ヤバい状況なのに、笑っちゃうんだよね・・・。
「散歩する侵略者」71点★★★★
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とある地方都市に暮らす鳴海(長澤まさみ)のもとに
数日間、行方不明だった夫(松田龍平)が帰ってきた。
だが夫はどこか前と違う。
穏やかで優しくなったが、どこかぼうっとしていて
仕事もせず、
毎日、散歩に出かけていく。
一方、同じ町で、凄惨な一家惨殺事件が発生。
ジャーナリストの桜井(長谷川博己)は
事件の取材中に、鍵を握る謎の若者(高杉真宙)と女子高生(恒松祐里)に出会う――。
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劇団イキウメの前川知大原作×黒沢清監督による
静かなる人類侵略SF。
人間の体を乗っ取り、
じわじわと地球を侵略しようとしている「侵略者」(まあ、宇宙人ですね)を描き
彼らに体を乗っ取られた夫(松田龍平)と
その奇行に振り回される妻(長澤まさみ)の日常を描き
ひょんなことから
「侵略者」である少年少女の正体を知り
彼らと行動をともにするジャーナリスト(長谷川博己)の様子を交互に見せつつ
「地球がやばいぞ!」というでかい展開になっていく。
ただあくまでも視点は「日常」にあり
壮大なSFとは違う小劇場的宇宙空間。
これが、意外といい。
黒沢清監督らしいホラーさ、映画的なる熟練の技術と
前田氏らしいシュールさと舞台的なものが
不思議なハーモニーとなって
交互に顔を出す感じ。
「侵略者」のキャラ造形にも
曖昧さが理解できない、はっきり言わないとわからない、コミュニケーションのしにくさ・・・など
昨今、認識が広まってきた
自閉症やアスペ的な要素を感じるし
「突然壊れる人」というイメージにも
現代的な疾患のリアルがある。
そして
松田龍平氏のあの、妙にのほほんとした雰囲気を生かし
プッと笑いつつ、ふと、その状況にゾッとする、というような。
じわじわくる怖さがあっておもしろいんです。
さらに
どこか「シン・ゴジラ」の影を引きずった長谷川博己氏が登場し
これがまたアガる(笑)。
しかし今回は緊急事態に対応下手で
外見ひ弱な少年少女の宇宙人に
アゴで使われる弱っちさ(笑)
そして、
観客とシュール世界をつなぎとめる
長澤まさみの演技がすごいなと感じました。
★9/9(土)から全国で公開。
「散歩する侵略者」公式サイト