まるでSFのような静けさが。
「ダンケルク」72点★★★★
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1940年、第二次世界大戦の只中。
イギリスとフランスの連合軍は
ドイツ軍の猛攻により、
ドーバー海峡に面した港町ダンケルクまで追い詰められていた。
イギリス人の若い兵士トミー(フィオン・ホワイトヘッド)は
激しい市街戦をなんとか生き延び、海岸までたどり着く。
しかし、そこでトミーが目にしたのは
おびただしい数の兵士たちが
対岸にあるイギリスへ渡る船を待っている光景だった。
トミーは同じく若い兵士(ハリー・スタイルズ)らと
なんとか生きて故郷へ帰ろうとするが――?!
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「インターステラ―」(14年)(大好き!)の
クリストファー・ノーラン監督による戦争映画。
1940年、第二次世界大戦の只中、
ドイツ軍によって40万人の兵士が
海岸に追い詰められた
歴史的出来事を題材にしています。
逃げ場なしの状況に置かれた
イギリス軍の若い兵士(フィオン・ホワイトヘッド)が登場する
初っぱなの銃声一発からして
音の臨場感が半端ない!
あっという間に
観客もその身を戦場に引きずり込まれます。
でも
そのリアルは、しかしまた別の達観したような視点も持っていて
画面はどこか整然とし、客観的。
「しん」としたSFのようでもある。
特に砂浜から海岸線を歩く兵士たちを遠景で捉えたシーンや
整然と列をなす兵士たちなど
そのシュッとした静けさが、場違いなほど、妙に美しいんですねえ。
そのギャップが、黒い空洞のように映画を支配し、
それこそが、戦争の虚無さを表現している気がしました。
セリフもほとんどなく、
瀬戸際に追い詰められた兵士たちを次に襲う恐怖を、
彼方からの音や、それに気づいた人間の表情で
知らせるのもじわじわ怖い。
いくつかの視点から、映画を編んでいく手法も
ちょっと変則的で
主人公が出会う、主人公よりちょっと経験を積んだ兵士役で
あのハリー・スタイルズが初映画出演しているのも見逃せません。
青さに、狡辛さを微妙に含んだ役を
なかなかうまく演じていると思う。
若者たちを見ていると
危機意識や瞬間での機転が、生き延びる術なのだ、と実感するし
また
「我先に!」と、人を蹴落とした結果に残る罪悪感など、
極限での処し方を、いろいろ考えさせられました。
★9/9(土)から全国で公開。
「ダンケルク」公式サイト