確かに、なにかの
淵に立った。
「淵に立つ」71点★★★★
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町工場を営む利雄(古館寛治)は
妻(筒井真理子)と10歳の娘(篠川桃音)と
平穏に暮らしている。
ある日、工場に古い知人・八坂(浅野忠信)が現れた。
利雄は妻に相談もなく、
八坂を住み込みで雇うことを決める。
驚く妻だったが
礼儀正しく人当たりのいい八坂に
次第に心を開いていき――。
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「ほとりの朔子」「さようなら」の深田晃司監督。
カンヌ「ある視点」審査員賞受賞。
後味すっきり!系{ではないんです。
でも、たしかに
「淵」を見た気はしました。
町工場を営む夫(古館寛治)と妻(筒井真理子)の普通な家庭。
そこに
礼儀正しくも不気味な「異物」=浅野忠信が投げ込まれ、
それが生む波紋が、連鎖していく――という展開。
男はピアノが弾けたり、意外性もチラ見せしつつ、
一家に食い込んでいく。
なかでも「敬語」の使い方が、興味深くて
妻は夫に敬語を使い、
夫は久しぶりに会った知人である八坂(浅野忠信)に敬語を話す。
そして八坂は
夫妻の娘にも敬語を話す。
そんな八坂の礼儀が、崩れる瞬間。
その本性が現れる瞬間の、不気味さがたまらない。
昼間でもうす暗い室内、など
庶民のフツーにリアルな暮らしのなかで、
気がつくとそれが
黒いものに浸食されているような描写も薄気味悪く
前半から後半への転調も、うまい。
想定しがちな「昼メロ」とかではない
深い闇があると感じました。
古館寛治さんを堪能する映画でもありますな。
★10/8(土)から有楽町スバル座ほか全国で公開。
「淵に立つ」公式サイト