もっと“アート”かと思ったんです。
でもワシにはこれ、「映画」だった。
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「ハート・オブ・ドッグ」71点★★★★
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アーティストのローリー・アンダーソンが
2013年に亡くなった夫ルー・リードと飼っていた
愛犬ロラベルとの日々を通して
愛と死を綴るドキュメンタリーです。
冒頭、ローリーが描いた自画像から始まり、
彼女のナレーションと、美しい映像で
愛犬との日々が語られる。
個人的な内容のようでいて
9.11後のアメリカへの警鐘なども盛り込まれているのがさすがで
「映画」として、しっかり見応えがありました。
全編を貫くのは
「愛するものとの別れの儀式」。
この映画は、ルー・リードがまだ元気なときに撮り始められて
彼の死で、中断していたそうなんですね。
でも「後悔しないように」と友人に後押しされて
再開し、まとめたんだそうです。
「愛するものとの別れ」は
もちろんルー・リードのことでもあるんだけど
彼は映画にはほとんど登場せず
年老いていくロラベルの様子に
その思いが重ねられていく。
ああ、まだ、整理仕切ってないのかもしれないと
そこが、また切ないんだけど(涙)
でも
チベット仏教を信仰するローリーは
「チベットの死者の書」をひもときながら
死との向き合い方、死にいく人や犬との向き合い方を
優しく、静かに、教えてくれているんです。
それを経て
切ないけれど、悲しみばかりじゃない、という
鑑賞後感が生まれる。
これ
けっこう、貴重な体験でした。
年老いて視力を失ったロラベルが、
キーボードを弾く様子なんて、たまらなく愛おしくて(笑)
さすがアーティストの子だなあと笑ったり。
誰もが向き合う「そのとき」への、心の準備の一助として
ぴったりな映画だなと思いました。
★10/22(土)からシアター・イメージフォーラムほか全国順次公開。
「ハート・オブ・ドッグ」公式サイト