ぽつお番長の映画日記

映画ライター中村千晶(ぽつお)のショートコラム

風の波紋

2016-03-18 22:15:35 | か行

99分の、山暮らし体験。

****************************


「風の波紋」72点★★★★


****************************

小林茂監督をはじめ
名作「阿賀に生きる」のスタッフが集結し
新潟県の豪雪地帯「越後妻有(えちごつまり)」に5年間、カメラを向けたドキュメンタリー。


まず、田舎の村といえば
限界集落や災害など暗い話が多いんですが

この映画は
東京から移住してきた木暮さんを中心人物に据えて、

とにかく
全体に気負わず、ユーモアもたっぷり。


登場する人々のバックグラウンドなどはあえて紹介せず
常に人との輪がある、集落の暮らしの豊かさが
カメラに捉えられています。

途中、やはり移住組らしき女性と小さな娘さんが
集落のおばあさん二人に守られて暮らしているシーンがあって
うわ!リアル「おおかみこどもの雨と雪」じゃん!と思った。

そして、その女性が
この映画の音楽を担当している天野季子さんだと
ラストで知って驚きました。
すごくいい音楽なんですよ。

そしてこの映画が見せるのは、人の「つながり」。

雪深いこの集落では人間は一人では生きらないから
みんなが相互に気遣い、助け合っている。

もちろん、大変なこともたくさんあるだろうけど
なんだか、明るく、おおらかな気持ちになるんです。


しかし
「そういうの、いいなあ」と安易に思っていると
「うちの人はそういうの(つながり)が、ずっと嫌いだった」と
夫のことを回想するおばあさんの言葉が出てきたりする。

そうか、やはりそういう人もいるのかと
「ハッ」としました。
そうだよね、それがいやで
若者は出ていき、いまの状況になっているわけで。

山里暮らしに憧れさせる一方で
その難儀さもリアルに考えさせてもらいました。


★3/19(土)からユーロスペースほか全国順次公開。

「風の波紋」公式サイト
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする