この圧倒的な重さはなんだ。
「サーミの血」77点★★★★
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老年の女性クリスティーナ(マイ=ドリス・リンピ)は
孫娘と息子とともに
スウェーデン北部にある故郷での
妹の葬儀に向っている。
かつて捨てた故郷へ戻るのは
50年、いや60年ぶりにでもなるだろうか。
だがクリスティーナはいまも
そこへ戻ることへ、強い拒否反応を示す。
いったい
何があったのか――?!
そして彼女は1930年代、
その場所に暮らしていたころを思い出し始める――。
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北欧スウェーデン北部ラップランドに暮らす
先住民族サーミ人。
1930年代、「劣った民族」として差別的な扱いを受け
進学も許されない環境にあったサーミの少女が
なんとかそこから出たいともがく物語で
自身もサーミの血を引く監督が
サーミ人の少女を主演に描いており
「この圧倒的な重さはなんだ!」とうなります。
1930年代、サーミ人の少女エレは
周りに「粗野で野蛮」と差別され
学校で「進学したい」と願っても
先生から「あなたたちの脳は、文明に対応できないの」と酷いことを言われる。
そんな彼女が村の夜祭りで出会った
スウェーデン人の青年に恋をし
外界との糸になるかもしれない
彼にかすかな望みをたくす、その心理描写の細やかさ!
彼の上着のポケットに
そっと、ためらいつつ、乞うように触れる仕草も
うっ……締め付けれます。
ラップランドといえば
トナカイや広大な自然、というイメージで
実際そこには美しい自然の風景があるはずなのに
映されるのは激しい怒りやもがきを内に秘めた
少女のアップばかり。
その透明で、熱い表情に
胸が苦しくなる。
主演のレーネ=セシリア・スパルロクは、実際にサーミ人として暮らす少女。
強い瞳、熱い表情が
めちゃくちゃ印象的だけど
今後も地元でトナカイを飼育する生活を続けていく、と話している。
冒頭の現代の描写を鑑みつつ、
実際、彼女のこれからは、サーミの現状は
どうなんだろう、と考えてしまいました。
★9/16(土)から新宿武蔵野館、渋谷アップリンクほか全国順次公開。
「サーミの血」公式サイト