプだが
SNSの世界では誰とでもつながれる、いまどきの女性だ。

そして七海は
SNSであっさり彼氏を見つけ、
結婚することになった。

だが結婚式に呼ぶ親族が足りず、
七海は何でも屋の安室(綾野剛)に
「結婚式の代理出席」を依頼する。

なんとか無事に式を終えた七海だったが
新婚早々、夫の浮気が発覚し――?!


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岩井俊二監督、長編実写の日本映画としては
「花とアリス」(04年)以来、12年ぶりとなる最新作。


ぼんやりと社会に出て、ぼんやりと結婚し、
しかし裏切られ
奇妙なアルバイトをし、漂流していく23歳の主人公・七海。

それでも、心底汚れることはなく
真っ白なまま、すこしずつ、成長していく――。

そんな七海を演じる
黒木華氏を見ている間に、
180分は、本当にするするとあっと言う間でした。



印象は「花とアリス」大人版、かな。

岩井節のよき要素が
裏切りなく詰まっていて、

白く飛んだやさしい映像に、ピアノ曲。
文字でいえば、細明朝体の世界。

二人の対照的なタイプの女の子が登場し、
(くっきりしたエキゾチックな顔立ちの陽タイプに、
和顔で控えめな陰タイプの二人)

どぎつい描写もなく、リリカルなのに
現代の空気や、病理を切り取っている。


後半、ウェディングドレスからのシーンが
やや長い気はしますが

ただ全体欠かさず登場する
何でも屋役の綾野剛氏も非常に目を引き、
彼を見ていても、またするすると時間が過ぎていく感じだったなー。

主人公の変化を
シンプルに表したラストのシーンにも
嬉しくなった。


あと
「ドリーム・ホーム 99%を操る男たち」の取材でお会いした
経済評論家の門倉貴史さんから聞いて
「これはネタになりそうだ!」と思っていた

結婚式の代理出席という仕事が
しっかりど真ん中にネタになっていて
「うわー!やられた!」と身悶えしました(遅いって。笑)


★3/26(土)から全国で公開。

「リップヴァンウィンクルの花嫁」公式サイト
コメント
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